メグレン様の機転
十二名の候補者が選出されすっきりしたところで問題発生。
選ばれずにプライドを傷つけられた令嬢たちが会場の外で騒ぎ始める。
このままでは乱入しかねない危険な状態。
そこにトルドの爺さんが無理やりねじ伏せようとするから反発を喰らう。
叫び続ける令嬢たち。もはやプライドをズタズタにされてもう黙っていられない。
これではいつ暴動が起きてもおかしくない。
「申し訳ない皆さん。改めて感謝の言葉を述べさせていただきます。
この度の王子によるお相手探しは急遽行われたため準備不足でした。
そのため皆様方には大変ご迷惑をお掛け致しました。協力に感謝しております。
どうぞお気をつけてお帰りください。何かありましたらどうぞキングへ。
それではまたいつかお会いしましょう」
そうやってハッチ王子に代わってメグレン様が呼びかける。
不満もあるだろうがメグレン様の丁寧で誠実な対応が令嬢たちを黙らせる。
そして最悪なことにメグレン様人気が高まってしまう。
どうしてこうなった? 私だけのメグレン様がどんどん遠ざかっていく気がする。
静かになったところで残った者は部屋へ。
ベットはないものの簡易式の寝床が与えられ宿泊することに。
逆に言えば候補者が会場を離れることを禁じたとも。とても大胆な処置。
これでは外部と連絡を取るのは難しい。気軽に外出も不可能。
その状況で暗殺者を泳がせ決定的な動きを捉えるつもりでしょう。
これはトルドの爺さんの作戦ではなくメグレン様が企てたものに違いありません。
どうであれ王子を狙う者はまだまだ残っている。
人手も足りないので無理に張り付くことはしない。
その代わり立ち入り禁止エリアを設け王子の寝室に近づかせないようにしている。
これで少なくても夜中は安全に過ごせることでしょう。
王子側の要請で不審人物の割り出しと令嬢たちの安全の確保を託された。
しかしそれはどちらも不可能に近い。
告白するタイミングを逸してしまったから。
まだトルドの爺さんに正体を伝えてない。最初の十名に選ばれなかったから。
不信感が残る。信頼関係が完全には築けてない。それに裏切らないとも限らない。
それにハッチ王子にはまだお断りしていない。
せっかく選ばれたのに今断れば追い出される。
それはさすがにちょっと……
メグレン様にも愛の告白をしてない。
何だかとっても言い辛くて。いざ告白するとなると緊張が半端ない。
それにメグレン様はやさしい方だけど何だか軽い感じがして。何者?
何と言ってもメグレン様から愛の告白を受けたい。だからもう少しだけ……
そんな風に先延ばしにしてると状況が悪化するのは目に見えてるんですけどね。
そもそも私たちこそが王子を狙う不審人物で仲間やライバルを裏切れない。
どうにかサインを送って気づいてもらうのが精一杯。
それに候補者十名は結局はライバル。だから自分を犠牲にしてまで助けられない。
協力したくてもできたくない事情がある。それを汲んでくれると助かるのですが。
一番の問題は偏りがある。
どう言う選考基準で選んだの? ほとんど奴らの送り込んだ暗殺者じゃない。
誰とは言いませんけど趣味と言うか適当に選んでもこうはならないでしょう?
文句を言っていた令嬢の気持ちがよく分かる。どうしてこんな奴らを選んだ?
私を含めロクな奴がいないじゃない。明らかにわざと選んでる。
これは何かある? 王子を狙う者の陰謀に違いない。
もはや誰一人として信用できない。それはビアンカも例外じゃない。
トントン
トントン
「どうした? もうハッチ王子はおやすみになられておる。明日にせい」
「それがトルド様…… 例の二人組が至急話があるそうです」
「通せ! ただしそれ以外の者がいないかよく確認しろ」
許可を得てビアンカと。
「お疲れのところ申し訳ありません」
王子はおやすみになっている。起こすのも悪いので二人と話し合うことに。
「やあマリオネッタ! 苦労を掛けたね君たちにも。それで何かな? 」
メグレン様が対応する。
「少し疑問が。私の知る限り多くの暗殺者らしき人物がパスしてしまいました」
「ははは…… 分かってるんだがこちらとしてもできるならそうしたいが…… 」
メグレン様はふざける。らしくない。随分と余裕がある。
「今回の選考に不満があるんだね? 」
「そうですよ! なぜ三十人近くいて令嬢ではなく暗殺者を選ぶのです?
まったく理解できません! 」
怒りのポーズを取る。私たちにも納得できるよう説明してもらいたい。
「選んだのはこのトルドだ! お二人には関係ない。独断と偏見で選んだ」
そう言われては返す言葉がない。
「だとしても令嬢を差し置いてなぜ暗殺者の疑いのある者を? 」
「一網打尽にするために決まっているだろう! これ以上狙われては困るのでね」
意外にも考えていたらしい。それでも納得が行かない。
「だからって! 」
「まあまあ落ち着いてマリオネッタ。ここで相手のやる気を削げばいいんだ」
何だかんだ言うけど結局大した作戦はないよう。
「ではなぜ私を選ばないのです? これほどお慕い申し上げていたのに! 」
恨み節のつもりはない。でも少しは名前を出してくれてもいい。
マリオネッタお嬢様なのですよ? その辺の庶民とは違う。
「ですから何度も言うようにあなた方はもはや協力者。
あえて十名に入れる必要はない。何度もそう申し上げてるかと」
そう説得されたら頷くしかない。それにしても言い訳だけは上手くなった気が。
十名プラスだから情けで選ばれた気がしてならない。
なぜ選ばなかったか疑問。あえて外すから何かあったのかと思う。
まあいいでしょう。つまらない話はこれくらいで。
とりあえず追及を逃れて終わりと言うことにしておきましょう。
どちらにせよ立ち入り禁止エリアに立ち入らない限り王子たちに近づけない。
これ以上心配することもないでしょう。
続く




