選ばれし者
スカーレット。
まさか…… 令嬢に上手く溶け込んでいた? するとパートナーも同じように?
とにかく今は急いでスカーレットのパートナ―探し。
でも待って…… もし彼女が本物の令嬢で私と同じような境遇なら?
狙いはもっと別にある? 分からない…… 仮にそうでも助けらない。
「ねえマリオネッタ。私見つけちゃった」
その一言がずっと気になっていた。どうも復讐を果たそうとしている感じだった。
でもそれが誰にどうやってかまでは聞けなかった。
僅か三日間の付き合いだったからそれ以上詳しくは聞けない。
どうしよう? スカーレットの件を秘密にはしておけない。
メグレン様やトルドの爺さんにいち早く報告しないと。
そうでなくてもビアンカにだけでも伝えないと。
もうこれ以上メグレン様の期待を裏切りたくない。
しかしだからと言ってスカーレットを売るような真似はできない。
どうすればいいの?
このまま見守る訳にも行かない。
決断を迫られる。
きゃああ!
メグレン様に近づく小悪魔たちが騒ぎ出した。
「どうしたんだい君たち? 」
「メグレン様! どうか私とぜひ! 」
「私も! 」
「お願いしますメグレン様! 」
ダメだ。呑気な令嬢はハッチ王子を無視してメグレン様に群がる。
私が目をつけたのに人のものにちょっかい出さないでよね。
うるさいなもう! 現実を理解してない令嬢たちを見ているとイライラする。
何なのよこの人たち? 引っ付いて無理やり頼み込むんだから。
相変わらずおかしな被り物と帽子で素顔を隠してますが私に相応しいに違いない。
それなのに邪魔をするように群がる困った人たち。本当にどうするばいいの?
そこに格段に怪しいのが。女性なのは間違いないが輪に入ろうとコソコソしてる。
ビック隊長に続いてトルドまで狙われたのは間違いない。
だとすればメグレン様も狙われて当然。
「どうされました? 」
令嬢? どこか見覚えのある方。彼女こそが今回の実行犯で暗殺者。
「いえ…… 何でもありません」
そう言ってそそくさと逃げようとするので合図を送る。
するとすぐにトルドの爺さんが動く。
「よろしいですかな? 王子がお気に入りのようです」
ダンスホールから離れて一人になったところで迫るやり口。
私も少々気になるので二人の元へ。
「一体何事なの? 」
トルドの爺さんが決めつけるものだから令嬢は機嫌を損ねる。
うーん。もう時間もないと言うのに何をしているのでしょう?
「いいから吐け! お前は誰に頼まれた? 誰を狙った? 」
令嬢に擬態した暗殺者。これは一筋縄ではいかない。
「失礼しました。疑いは晴れましたので何卒穏便に」
そう言って舞踏会場に戻ってもらう。
どうやら爺さんの早とちりのようで今回は確証を得られないと見逃す。
もうこんな時に何をやってるのよ。
「どうです? 」
「ああマリオネッタか。問題ない。怪しいが振る舞いもお嬢様で凶器もない。
さすがにこれでは捕まえようもない。逃げ切られてしまった」
嘆く間も王子は襲撃の危機にさらされている。急がないと王子の身に危険が迫る。
ではここは見回りを強化するとしますか。
暗殺者たちはどう攻めて来る? 気が気じゃない。
「どうしたんですハッチ王子? 震えているようですが? 」
連続で襲撃されたからさすがのハッチ王子も震えが止まらない。
「何でもない…… 少し気になることがあるだけだ」
突然のハッチ王子のうろたえよう。まさか怯えてるの?
状況は何一つ変わっていないのに。
仮に令嬢の中に暗殺者がいても近づくことはできない。
それに狙いはお付きの爺さんではないの?
ハッチ王子を丸裸にして舐め回す作戦に出ているとばかり。
もっと堂々としていればいいのに。まさか狙われる確証がある?
「大丈夫ですか? どうやら旅の疲れが出たようですね。無理しては行けません」
相変わらずハッチ王子にご執心のビアンカが包み込む。
もう! あなたは私のメイド。優しく包み込むのはお嬢様の私をでしょう?
なぜハッチ王子を? どうもビアンカの考えることが分からない。
「どうしましょうメグレン様? 」
さすがに親しく話すのは令嬢たちに悪い。奴らだって見ているから慎重に。
当然メグレン様にもマークがついてるでしょう。
「トルドとも話したんだがもうお相手を決めてしまおうかと」
「まさかもう決たんですか? 」
「いやそれはさすがに…… だから候補を十名ほど」
ハッチ王子のお相手選びは第二段階へ。
王子が下がって三十分後にトルドの爺さんが手を叩き発表する。
「皆さん大変美しく魅力的でありますので選考は非常に困難を極めました」
前置きをしてもったいぶる爺さん。結局何が言いたいのよ?
もう緊張するなって私は関係ないのか?
メグレン様と幸せになるのだから。
「先ほど王子のお相手候補を選ばせて頂きました。
真に勝手ながらどうぞご理解下さい。それでは呼ばれた令嬢はどうぞそのままで」
こうして残念ながら選ばれなかった令嬢はこの場を去る。
これで余計な手間が省ける。
王子の好みに合わせ選ばれた十名が緊張の面持ちで前を向く。
「ちょっとこれはどう言うこと? なぜ選ばれないの? ふざけないで! 」
怒りに任せヒステリックに叫ぶ漏れた令嬢たち。
気持ちはよく分かりますがこれはそもそも王子のお相手を選ぶもの。
その為の晩餐会であり舞踏会。
ただちょっと待って…… 何でこのマリオネッタお嬢様が選ばれてないの?
可哀想に王子に尽くしていたビアンカまで。これでは寝込んでしまうじゃない。
いくら選別したと言ってもトルドの爺さんが勝手に選んだんじゃないでしょうね?
一応私主役なんですけど?
続く




