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20 太公望とイケオジな姫昌

 今まで灰色の空と荒れた大地ばかり見ていたせいか、外界にこんな活発な場所があるだなんて不思議に感じてしまった。

 でも、住民たちは賑やかに楽しく過ごしているみたい。

 あぁ、ここは平和なんだ……。

 呂望、と名乗る男性……まだ歳若そうに見えて、私と同じぐらいかちょっと年上だろうか?話し方はとても大人っぽいモノだけれど見た目は若そう。そう歳は変わらなさそうに見える青年の後を付いていくと、店が左右に連なっていた大通りから離れていくと……お城?の前にと着いてしまった。え、もしかして呂望さんってお城の関係者?とてつもなく偉い人なんじゃ……と戸惑いながら後ろから追いかけていくものの特に私へと振り返ることはなくどんどんと先へと進んで行ってしまう。


 門……のような場所を通り抜けると、目の前には立派な建物が。思わずぽかーんと口を開けて立派な建物を見上げているとようやく呂望さんが私へと振り返って見てきた。


「変わった反応をなさる。……王城を目にするのは初めてかな?」


 慌てて口を開けて見ていた私は、両手をあてて口を閉じるが……、王城なるものには圧倒されるばかりで『はい……』と応えることしかできなかった。


「ハノメ殿、と言ったか。出身は?改めて聞くが、何故ここに……しゅうに?要件を聞かせていただいてもよろしいか?」


 呂望さんは優しげな人だと思っていたけれど、王城を目の前にした彼は、キリッと鋭い視線を私に向けてきて、まるで私を尋問するかのように、犯罪者に己の罪を認めさせんばかりの警察官のごとく冷たい視線を向けてくる。

 それに、今ここを何処だって言った?周?周って……それ、大昔に中国辺りにあった国……とかじゃなかったっけ。歴史……っていうよりも、ちょっとした漫画でそういう話があったような……。


「わ、私は……」


「これは珍しい。若い女性がいらっしゃると思えば、あなたの客人でしたかな?太公望殿」


「げ」


 げ?

 今、呂望さんの口から『げ』って聞こえた?え、なに、その反応。子どもみたい?それに、新たに姿を現した……ダンディなイケオジ風の方は呂望さんに向かって『太公望』って呼んだ?太公望……って、あの太公望!?それこそ、歴史系の作品とかに登場した太公望ってこと!?

 でも、イケオジ様が現れてからの呂望さんは何処か面倒くさそうな表情をし、気まずそうに顔を横に背けてしまっていた。……やっぱり子どもか?イケオジ様はとっても素敵な男性っぽいけれど呂望さんは苦手だったりするんだろうか。でも、私が想像する太公望っていう人物ってちょっとひょうきんなところもあるけれど人間関係は上手そうで、人望にもあつい感じがしたのだけれど……。


「これはこれはお初にお目にかかります。お嬢さん。私は、姫昌きしょうという者ですが、お嬢さんは太公望殿とは親しいのですかな?」


「え、い、いえ!あの、呂望さん?とは先ほど会ったばかりで……あ、私はハノメといいます……」


「おや、お嬢さんとは、初対面でしたか。……おや?ハノメさん、大丈夫ですかな?」

 

 朗らかな笑みを浮かべて話している姫昌さんだったが、じっと私の顔を見ていると心配そうな声色へと変わってしまった。


「え、大丈夫とは?」


「いえ、少々……変わった相をお持ちのようでいらっしゃる」


「相?あ、さきほど呂望さんにも言われたような……」


「ほぉ?初対面の女性を口説く方法としては如何なものかと思いますが……良ければお話ぐらいはお聞きしましょうか。ささ、こちらへどうぞ。……太公望殿?何を子どものように拗ねているのですかな?まったく」


「……き、貴殿が現れるからだろうが……」


 ?

 二人は一応、顔見知りのようだし、仲は……悪くは無いんだよね、きっと。それにしては呂望さん……えっと、太公望さんの様子が……。


「はいはい。それは失礼しました。さあ、お二人とも。こちらへ」


 姫昌と言うイケオジ様は柔和な笑みを浮かべつつゆっくりと王城へと歩いて行く。ついて行っても良いのだろうか……チラッと太公望さんの様子を見ると、じろっと鋭い視線を向けられるが一緒について来い、とばかりに先に歩いて行く。他に行くあても無い私はそんな二人を追って後をついて行くことになった。


