第18話 女子会が終わり、陰謀が始まる
青里さんは役割のため去っていった。
つまり今は、江さんと2人で白澤くんを待っている状態にいる。
・・・。
・・話すことがない。
今回の事件に関する推理はさっき一区切り着いたし、そもそも私の推理なんて何の当てにもならない。
そんな私の逡巡が伝わったのか伝わらなかったのか、
「あの、少しよろしいですか?」
江さんから話しかけてくれた。
驚きのあまり少し固まってしまったが、すぐに我を取り戻すと、私は江さんと目を合わせる。
「な、何か?」
「1つ気になっていたんですけど、赤崎さんって美咲さんのことを苗字で呼んでいますよね?」
・・は、はい。
声に出して返事をしたかったが、なぜか出来ずに首だけ振って意思表示をする。
声が出なかったのは、江さんのクールな声色に圧倒されたのも理由の1つだけど、それよりも感じたのは・・
「もしよければ」
さっきも同じ展開になった覚えが・・
「下の名前で呼んであげれませんか?」
デジャブってこういうことなんだ・・。
「あの人、本当は同級生の女子と友好的になれる機会を得られて、頑張っているはずなんですよ。ただ今まで一匹狼だったことが影響して、人と距離を近づけるのが苦手みたいで」
あなたも同じようなこと言われてたよ?
なんてモチロン言えるはずもなく、私は黙って傾聴に徹する。
「なので、呼び名を変えるところから始めて、徐々に近づいてほしいな、と。余計なお世話ですけどね」
そう言って含み笑いをする。
江さんが”楽しいことがあって”笑うところをあまり見たことないので、ちょっと嬉しかった。あと可愛い。抱き締めたい。
まぁ多分、江さんが言ったようなことを本人に言っても「余計なお世話よ」とか言って割り切られそうだし、私と2人きりになってから提案したのは正解だっただろう。
「無論、可能になった時で構いませんよ」
そう言うと江さんはスマホに視線を落とした。
青・・美咲さんと江さんがお互いに気を遣い合っている。
なんか、2人って姉妹みたいだなぁ。
見られてないのを良いことに、私は思わず笑みを溢した。
※※※
「お待たせ、部長。交代しようか」
教室の隅で腕を組んで宝石を見守っていると、横から声を掛けられる。
美咲は、相変わらず無表情ではあるものの、僅かながら声にポジティブな雰囲気を帯びている。
「なにかあったのか?」
「ん?ああ、強いて言うなら・・」
美咲は自分が来た道を振り返ると、
「・・女子会をしてきた、かな」
喜びの笑みを添えて、静かに呟いた。
・・・じょ、女子会?
※※※
そして時刻は11時半。
文化祭来客数もピークを迎えようとしている。
来客者の盛り上がりとは無縁の場所で、悪意の込められた陰謀が動き出そうとしていた。
「よし、やるか」
「よし、やるか」
校舎裏の白澤と、生徒会室の三寧が、同時に言う。
各々《おのおの》の思惑が交錯する戦いが、音も無く始まった——。




