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19 反旗、そして……新たな出会い

 私の耳に届いた幻聴。

 でも、あれは本当に幻聴だったのだろうか。

 もしかしたら、私の本心だとか、表には出せない感情とかが生み出してしまったもう一人の私の声だったんじゃ……。

「……ここ、ね……」


 私は屋敷の内部に詳しく無い。そのはずなのに、黒子さんたちの案内も無いまま、とある一室の前まで来てしまった。そして、知らず知らずのうちに、目の前に塞がっている襖を開けて中へと入ってしまった。って、ここって誰の部屋だっけ?わけも分からないままに足がこっちへこっちへ……って感じで向いちゃったんだよね。


『『何者!?……ハノメ様……?』』


「……あら。や~っぱり!」


 広い室内のさらに奥の方にいたのは、双子ちゃん。声も無く、襖が開けられずかずかと足を運んできた私を見て警戒心を露わにした様子だったのだけれど、私の姿を確認すると警戒は解かれた様子……だったのだが、何処か双子ちゃんの様子が……変?

 何故か信じられないものでも目にしているかのような、その双子ちゃんの目。


「……私を。この私を外界に出しなさい。ここにいるなんてまっぴらごめんなのよねぇ。ほら、あなたたちの力が無いと外には出られない……それは、相変わらず変わっていないのでしょう?だったら、すぐに道を開けなさ~い」


 言葉が、止まらない。あれ、今喋っているのって私だよね……?でも、知らず知らずのうちに言葉が出てきて、口が閉じられない。まるで体を乗っ取られてしまっているかのような……誰かに操られてしまっているかのようで……。


『『……それは、出来ません。あなた一人を外になんて……』』


 双子ちゃんは、ゆるく首を左右に動かしてみるものの、近くにあった文机を乱暴にも足で蹴り飛ばしてしまった。……え、待って……待ってよ、私……こんなことしたくない……っ!

 双子ちゃんからは小さな悲鳴が上がったものの、二人して寄り添う、その形は変わらなかった。片方が逃げ出したりとか、助けを求めるとか……そういうことはしない。二人が、手を取り合って同じような仕草をして、私を見上げている。


「あは!双子神がどんなに願ったとしても、この子は……神にはならないわよ~?なんでここに閉じ込めるのよ。もっと現実を見させてあげるべきよ~?だってこの子は人間なんだもの。人間の世界に、返しなさい!!!」


 双子ちゃんの片割れ……の一人の胸倉を掴んだ私は、苦しそうに顔を歪める子に、ただただ笑い声を上げるばかりだった。嘘だ……こんな、こんなこと……双子ちゃんを、その子を離して!やめて!


「このまま……コッチだけを苦しめ続けたらどうなるのかしらねぇ~?アンタたち、確かに見た目は可愛いけれど……タイプじゃないわ。憎らしいほどの美しさは何処へやったのよ、つまらな~い」


 胸倉を掴んでいた片割れをそのまま畳に突飛ばすと、冷たい眼で双子ちゃんを見下ろした。そんな私の眼に、畏怖されたのか、それともまともに動くこともできなくなってしまったのか……双子ちゃんはまともな言葉を発しないままに身を寄せ合っていたのだけれど……痺れを切らしたのか、静かに二人で深い深い呼吸をはじめていった。それは、眩い道をつくりだす合図。

 それに気が付いた私は、口に笑みを浮かべた。浮かべることしか、できなかった。そして足は、その場に現れた眩い道へと向かっていく。ま、って……わたし、私は……っ!


「……さようなら、双子神。今度会うときには……美しい姿を、見せてちょうだいね~?」


 あははは!と高笑いをしながら私は一人で眩い道を進んで行った。双子ちゃんは一体どんな場所に道を開けたんだろうか。もしも悪霊や怨霊ばかりの場所だったらどうするの!?私、戦う方法なんて知らないんだよ!?

