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運命の選択 天国か地獄か?

港には二つの影がちらついている。一人は今さっきパン屋で見かけた男。

奴らの仲間かあるいは協力者辺りでしょう。もう一人は不明。

もしかしたら手掛かりがあるかもとつけて来たけどどうやら甘かったよう。

後はお話を聞くかぐらい。そんな風に考えてたらビアンカが自信満々な表情。

読唇術ができるそうで集中したいから話しかけずに大人しくしていろと。

もう生意気なんだか。本当に困ったメイド。


本気なのビアンカ? 

いくら私が目に掛けてる優秀なメイドでもそのような能力あるとは思えませんが。

私には真似できない。人がコソコソ話してるところを盗み聞くみたいで何だか嫌。

お嬢様らしくないし…… でも専属メイドには備わっていて欲しいかも。

ただ私の秘密まで暴こうとしなければだけど。そんな人間じゃないか。

ビアンカか…… 果たしてどれだけの秘密が? 興味が湧いて来た。


王子と言う単語が何度も出てきてることから暗殺関連だとビアンカは指摘。

すると二人はあの最低な男の命を受けて実行に移すところ。

でも…… 暗殺者は女性だけでは? 違うの?

「麗しのアニーと。そう言ってる」

何それ? 悪ふざけ?

結局大した情報は得られなかった。

 

五分もせずに別れた二人。一人は船へ。もう一人は急ぎ足で戻って行く。

間もなく出港の船は城下町まで行くそう。

もう二時間もすると別の船がやって来る。我が村の隣の漁村に向かう船。


「どうしますマリオネッタお嬢様? 」

ついに警戒を解いたビアンカが迫る。もうここには追っ手も監視役もいない。

いればとっくに見つかって拘束されているでしょう。

それがいまだに動きが見られないなら自由。奴らの監視から逃れたことに。

もういい。血塗られた招待状を手にここラクエラまでやってきた。

暗殺者にされ裏切りも逃亡も許されない最悪の日々。

逃れよう逃れようとしたが動けなかった。

初日にあのような惨たらしい現場を見せられては動けない。


そんな日々の中で私たちは今ようやく光を見つけた。

そう。あの船で故郷に帰れる。ただ逃げるなら待たずに城下町まで乗ってもいい。

そしてゆっくり懐かしの屋敷へ。考える必要さえない。

ただ戻ればいいのです。屋敷に戻って楽しく暮らせばいい。

王子が暗殺されたってどうにでもなる。次の者が王子になればいいのです。

戦乱の世が続くとは限りません。たとえそうなってもこれは私の責任ではない。


悩みに悩み考え続けるが結論は出ない。実際には戻るとはっきりした答えがある。

でもそれを選択できない。ここで逃げていいの? いいならもちろん逃げる。

でもそれは違う。


「どうされますお嬢様? ご決断願います」

もう時間がない。少なくても今決断しないと中途半端な気持ちが一番危険だと。

戻るつもりなら出港直前に飛び乗るのもいい。

二時間この辺りで隠れるのもいいと。


「ビアンカはどうする? 」

ダメ。何も思いつかない。故郷に帰るかこのままラクエラに留まるか。

船に乗るか乗らないか。暗殺を続けるか続けないか。平和な世界か地獄の世界か。

考えるまでもない。今足を一歩踏み出せばすべて解決する。それでも……

「お嬢様がお決め下さい。これはメイドごときが決断できるものではありません」

厳しい。私にすべてを任せるだなんて…… でもこれがお嬢様の務め。


「その水晶にはどのような反応が? 」

私を映し出す特殊な水晶玉。今これを見ればどうすべきか示されているかも。

この状況では何か別のものに頼らざるを得ない。やはり決断は難しい。

「甘えないでください! ただのガラクタです! 叩き割ってしまいますよ」

そんな風に脅す。要するにもうビアンカも戻りたいのだろう。

それを察するのがまたお嬢様。お付きメイドの気持ちを汲み取ってやるのも仕事。

大体水晶割ったら暗殺できないでしょう? どんな手を使うか知らないですが。


「ビアンカありがとう。でも本当に私にすべて委ねていいの? 」

これは最終確認。もうそんなに時間も残ってないしね。

今度の決断がこれからを左右する。もっと言ってしまえば物語の方向性が決まる。

私とメイドのハラハラドキドキ旅と言うだけならこれくらいで終えても構わない。

しかしそうでなく王子をお助けしハッピーエンドに向かうなら……

「はい! 」

もう何も言わない。余計なことは言わないと背筋を伸ばし命令を待つ。

これが我がメイドのスタイル。


「続けましょう。王子を助けるのです! 」

ああ言ってしまった。勝機はまったくないのになぜ無謀な決断をするのか?

これでは私の命どころかビアンカの命まで危ない。

「ふふふ…… 行こうかマリオネッタ」

もう姉を演じる。切り替えの早いことで。

「そうですねビアンカお姉様」

こうして手を取り合って表舞台に戻る。

今私たちがしようとしてることは危険極まりないこと。

最悪この手で王子を手に掛けることになる。それを十分承知の上で戻るのだ。


交易都市ラクエラに迫る脅威。

もう止める者はいない。ただひたす殺戮が繰り返される。

ほら今もどこかで銃声が鳴り響いている。


「行って見ましょう」

手掛かりがあるかもと銃声のする方へ。

まさかそんな危険なことにわざわざ巻き込まれに行く訳? 冗談でしょう?

もう信じられない。好奇心旺盛な困ったビアンカ。

と言いながらもどうしても引きつけられていく私。もう自分が嫌になる。


                続く

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