24 新たな縁
イケメンな伯邑考さんと出会うことができた。
あれ、でもよくよく考えてみると……時期が、おかしくない?
太公望さんと伯邑考さんが何やら談笑をしている後ろから私が付いて行く。でも、ちょっと待って。ここに太公望さんがいることって不思議なことじゃない?そもそも太公望さんと姫昌さんとの面識はあるのは分かる。でも、なんで伯邑考さんと普通に談笑しているんだ?あ、いや、そもそも伯邑考さんが無事に生きているってことはそれは感動モノになるのだけれど(ビックリしたやら感動したやらで湯殿で泣いてしまった私)この二人って接点ってあったの?
「おや、大通りで出会われたのですか?そしてそのまま連れて来てしまったと……?ふふっ、相変わらず太公望殿は不思議な縁をお持ちのようですね」
「……私だって好きで縁を持っているわけではないのだが。だいたいこの娘には分からないことだらけで何処から手を付ければ良いのやら……」
なにやら私について話をしている様子の二人なのだが、私……どうなるんだろう。不意に思い出してしまうのは双子ちゃんや神様たちのこと。もう、会えない……のだろうか。神様たちはいつどこにいても何も無い空に向かって双子ちゃんに話し掛けることによって眩い道を開けてくれていた。それは『神様』だから出来たってことじゃない?だったら、私がいくら空に向かって双子ちゃんに呼びかけたとしても同じようにはならないだろう。
「……それにしても……娘。もうちょっと静かに出来んのか」
「え?」
不意に太公望さんからの鋭い視線が向けられるものの、私何も言っていませんけれど!?静かに二人を後ろから見守っているだけじゃないですか。なかなかに顔立ちの良いお二人を後ろから見守るというのは胸中も穏やかになって楽しんでいただけなのだけれど……。
「視線がうるさい。やかましい」
「んな!?」
つまりは、じっと見ているな!ってこと?だって前を歩いている人たちに自然と視線が向いてしまうのはしょうがないじゃない。だって他に見るものだって……いや、廊下のあちこち、壁だったり現代からはとても考えられないような建物の造りはとても見応えというものがあるのだけれどあちこちキョロキョロとしていたら怪しいことこの上無いでしょう。
「ふふっ、出会われたのは先ほどばかりという割にはお二人は親しそうですねぇ」
楽しそうに穏やかなイケメンな笑顔を浮かべているのは伯邑考さん。彼と比べると太公望さんって、やぱり子どもっぽいところがある感じかな。姫昌さんの前でも拗ねた様子を見せていたし……年齢の割には幼さみたいな部分が強いのかな?
「太公望殿は初対面の人の前では無口でいることの方が多いのですよ。こんなに言葉数が多いのは珍しい」
それって、人見知りしちゃうってこと?やっぱり子どもじゃない。伯邑考さんがそのように口にすると太公望さんは拗ねてしまったのか、一人でズンズンと歩いて行ってしまって、とある一室の中へと入って行ってしまった。
「アレは拗ねているのですよ。太公望さんは落ち着いてみえるかもしれませんが、少し子どものようなところがあり、いろいろと言葉を掛けて拗ねる反応を見るのは楽しかったりするものです」
「……なんとなく、分かる気がします……」
穏やかな笑みとともにつげてくれる伯邑考さんの言葉に、小さく頷きながら思わず吹き出して笑うと『おや』と少し驚いた様子の伯邑考さん。
「ようやく落ち着かれましたかな?あなたはそのようにお笑いになるのですね。やはり女性は笑っている顔が一番素敵ですね」
い、イケメン……だと思っていたけれど、意外とタラシなのだろうか。この顔で人通りの多い場所に出たら女性の方から近寄って来て囲まれてしまうタイプかもしれない。しかも一人一人にきちんと対応して一人一人の心をさらりと奪っていってしまうんじゃないだろうか。……イケメンって怖い。
太公望さんが入って行った部屋に伯邑考さんとともに訪れるとそこには姫昌さんが先に来ており、何やら机の上を眺めていた。何か、置いてある……?