 直接、城内に行くのかと思えばそんなことはなくて、横から通り抜けられる通用口のような所に姫昌さん、太公望さんも通って行くと私もそこへと足を運んで行った。脇には鎧?を纏った兵士らしき人物が佇んでいたのだけれど、何も言わずに立っていたみたい。門番、みたいな人なのだろうか。

 そのままスタスタと姫昌さんは、庭……だろうか。池のある、立派な日本庭園みたいな場所に行くと庭の中に備わっている小部屋へと入り込んでいく。もちろん太公望さんも。茶室の一つ、だろうか……入り口は低い位置に設置しているから、しゃがんで入らないと行けないような小部屋に入ると、そこには見事な掛け軸だったり、花。そしてお茶の用意がされていた。

 お茶……双子ちゃんたちと飲んだお茶を思い出してしまう。あのお茶はとてもイイ匂いがしたんだったっけ……。


 先に座り込んでお茶の用意をしている姫昌さんの近くに胡坐をかいている太公望さん。その二人から近くもなく、遠くもない場所。そもそもこの小部屋自体がそれほど広いって感じの部屋じゃなかったからそう遠くには行けなかったのだけれど、微妙な距離を置いて私も座った。


「先ほどはいきなりすみませんでしたね。何やらハノメさんには災難の相が出ておられる様子。私もこちらの太公望殿にはお世話になって、ここまで長生き出来ているというもの。良ければお嬢さんもその悩みを吐き出してみては如何ですかな?」


 イケオジ様こと、姫昌さんは言いながらお茶を淹れてくれた。ホカホカと温かい湯気が立ち上るお茶は……日本茶なのか、匂いだけで体に染み渡るかのような良い匂いが漂ってくる。もちろん太公望さんにもお茶を用意するが、太公望さんは胡坐をかき、部屋の壁に寄り掛かりながらジッと私に鋭い視線を向けっぱなしだ。


「……その女性に現れているのは、災難の相とは少し違うだろう。謂わば、災厄そのものの相だ」


「災厄?」


「太公望殿……」


 姫昌さんが嗜めるように声を掛けるものの太公望さんの言葉は続いていく。


「私はこれでも人の人生を左右するかのような占いをしてきた。犠牲をより少なく、そして少しでも安全に事が運べるようにと多くの人たちの先見をおこなってきた。が、その女性に見えるのは人間ならば通常有り得ないほどの災厄しか見られない。ゆえに事情を伺っていたのだが……邪魔が入ってしまった」


「ハノメさんは何処からいらしたのです?」


「……それが分かればここまで連れて来ていない」


 お茶を口にした太公望さんだったが、すぐにお茶を置くと腕組みをして瞼を伏せてしまった。


「……あの……お二人からすれば夢か、幻かと思われるのかもしれないのですが……」


 私は、思い切って今まであった自分のことをイチから説明していった。参拝に訪れたはずの神社がいきなり荒廃してしまった風景に代わってしまったこと。そこで、神様なる人たちと出会ったこと。不思議な双子ちゃんのこと。この世が荒廃しているのは悪霊や怨霊が蔓延っているということ。私にも不思議な力の素質はあるらしいのだがそれらしい気配は今のところ何も感じられないこと。こことは全く別の風景のような所があり、そこではいつでも昼間という時間を過ごすことができていること。見事な大木があり、枯れること無く、新たな花を咲かせては多くの花弁を散らし続けているということ。そして、私は穢れというものにあたってしまったことがあるらしいこと。そこから幻聴なようなものを聞き、体が自分のものではないように動いてしまって危うく大切な人を傷付けてしまうところだったこと。気が付いたら、双子ちゃんに道を開けてもらい、気が付いたら先ほどの……太公望さんと出会った大通りのような場所に座ってしまっていたこと。

 なぜ、話してしまったのか……。

 もしも、もしもこのお二人が私の想像するお二人ならば、きっとどうにかして助けてくれる。もしくは助言をしてくれるのではないか、と考えたからだ。

 あ、あっさりと名前を!!!呂望の方が、なんとなく可愛らしいかとも思っていたのですが、あっさりと……というか、イケオジ様に呼ばれた名前で覚えてしまっている様子。あれ、日本の話だったんじゃ?いえいえ、よくよく見てみてくださいまし!古代ファンタジー!つまり、あまり国とかは拘ってはいません。その時々に、この人かなー……っていう感じで歴史的にそこそこ有名な人を登場させていきます。三國志の人物もなかなかに心惹かれるところもあったのですが、そうすると人間同士の戦ばかりになってしまうのでは?と思ってしまって、古代ファンタジーに寄せるなら太公望さんたちの世界?時代?辺りにした方が良いか、と考えました。


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