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36 子どものじゃれ合い

 三つ編み……まさか、男性の三つ編みを直すなんて……。

 あ、いや、男性でも髪が長くても別に良いとは思う……太公望さんなら長いまま垂らしていても似合うだろうし……うん。

 片方の肩から三つ編みされた髪を胸元側に垂らしている様子を、何となくだがまじまじと見つめてしまえばジロッと鋭い視線を向けられてしまった。こういうところ!!容姿は優れているし、その……見た目とかもキラキラしていて綺麗なんだけれど、時々鋭い目付きにどうしてもビクッとしてしまう。普通に見返してくれれば良いのに……み、見られることに慣れていないとか?あ……もしかしたら容姿の関係で他人からの視線がどうしても気になってしまうとかって感じなのかな。


「……なんだ?」


「……綺麗だなーって……」


「アホか」


 むぅっ!こういうところも!私は、ただただ純粋に太公望さんの見た目は綺麗だと思う。あと、目の色も。そりゃあ昔にいろいろあったって話は聞いたし、それはそれは傷付いたのかもしれないけれど……。話を聞かないままでも、話を聞いた今でも、私は太公望さんのこと綺麗だと思うのになあ。それなのに、『綺麗』って何度言ってもそれを素直に受け止める気配は全く無いようで『アホ』とか『バカか』とかって返されちゃうばかり。


「だいたい、男が綺麗だなんだと言われて喜ぶヤツがいるか?」


「……可愛いって言われたらちょっとう~ん?って思うかもしれませんけれど、綺麗なら性別とかは関係無いと思います」


「はあ?」


 だいたい太公望さんは『可愛い』って感じはしない。目付きは鋭いし!(←ここ重要!)も、もちろん恰好良い部類に入るとは思うんだけれど……か、恰好良いって伝えるのって何だか気恥ずかしいし……。不意に『恋をしてみるのはどうじゃ?』と謎の美女の声が聞こえたような気がして、慌てて辺りをキョロキョロと見まわすものの当然ながら太公望さんと私以外には誰もいなくて、小さく溜め息を吐いた。


「おい、挙動不審。さっきからどうした?」


「あ!いえいえ、何でも……って、挙動不審って何ですか!」


「ワケの分からん行動を取ったりしているからだ。まったく……今までどんな生活を送っていたんだか……」


「どんなって言われてもごくごく普通でしたよ?学校に行って……友達と有ること無いことでお喋りしながら勉強をして……たまには買い食いとかもしたりして……」


「買い食い?」


「あー……えっと、学校帰りの途中で食べ物を買って友達と一緒になって食べること?です」


「ふ~ん?どうりで……ぷにぷにしているわけか」


 おもむろに私の顔に手を伸ばしてきた太公望さんはそっと私の頬を摘まむと私が痛がらない程度にふにふに、と摘まむという可愛らしい行動を起こしてきた。


「は?は!?」


「ふふっ……やっぱり。柔らかい」


 ちょ、ちょ……!頬はそんなに強く摘ままれていないから決して痛くは無いんだけれど面白そうに笑いながら頬の感触を楽しんでいる様子にギョッとしてしまう。歳相応……よりも、かなり幼く子どもっぽく笑う太公望さんを目の前にしてしまったから今までにない驚きを抱いた。

 この人、こんなふうに笑ったりするんだ……。


「おー、伸びる伸びる!」


 むにーむにー、と頬を軽く引っ張ってみては、さすがに止めて止めて、とばかりに身動ぎしやり返してやろうと太公望さんの頬にも手を伸ばしてみるものの上手く避けられてしまって(なんて回避行動だ!)手が届かない。でも、太公望さんは余裕に私の頬を摘まんでいる。……腕の長さってこと?なんか、ショックなんだけれど……。


「ひゃ、ひゃめてくだひゃぃ……」


「!ハハッ、なんだそれ。言葉になっていないぞ?」


 だって頬を摘ままれているので!何か言おうとしてもはっきりとした言葉にならず、それを聞いた太公望さんはますます可笑しそうに無邪気に笑っている。

 え、太公望さんですよね?同一人物ですよね?なんか、さっきまでと変わっていませんか!?