「!伯邑考も一緒だったか。ハノメさん、お湯の方は如何でしたかな?」
「はい。とても気持ち良かったです」
濡れた巫女装束は、『給仕の者に片付けさせるからそのままにしておけ』と太公望さんに言われてしまったので湯殿の隅っこの方に置いてきてしまった。慣れないぶかぶかな衣類に違和感はあるものの、みんな似たような恰好をしているから雰囲気的には巫女装束より今の方が溶け込んでいるかもしれない。
「……父上、そちらは?」
「なに、ちょっとした占いを……。ハノメさんがどうやらお困りの様子でな……。太公望殿はどう思われますかな?」
「ふむ。……東に流れを変える物事があるようだが、ここから東と考えると……あの、バカがいる所だろう?気は進まん」
「はは、太公望殿からすれば王をバカと仰るか」
?どうやら机の上では占いをしているようだけれど姫昌さんは太公望さんの意見を参考にしたいみたい。太公望さんってそんなに占いが得意だったりするのかな。伯邑考さんの様子を伺ってみるものの伯邑考さんは占いのことはさっぱりの様子で二人の会話を静かに見守っているみたい。
「だが、急ぎ事を起こす必要は無いのでは?娘の相も大分変わった様子。暫くはこの地にて過ごし、心身を落ち着かせるのも良いのかと……」
じろっと太公望さんの鋭い視線が私を射抜くが、次いで姫昌さんも私を見ると『それはそれは良かったですなぁ』と穏やかに笑っている。あ、やっぱり姫昌さんと伯邑考さんって親子だ。笑い方がそっくりじゃん。
「ハノメさんは如何ですかな?急ぎ必要なことが無ければまずは、周にて滞在していただき、心身を落ち着かせてみるのは?」
「……えっと、私はここら辺には詳しくは無いので、もし……あの、なるべくお邪魔にならないようにしますから……お世話にならせていただきたいです……」
ガバッ!と頭を下げ、しばらくの間ジッとしているとポンッと優しい手が私の肩に置かれた。この優しい手付きは姫昌さんだろうか。と思い、ゆっくりと顔を上げていくとそこには意外なことに太公望さんがいた。
「協力出来ることには手を貸す。……先ほど言っただろう?」
ニコリって感じの笑顔じゃない。フッと小さく笑う感じのモノだったけれど、太公望さんは今まで見てきたなかで一番優しげな表情を向けてくれた。すると私の体の力が抜けてしまってついついだらしのない笑みをこぼしてしまった。
「ハノメさん。安心してください。太公望殿は人助けをすることが趣味のようなものですから。それに我々、姫一族も力になれることがあれば力を貸しますからね」
伯邑考さんも頷きながら同じように優しい言葉を掛けてくれるので心から温かくなってしまった。これは先ほど湯に浸かっていたからって理由だけじゃないだろう。人間の身なのに、一緒になって悩みを聞き、力になってくれると言ってくれたから安心したのかもしれない。
「悪霊だか怨霊だかも退治するのだろう?ふっ、それなりの腕達者はこの国にもいる。その者に鍛えてもらうのも一つの手になるからな」
「おやおや。太公望殿、何やら意地が悪い表情をしておりますぞ?ハノメさんを実験台のように面白がるのだけは止めておいてくだされ?」
「!わ、分かっている!そんなことぐらい!」
実験台?
ちょっとその言葉に引っかかってしまったものの、そうか……急ぐことは無いんだ。ここで、しっかりと戦えるための術を見つけて、戦えるようになって……そして、いつか……また、双子ちゃんたちに会えると良いなあ……。
太公望さんが『バカ』と言ったのは、果たして誰のことか……それもいずれ分かるかもしれませんね。姫一族っていうのは、姫昌さんとか伯邑考さんとかの……えーっと……なんて言ったっけ……性?でしたっけかな?うろ覚えですみません!(汗)
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