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第47話 交錯する空と、遠雷の戦火

治癒部隊は、前線からは遠ざかった後方に広大な救護テントを張っていた。

そこに運ばれてくるのは、ほとんどがもう手の施しようがないほどに深く傷ついた忍たちばかりだった。

それでも最期の最期まで、クノたち治癒部隊はその命を諦めずに必死に蘇生を試みる。

毎日、要救護者に必死で治癒ヒールを施しながらも、次に運ばれてくるのがキザムではないかと、胸の奥で常に恐怖と祈りが入り交じっていた。

(キザムに逢いたい……。逢って、心にずっと燻っているこの想いを伝えたい)

自分もキザムも、いつ帰らぬ人になるか分からない。だからこそ、自分の気持ちを伝えずに後悔することだけはしたくなかった。

クノは手を止め、ふとテントの隙間から外の空を見上げる。

この空はきっと繋がっている。キザムもどこかで、同じ空を見ているはずだ――。

その頃、キザムもまた、遠く離れた場所で空を見上げていた。

(いつになったら、この戦争は終わるんだろうか……。あの平穏な日々を取り戻せる日は来るのだろうか……。)

キザムは遊撃隊として一人前線に立ち、侵略してくる敵の命を容赦なく刈り取っていた。

一人でも敵を通せば、日ノ本の里に――いや、クノに被害が及ぶかもしれない。

大切な人を守るため、キザムは眉間に深い皺を寄せ、両手に『古代文字』の「火」を灯し、拳を振るう。

この地での遊撃隊としての任務がようやく終わった時、一羽の伝書鳩がサンズイからの手紙を運んできた。

――キザム

元気でやっているか?

遊撃隊として忙しく飛び回っているのは分かるが、里の近くに立ち寄った際には、顔ぐらい見せに来い。

クノも心配している。

(追伸)

俺が護衛部隊として掴んだ情報によると、もしかしたらこの戦争の黒幕はアメルイーストではないのかもしれない……。これは決して他言無用、誰にも話してはならない機密事項だ。詳細が分かったらまた連絡する。

「顔を見せに来い、なんてサンズイらしくもない……それに、アメルイーストが黒幕じゃないって……一体どういうことだ?」

手紙の最後に書かれた信じがたい一文に、キザムは険しい顔で眉間にシワを寄せた。

「サンズイのヤツ、いったい何を掴んだんだ……。直接会って、その詳細を詳しく聞き出さないとな」

キザムは手紙をしっかりと折りたたむと、胸元にしまい込んだ。

「さて、ここでの任務も終わりだ。サンズイに顔を見せがてら、その真相を問いただしに帰るか」

そう思った、瞬間だった。

足元の荒野の砂が激しく盛り上がり、その下から突如として刺客が飛び出してきた。

キザムは反射的に後ろへと飛び退く。

刺客の両手には、不気味に回転する螺旋状の掘削機のような武装が装着されていた。

「オマエはシノビか?」

侵入者が低く問う。

「そうだ!」

キザムはまっすぐな眼光で応じた。

「シノビは全て粛清対象だ」

男は両手の掘削機を唸らせ、再び砂の中へと身を隠し、下から攻撃を仕掛けてくる。

ドリューと名乗ったその男が砂の中に飛び込んだ際、その背中には『土竜』の文字が生々しく浮かび上がっていた。

(あれは……『古代文字』……?)

『古代文字』を宿した者を見たのは、かつてのヒョウゲツの一件以来だった。

自分の目を疑いたくなるが、目の前で起きている殺意に満ちた現実がそれを否定する。今は余計な事を考えている暇はない。神経を研ぎ澄まし、先に相手の命を刈り取らなければ、こちらが殺される――それだけだ。

砂の中に潜ったドリューが、どこから現れるのか全く読めない。

キザムは血眼になって辺りを警戒するが、勘だけに頼った動きではどうしても後手に回ってしまう。

ドリューの予測不能な強襲を何度も受け、キザムの身体中のあらゆる場所から鮮血が飛び散った。

「出てくる場所さえ読めれば、仕留められるのに……!」

手傷を負い、呼吸を荒らげるキザムの背後から、不意に懐かしい声が降ってきた。

「そこで血塗れになっているのはキザムじゃないか? そんな所でどうしたんだい?」

それはジャミの声だった。

相変わらず蛇のような細い目で、飄々とした話し方をしており、自分の本心を決してさらけ出そうとはしないが、その佇まいには確かな大人の余裕があった。

「ジャミ……っ」

「随分と苦戦しているようだね。僕が力を貸してあげるよ」

そう言うと、ジャミは蛇のような細い目を見開き、その瞳を真っ赤に染め上げてニタァと歪んだ笑みを浮かべた。

ジャミが所有する固有の特殊なチカラ――体温感知。その詳細について、ジャミはこれまで誰にも語ろうとしなかった。

地下深く、砂のどこにドリューが潜んでいるのか。ジャミの的確な索敵によって完全に位置が暴かれる。

ドリューが地表へ飛び出したその瞬間、ジャミは迷いなく短刀で急所を一突きにした。

「ジャミ、相変わらずだな……」

「こういうのが昔から僕の仕事だからね」

「それより見たか? ヤツの背中にあった『古代文字』を……」

ジャミはわずかに不愉快そうに顔をしかめる。

「また何か、『古代文字』を使って企んでいるヤツがいるのかも……」

「軽率な憶測はあまり好きじゃないんだ……。キザム、その傷じゃ話にならない。一度里に戻って、治癒してもらうといい」

ジャミに肩を貸されるようにして、キザムは重い足取りのまま、里へと一時帰還するのであった。

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