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悪魔だらけの探偵部  作者: 木板 実
第2章 歓迎の予告状
18/30

第17話 揃い始めた証拠たち

 人混みを通り抜け、オレはグラウンドに出る。

 外は来客者で溢れており、老若男女揃っている列はゆったりと進んでいる。

 9月半ばの昼前である今、暑くも涼しくもない丁度良い空気が流れていることが彼らにとって幸運だろう。

 オレはグラウンドの端に移動すると、校舎の裏に回り込む。

 この校舎裏は運動部が稀にトレーニングをする空間だという。

 そのおかげだろう、手入れされていないこの場所も大部分は土が見える。まぁ、周りは草が生い茂っているけど。

「・・踏まれて禿げてるだけ、だな」

 どうにかして草木を掻き分けて土の上に立つと、そこから校舎の3階付近を見る。

 そこは『生徒会準備室』がある場所、つまり校舎西端だ。つまりその下である2階西端は生徒会室。

 さらに、オレの目の前にある1階西端の教室は3年2組。そこは会長と副会長が在籍しているはず。

 オレは校舎を見上げながら、数日前に届いた赤崎からのメールを思い出す。


『今日聞いたんだけど、森田先生が帰り道に生徒会室あたりで変なのを見たんだってさ。誰かが生徒会室から物を落として、別の誰かが真下の部屋でそれを捕っていたらしいの。しかも2人とも制服着ていたから生徒の可能性があるとか。これって例の予告状と関係あるかな?』


 オレの背後にあるフェンスを超えると、すぐそこは公道になっている。

 つまり『生徒会室が見える帰り道』というのはこの歩道ということになるだろう。

 生徒会室の下の教室は3年2組。

 生徒会室の上の教室は生徒会準備室。

 つまり、とある生徒は生徒会室から3年2組に物を投げ落としていたことになる。

「必要な証拠ピースが揃ってきたな」

 そう呟き、早速撮影の準備に取り掛かる。




 ※※※




「せ、生徒会が私たちの存在を知ってるの?」

 時刻は9時40分。この女子会も終わりを迎えようとしている。

 そんな終盤に来て、青里さんが初めて動揺を表情に映した。

 声は出してないが、江さんも顔が強張っている。

「す、少なくとも書記の三寧 佑磨さんが知ってるってだけで、生徒会の役員さん全員が知ってるとは限らないけど・・」

 ただ、同時に『全員が知ってる可能性も十分にある』ということも明確な事実。

 それを理解してのことか、2人は真剣に考え込む素振そぶりをする。

「・・部長は、そのことを知ってるんでしょうか?」

 江さんの発言に、青里さんがゆっくりと顔を上げる。

「どうだろうね。部長、全然生徒会に興味ないから、もしかしたら・・」

 にしても、どうしてこの人たちはこうも探偵部の存在を隠したがるのだろうか?

 特別やましい事はこの2週間で見受けられなかったはず。目立ちたくない、とも考えられるが、目の前の2人の反応を見ていると最早「存在を隠蔽したい」ぐらいの勢いを感じる。

 ・・って、それよりも考えるべきことがあった!

「あの、1回その件には目を瞑って、後日また議論しましょ?今は、書記の三寧さんの話ですよね」

 一瞬キョトンとした2人だったが、少し不服そうな顔をして、

「そうね・・この話は部長も交えないといけないだろうし」

 そう言うと青里さんは溜息を1つ残すと、腕を組んで真剣な面持ちを作る。

「現状の私たちにおいては、その書記のみが容疑者ということになる・・状況証拠にしては、揃いすぎてるわね」

 そして私たちは三寧さんが犯人だという可能性を示す証拠をメモ帳に整理することにした。


 1.書記が探偵部の存在と実力を知っていた

 2.学校関係者で、融通が効く立場

 3.生徒会は文化祭の最中は自由

 4.生徒会は『勇壮な翠玉(ブレイブ・エメラルド)』展示の担当をしている


「こ、これだけあれば・・!」

 私が目を輝かせていると、

「もう一つ、重大な証拠があります」

 そう言って江さんがペンを走らせる。

「予告状の最後にありましたよね?『セイナン』って。あれってもしかすると・・」

 メモ帳に『SEINAN』と書くと、矢印を順に伸ばしていく。

「もしかして、アナグラムになってるの?」

「はい、おそらく」

 アナグラムといえば確か、言葉の順番を入れ替えると違う言葉になるやつだ。

 クイズ番組とかで見たことがあるが、解くのは難しい印象がある。

 有名なクリエイターとかがよく使ってるけど・・まさかこの『セイナン』が本当に?

「この『SEINAN』を組み替えると、『SANNEI』つまり『さんねい』になります」

 そう言ってメモ帳の英語6文字を見つめる。

 誰がどう見ても文句のないアナグラムの成立。

 これで三寧さんを犯人だと示す有力な証拠が合計5つも揃った。

「・・決まりだね」

 青里さんの冷酷な声の直後、その青里さんのスマホから着信音が鳴る。

 それを開いてしばらく操作する。

 スマホを注視してから、私たちに液晶を示す。


『あと5分。白澤』


 画面上部にあるデジタル時計は『9:55』になっている。

「どうやらタイムオーバーのようね。次この3人が集まれるのは早くても13時から部長が見張り番をする時ね」

 そう言うと青里さんは、メモ帳を写真に収めてから去っていった。



 ———次にこの3人が集まるのが、13時よりも前になることなど、この時の私たちは誰も知らない。

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