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笑う王子

人払いをして五人で話し合うことに。

この動きも本来なら疑惑を持たれかねないので避けたい。

しかし王子命令ではどうしようもないか。ここでは王子は絶対の存在。

少々情けないですがね。それでも王子。


「まさか王子の秘密など聞いていないな? いや何でもない。忘れてくれ」

ポロっと口から不用意な発言。

長年の信頼関係を築いているはずのお爺さんがこれではね。脇が甘いんですから。

もうお年だと言うのもあるかもしれません。


秘密か…… 誰にも言えない王子の秘密とは一体?

一国を揺るがすようなとんでもないことなのでしょう。

興味がないと言えば嘘になる。ただハッチ王子にはさほど興味はない。

これがメグレン様に関するものならぜひ聞きたいもの。

そうだ。思い切って金の紙コップに吹き込めばいいのでは?

でも人が亡くなったばかりでふざけるのはあまりに不謹慎か?

常識がない最低なお嬢様になってしまう。

ビアンカに呆れられてストみたいに再教育させられてしまうかも。


「秘密…… はい最後に王子の秘密を伝えようとたところでお亡くなりに。

本当に残念でなりません。隊長さんは大変立派な方だと伺っています」

無難な対応をするビアンカ。今のところ疑われることもなく淡々と答えている。

時間が経ったとは言えまだあの時の記憶が残ってるものでしょう。

特に名の知れたお嬢様は免疫がなく泣き叫んだり失神したりで後が大変。

ただビアンカは違う。持ち前の冷静さで。エラになり自信を持ったのだろう。

新人メイドだった頃とえらい違い。でもそれが逆に疑いの目を持たれる原因にも。

あまりにも淡々とし過ぎている。これではまるで感情がないかのよう。


そう私たちは初めからこのような事件が起きると知っていた。だから対処できる。

これが何も知らない状況ならこうまで冷静でいられたでしょうか? 

恐怖のあまり腰を抜かし泣き喚いていたかもしれない。

その辺りに違和感を持たれお爺さんに追及されてはお終い。

それどころかに王子に不信感を持たせてはならない。王子を守り切れなくなる。


「それにしても本当に驚いたな。あの顔はもう思い出したくもない。

どんどん酷くなって苦しくなっていきそれでも誰も呼ばずに話を聞けですって」

最後の様子をビアンカに代わってもう少し臨場感を出して説明する。

「そうですかマリオネッタさん。ありがとうございます」

メグレンが反応してくれた。やっぱり私たちは心が繋がっているのでしょう。

ふふふ…… 素敵なお方。王子も形無し。


そう言えば王子はずっと俯いて黙っておられる。そのせいか表情は読み取れない。

震えてる? 泣いてる? 怒りに震えてる? まさか笑ってませんよね?

どうも隠してるところを見ると笑ってるような気がする。思い過ごし?

違う…… 王子は確実に笑っている。それを堪えようと必死。

やはりどこかおかしい。ハッチ王子に異変が? 精神的に参ってるのでしょうね。


「おやおや気づかれましたか。これには訳がありまして。誤解なさらずに」

お付きの爺さんがどうにか言い訳するがどうやったって取り繕えるものではない。

「いえ…… どうもハッチ王子の様子がおかしいので心配してたんです」

実際はどうでもいいが。ただ不気味なのは間違いない。

王子が不気味なことってあるの? 

人が亡くなられてる。しかも王子とも親しくしていたビッグ隊長。

笑うなどあまりに無礼で不謹慎。たとえ王子であろうといけないものはいけない。

嘆き悲しむのを我慢するのは分かりますが。笑いを堪えるのはちょっと……


「ははは! 済まん済まん。どうしても笑ってしまうのだ」

場違いにハイテンションで呑気に笑っているハッチ王子。

もし彼が王子でなくただの村人ならこのような場面は間違いなく叱責されてる。

袋叩きに遭ってるでしょう。それくらいのこと。なぜ死者を想い寄り添えないの?


「王子はなぜお笑いに? 何がおかしいと言うのですか? 」

つい余計なことを聞いてしまう。これは本来王子の感情。

ただの令嬢の私にはどうでもいいことなのに気になって気になって仕方がない。

これって王子に好意を抱いてる? まさかあり得ない。

ただそう思わせるのも引き留めるには必要になって来る。大人の駆け引き。

「おかしいぞ。この私によく仕えてくれたビッグが亡くなりもう笑うしかない」

ダメだ。この王子が何を言ってるのか分からない。

狂ったとでも言うのでしょうか? 


「失礼。この私から。実は王子は悲しみの感情がないんです。

苦しいや痛いはあるのですが悲しいは王子の感情から欠落してしまったのです。

残念ながら感情が動かされると笑ってしまう。笑顔になるのです。

祝いの場ではよいのですがこのような時はどうにも…… 」

どうしていいか迷っている様子。


「だからなこうして俯いているのだ」

王子は笑いが止まらないのは深い悲しみに暮れているからだと。

普通は悲しみに暮れて涙が止まらないのに王子の場合は笑いが止まらない。

どうであれビッグ隊長喪失は相当精神に来てるのでしょう。


                  続く

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