 私が眩い道に消えていく間際に、双子ちゃんではない誰かの姿をうっすらと見えた気がしたけれど……おそらく双子ちゃんが呼んだ黒子さんたちなのだろう。でも、遠くで……すっごい遠くから『ハノメーっ!!』って呼ばれた気がしたんだけれどなあ……それも、きっと幻聴なのかな。


 眩しい道の先は……都?

 村とか、集落とかそういう小さな集まりって場所って感じじゃなかった。そこそこ建物もしっかりしているし、広い通りを歩いていけば、いろいろな店が開かれていて人々の生活は今まで見てきた何処よりも活発そうに見えた。

 ふと、体の力が無くなったように足元が覚束なくなると地面にへなへな~っと座り込んでしまった。あ、手……足……動く!自分の意思で動く!!何度か手を握ったり開いたりしながら確認するとさっきまで操られていたような感じは無くなってしまったようだった。ここは、一体どこなのだろう……。空は、相変わらず灰色が広がっていたけれど、そこそこに人たちは健康そうに暮らしているみたいだった。


「おや。そこの方。……大丈夫ですか?」


「え。は、はい!」


 突如、聞こえてきた声にハッとして顔を上げると、そこには……銀髪の美しい髪を三つ編みのように束ねて片側から垂らし、キリッとした銀色の眼がとても綺麗な男の人……えっと、年齢ははっきりとは分からないのだけれど、若そう……。他の人たちが着ているモノ……とは、ちょっと違っていて、何と言うか、中華風?一応パンツスタイルなのだけれど、裾の長い民族衣装みたいなものが重なっているのでちょっと変わった出で立ちだった。そんな彼からとても自然に手を差し出されてしまったので、私はその手を取ると座り込んでいた地面からようやく自分の足で立ち上がることができた。


「あ、ありがとうございます……」


「いえいえ。……ふむ。少々、お困りの様子ですか?」


「え、あの……分かるんでしょうか」


「私の特技の一つでもあるのですが、占いを少々。そしてあなたの顔には困っている相が見られましたのでね」


 占い?それって、カードとか……えーっと水晶玉とかを使ったりする占いなのかな。それとも『相』って言っていたから手相とか?そういうのを見る類の占いなんだろうか。……だいぶ、変わっている人なのかもしれない。


「……こ、困って……います。ここが何処かも分からないですし……」


「おや。知らず知らずのうちにここに足が?それは興味深い!……あ、いえいえ……ここは、何処……とどこから説明すべきか……今の世の事情はお分かりですか?」


「あ、悪霊とか怨霊が蔓延っているとか……」


「ふむ。それをご存知か……でしたら、何故なにゆえにここにきたるまでふらふらとしていたのか、何やら謎めいた女性の様子。よろしい、落ち着かれるまで私がお世話になっている所に行ってみましょうか」


「あ、あの……私、ハノメといいます。……あなたは……」


「私ですか?ふむ……。でしたら、呂望りょぼう、とお呼びくださいませ。私も、なかなかにいろいろな呼び方をされておりますが、それが良い」


 突如、双子ちゃんが開いてくれた眩い道を進んだ先は、そこそこに賑わいをみせている所だった。そして、ちょっと変わった恰好をしている男性……呂望さん。あれ、この名前何処かで聞いたことがある、ような……?気のせい、かな。

 ここが何処かも分からないままに、そして呂望さんがどういった人物かも分からないままに……でも、他に頼るあてがまったく無かったので、『こちらへ……』と促されるままに呂望さんの後を付いていった。広い通りには、左右それぞれにいろいろな店が連なっていて、いろいろな買い物をしている人たちで賑わっている場所だった。

 ……でも、双子ちゃんには悪いことをしてしまった……例え、私の意思では無かったとしても、あんな乱暴なことまでしてしまったなんて……私、どうしちゃったんだろう……とうとう、神の力に目覚めないと考えてばかりいて気でもおかしくしてしまったんだろうか……。

 ちょっくら新キャラクターの登場だぜぃ!(誰)知る人は知る、呂望という名。『あの人』でございます。いろいろな本だったり、いろいろな呼ばれ方もされているらしのですが、今作では『呂望』の名を使わせていただきました。取り敢えず、19話では呂望と名乗っております。


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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