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第10話 夢だ、これは

ラッパの音が鳴り響く


俺は、いつもの通りに布団を畳み、いつものように服に着替える


そして朝食


同兵「お前、またうどんかよ」


望月「いいだろ別に」

  「今日が最後かもなんだから」


俺のうどんには、大好きなえび天は乗っていない、ただの質素なうどん


だがまぁ、これはこれでいい


戦争が終わったら絶対えび天乗ってるうどんを食う


同兵「お前、うどん好きだよなぁ」

  「えび天とか特に」


望月「えび天は最高」

  「えび天のためなら俺は生き残る」


同兵「お前らしくていいな」


目の前に友人が座る


同兵「あ、そうそう」

  「お前、上官に呼ばれてたぞ」


上官に?


……戦闘機から飛び降りて敵機に乗り移る作戦は、やはり危険だからやめろとか言われるのか?


同兵「お前のその作戦はな、お前以外出来ねぇんだよ」


簡単なのに


うどんを啜りながら友人の話を聞く


同兵「……これやるよ」


望月「は?」


友人から唐揚げを貰った


同兵「おれ、最近胃もたれが……」


望月「ジジイかよ」


そう言いながら、貰った唐揚げを口に運ぶ


望月「あ、そういや」

  「嫁さんは元気か?」


同兵「めっちゃ元気」


友人は思い出したかのように


同兵「そうそう、先日写真が届いてこれ、俺の娘だ」

  「可愛いだろ?」


友人は写真を見せながら、悲しそうな顔をして


同兵「……この手で、撫でてやれないのが悔しい」

  「こんな汚れた手で、俺の可愛い可愛い純粋な娘を、撫でたくない」


まぁ……理解はできる


この手で、ガキ共を撫でたくねぇな


望月「ご馳走様」

  「じゃ、行ってくる」


同兵「行ってら〜死ぬなよ〜」


望月「俺が死ぬとでも?」


同兵「思わねぇよ」


❂


上官室内


上官「貴殿は、航空隊ではなく、陸上部隊へ、配属先が変更された」


望月「……お言葉ですが上官」


上官「すまない……司令だ」


奥歯を噛み締め


望月「……承知しました」


扉が閉まる音が響く


❂


同兵「よっ」


後ろから肩に肘を置かれ、声をかけられた


望月「配属先が変わった」

  「空から陸へ」


友人の顔を見ることができない


同兵「……そうか」

  「でもまぁ、お前が神風特攻行かなくて良かった」


歯を食いしばる


望月「そーかよ」

  「……剛(つよし)」


友人だった人の名を呼ぶ


望月「死ぬなら一瞬で死ね」

  「苦しまずそのまま死ね」


あいつは驚いた顔をし


同兵「そこは死ぬなとか言うところだろ」


望月「だってお前……」


俺が言い淀んでいると


同兵「なんだ、知ってたのか」

  「わかったよ、努力はする」


本当に、残念な奴だこいつは


作家の才能あったってのに


❂


爆破音


悲鳴


外来語


やっぱ、陸より空の方が楽だった


俺は、実家から持ってきた赤い角のお守りを握りしめる


望月「酒呑童子、今も力を残しているのであれば、俺に勇気を与えてくれ」


そう、小さく呟く


そして、敵兵へ銃の照準を合わせる


❂


ガバッと体を起こす


汗が酷い


目の前には、つい先日


俺の家で飲みあった奴が寝ている


洗面所へ行き、水を流す


顔に手をあて


望月「最悪の目覚めだ」


俺の声は、流した水の音に溶け込んだ

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