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間取り

用意されたお部屋でのんびり二人で過ごす。

つい勢いに任せてビアンカを押し倒してしまった。

三十分近く抱き合うだけの悪ふざけ。それで幸せかと言うと分からない。

でも今の現実を一時でも忘れられるなら意味もあるのでしょう。

ビアンカだってきっとそうに違いない。


「ほらマリオネッタ。もう充分でしょう? 離れなさい」

もう誰もいない。二人っきりだと言うのにまだ姉妹ごっこを続ける。

どれだけ警戒すればいいの? どうせ誰も見てないし聞いてない。

「お嬢様は? 」

「違う! あなたは私のかわいい妹。どこかのお嬢様じゃない! 」

ビアンカに説得されて起き上がる。

「それで…… 」


そろそろ行動開始しますか。

面倒臭いがこれも私が選んだ道。ビアンカの協力を得て奴らから王子たちを守る。

先ほどまで騒がしかったが止んで静かに。どうやら王子争奪戦は決着したよう。

本当にどうでもいいただ醜いだけの争い。

勝とうが負けようが関係ない不毛なもの。それは本来ハッチ王子が選ぶこと。

ただ今はあの喧騒が心地よいなとさえ思えるから不思議。


奴らは脅しだけで縛り付け外はもちろん中でも大した監視をつけてない。

とは言えだからって大声で話し合えるはずもない。

侮れないのは仲間同士が互いを監視し合うように誘導さえしているところ。

決して奴らの実力を見誤ってはいけない。痛い目を見るのは私たち。

恐らくそれも一瞬のことでしょう。バンと銃声と共に。


声を落としてこれからのことを話し合う。

「まずどうするのお姉様? 」

ふざけ合いっ子はお終い。ビアンカに頼る。お嬢様ですからね当然。

困った時のメイド。私の専属メイドであることに変わりない。

「少しは自分で考えなさい! 」

まるで小さな子供を諭すようなベテランメイド。ストにでもなったつもり?

憎たらしいけれど反論できない。皺が増えたわよお姉様。

「だって…… 初めてのことだからちっとも思いつかない」

それはビアンカも同じでしょうが。

片やお嬢様であちらはメイドになるまで色々な世界を見たはず。

ビアンカの過去を今更追及するつもりはない。ただ私の為に動いて欲しい。

特に慎重に。下手に動けば一発で感づかれる。


王子は現在お付きの者と二人でお部屋に。

舞踏会が始まるまでは大人しく籠っているでしょう。震えてる?

王子の居室は立ち入り禁止エリアで見張りも立ててある。

隊長不在の王子護衛隊とは言えそこまでのミスはないでしょう。


しかし暗殺側からすればあの手薄な警備を突破しての王子暗殺は訳ないこと。

だったらすぐにすればいいのだけど奴らはそうはしないで分かり辛く。

なぜかまでは不明ですが王子が衆人環視の元に殺すことに拘っている。

異常な拘りとも言える。ただこうしないとならない事情が必ずあるはず。

それをどうにか暴ければいいのですが手掛かり一つ見つからない状況。


どうしてここまで? 疑問が湧いて来る。

暗殺のレベルを超えている。一朝一夕でできるような暗殺技術ではない。

だからこそ慎重にもなるし各々の役割をきちんとこなすことが求められる。

今私たちはただ見ている。見学してればいいだけ。どうにもやる気の出ない状況。

これでは気が緩む。眠気だって襲って来る。

私たちが奴らから王子を守るには仕方ないこと。


「それで晩餐会までは近寄れない…… 」

「そうですね。ただ堂々と面会を求めることは可能。朝のように。

特に私たちは王子から信頼がある。それを言えば招待客の御令嬢も同じ。

ただそこに強烈な者が混ざっている。


禁止エリアに行くにはまず晩餐会場。

昨夜晩餐会が開かれた場所にはまず歓迎の間で招待状を渡す。

奥の扉を開けばそこが晩餐会場。中央の間とでも言うのでしょうか?

そこから左の扉を抜ければ招待客の居室。

ここで令嬢やお客が着替えたり休憩する。あるいは泊まる場合もある。

でも今回は人数が多すぎるので別の場所を用意された。

ただそれ昨夜の話。今夜はまだ分かっていない。


逆に右の扉を抜ければ王子の居室が一番奥にある。

現在ここは王子が寝泊まりしてることもあって立ち入り禁止エリアとなってる。

たとえ令嬢だろうと許可を得てない者の通行はできない。

だから近づくことさえままならない。だから絶対安全であるとも言える。

右の扉には当然見張りがついていて許可された者以外は立ち入れない。


今夜はダンスホールにて舞踏会が行われる。

もう間もなくで飾りつけ等の作業がギリギリまで行われているはず。

人手も足りなさそうなのでもしかすると予定よりも多少遅れるかもしれません。

その会場には中央の間からは行けずに居室の手前の階段で行ける。

二階にも居室が。令嬢の中でも位の上の者が選ばれてると噂。

反対側も同様に居室らしく隊長や隊員がそこには控えている。


ただそれは話好きのお付きに者から聞いただけなので確かめたのでは決してない。

そのお付きの者はまだ私を疑っている。どこが怪しいのかずっと睨みつけたまま。

ですが決して間違っていない。ただ鼻が利くお爺さん。

暗殺者でありながら王子を守る格好の私は確かに信用できないでしょうね。


ただこの爺さんもビアンカにだけは甘い。上品に対応すると笑顔で返す。

私が真似しても睨みつけたままなのに。どこが違うと言うのでしょう?

まさか品がないとでも思ってる? ですが私はお嬢様なのですよ。

ビアンカが騙せてお嬢様の私が騙せないのは許せない! 


                続く

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