「う~っ」


 ついつい唸り声のようなモノを出して睨み返してやると『悪い悪い』と頬から手を離してくれるが、ぽんぽん、とこれまた子どもにするかのように頭を撫でられてしまった。


「っ、もう~!」


 同い年?ぐらいだと思うのに、大人な対応をしてばかりいる太公望さんに対して私は気分を損ねてしまってぽかぽか、と太公望さんの胸元を軽く叩いてやった。

 第三者からすれば子ども同士のじゃれ合いにも見えていたのかもしれない。

 

 そんななかコンコン、とドアがノックされて顔を覗かせた天化さんに目を丸くされてしまった。


「あれ、ハノメさんもこちらにいたんですね……って、二人とも何をしているんです?」


「!いやいや、子どもなハノメをからかっていただけだ。……どうした?」


「そうそう。太公望殿に客人ですよ」


「……私に?男か?」


「はい。名を、楊戩ようせんさんという方らしいんですが……名を言えば分かる、と言われたのですが古い知り合いですか?」


「……あー……まあ、知ってはいる……。ハノメも一緒に来い。楊戩も面白い力を持っているから紹介しよう」


 楊戩、という名を聞いた途端に面倒くさそうな、少し、嫌そうな顔をした太公望さんだったが居留守とかを使う気ではなさそうだ。

 寝台から降りた太公望さんに次いで私も寝台から降りていけば楊戩……楊戩……と心の中で呟いていた。あれ、楊戩ようせん?あの、『楊戩』さんなのかな……。あれ、でも天化さんとは知り合いでは無いっぽい?未だにここら辺の人物たちの相関図とやらが分からないのだけれど、たぶん太公望さんの知り合いだって言うから味方側なんだろう。


「……?あれ、ハノメさん、何か良い匂いがしますね?お香か何か焚いていましたか?」


 スッと天化さんの近くを通りがかった際に太公望さんではなく、私に向かってたずねてくるものだから私は疑問を浮かべるばかり。


「へ?いいえ、そんな……何か、匂いましたか?」


「う~ん?これは……お香っていうか、花の匂いですかね?変わった匂いですが、良い匂いですよ」


 花。

 そう聞くと夢の中で見た、何処までも広がっている花畑を思い出してしまうけれど、まさか夢の中のモノが現実にあるわけないし……。クンクン……と衣服の袖口辺りを嗅いでみるが特に何か香ったって感じはしないんだけれどなあ……。


「ハノメー?天化ー?二人とも置いていくぞ」


「!は、はい!」


「すみません。俺の気のせい……だったかもしれませんね」


 既にだいぶ先を歩いている太公望さんに置いていかれたら迷ってしまう、とばかりに小走りで天化さんと一緒になって追いかけていくと天化さんからは申し訳無い顔をされてしまった。いや、別に変な匂いがしたとかじゃなかったようなのでそれは安心したのだけれど……花の匂い?太公望さんからは特に何も言われなかったんだけれど、天化さんだけが気付いたのだろうか?再び、手首辺りを鼻に近付けてみるものの花のような匂いは全然感じられなかった。

 ……良い匂い、か……双子ちゃんたちと過ごしていた大木の下で飲んでいたイイ匂いのするお茶を思い出してしまう。でも、それは有り得ないだろうし……きっと眠る前に太公望さんから用意してもらったお茶の匂いでも残っていたのかもしれない。匂いそのものは全然違うものだけれど……心そのものが落ち着くっていうか、飲むだけじゃなく匂いから伝わる刺激だけでもホッとする感じが……どこか似ているような感じがした。

 いや、なんとなく!ここまで登場するメンツがいて、あのキャラは!?とかってなると、この人も欠かせないかな~って感じです!次回、お楽しみに!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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