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16 別れる意見

 湯浴みしているところをカグツチさんに覗かれるというハプニングはあったものの、湯浴みの途中で私がぶっ倒れているのでは?と心配してくれていたようだ。

 それでも、一声ぐらいは掛けてくれても良かったんだけれどね……。

 お膳に乗せられていた、食べきることができなかった食事には申し訳なかったものの双子ちゃんからすると……。


『『この料理を全て平らげる人の方が珍しいぐらいですよ。神様という存在は、一口二口ぐらいで何故かお腹がいっぱいになってしまうようです。そう考えると、やはりハノメ様も神様としての素質がある、と考えることができますね』』


 でも、食べられないのに、ここまで豪勢に準備してもらうのは申し訳ないよね……だったら、もうちょっと少なめの料理を並べてもらうっていうので良いんじゃないだろうか。でも、いろいろな小鉢に乗せられた料理を目で楽しむことも大切なことですから、と双子ちゃんは譲らないらしい。まさかとは思うけれど、この料理の数々……双子ちゃんが用意した?……さすがに、そんなことは無いかな。黒子さんたちはどうやら何人もいるらしいから、屋敷の調理場のような所で料理の支度をしてくれているらしい。いつ、神様たちが食事をしたいと言い出したとしてもすぐに支度をして運ぶことができるように、黒子さんたちはなかなか休憩というものが無いのかもしれない。庭園では、お茶とお茶菓子を用意して運んできてくれるもんね。……黒子さんたちっていつ休みをとっているんだろう?


「……で、ハノメに付いていた穢れのことは?対処の仕様っていうのはあるのかよ?」


 胡坐に肘をつきながら、ぶすっとした様子で双子ちゃんを見つめるカグツチさん。さきほどまではヒルコさんと言い争っていたと思っていたのだけれど、ヒルコさんとの言い争いはどうやらおさまってしまったらしい。


『『我々も、原因が何なのかということが分からなければなんとも……もっと詳しいことが何か分かれば対処も分かるのですが……』』


 どうやら、今のところは気を付けようと思っていても、いつどこで穢れをもらってくるか分からないので、防ごうとしてもそれが難しいらしい。穢れの発生源とも言うべきものだろうか……やっぱり悪霊とか、怨霊になるのかな?


「あの、力が使えない私が言うのも変なのかもしれませんが。やっぱり悪霊や怨霊を退治していけば良いんじゃないでしょうか?」


「……お前は?後ろで見ているだけなのかよ?」


「で、でも!一定の悪霊とか怨霊の仕業だと分かれば、穢れの原因となる怨霊たちが何なのかってことが分かるのではないでしょうか?」


「それは一つの案ですね。確かにそうやって地道に悪霊退治をし続けていけば、ハノメさんに穢れをもたらした存在が何なのか分かるかもしれません。……でも、それが分からないうちは、またハノメさんが危険な状態に陥ってしまうかもしれませんよ?」


 あー、そうだった。また、あのワケの分からない、体がくがく、汗だらだら、頭ガンガン状態になるのはちょっと嫌だなあ……。でも、原因の元を調べるためだっていうなら多少は我慢していくのも必要なことなのかも?


「な、なるべく気を付けます……が、退治そのものは皆さんに手伝ってもらうことになってしまって申し訳ないのですが……」


「別に悪霊退治ぐらいは何でも無えよ。ただ、お前が……」


「ははーん!カグツチはハノメのことが心配だからなあ!うんうん、そりゃあこんな可愛い子が穢れで弱ってたら焦るよなあ!うんうん!」


 ヒルコさんは明らかにカグツチさんをからかっているが、思っていた通り、カグツチさんはヒルコさんのことをじろりと睨みつけていた。あぁ、言わんこっちゃない……。


「で、でも……ぼ、僕も心配です……もしも、ハノメさんに悪質な穢れが集まるようなことにでもなれば……」


「?急いで、ここの庭園に戻れば大丈夫なのではないのですか?」


 ククノチさんがおどおどしながらも、やけに不安そうに話しているから先の言葉を聞いてみた。が、少しだけ間を置かれて言うべきか、言わないでおくべきか、と迷っているようだった。でも、そこは教えてもらえると嬉しい。どんなことになるのか、そして庭園に戻っても対処ができなくなってしまうようなことにでもなる危険性みたいなものにでもなるのか……知っておきたい。


『『……あまり、穢れに犯されてしまうと庭園にあるものだけでは心身を癒すことが難しくなってしまいます。そうなったとき、ちょっと面倒なことになってしまうのですが……他の名のある能力の高い神を庭園に呼び、みそぎをおこなう必要があります』』


「禊……ですか」


「私も直接、禊を目にしたことは無いのですが、どのようなことを?」


 このなかでは物知りの方に属されるであろうドグジンさんさえ禊のことはよく知らないらしい。っていうことは、かなり禊っていうのは危険度が増したときにおこなっているというものなのだろうか。


『『位の高い、別の地域におられる神たちをお呼びし、禊をするのは……とても心身に苦痛を与えるものだと言われています。我々も直接目にしたことは無いのですが、それはとても神たちの膨大な力を持っておこなわれるものになるので神たちは穢れを心身にためこまないよう気を付けているのです』』


 ……い、痛いっていうのは、嫌かも……。とにかく、ちょっとでも体に異変が出たら、すぐにでもこの庭園に戻ってくれば良いってことなのかな。


『『ハノメ様は、みなさまよりもまだ力にお目覚めになられていないので穢れにあてられやすく、ほんの些細なことでも穢れに犯されてしまう危険性があります。なので、外界に行くときには今まで以上に気を付けてください』』


 そっか。たまたま散歩に行こうってさっきはなってしまったけれど、その散歩に行った矢先で、私が大変なことになっちゃったんだもんね。……私の力、早く目覚めてくれれば良いのに……なんで、まだ目覚めてくれないんだろう?そうすれば、みんなに迷惑をかけることももっと少なくできると思うのになあ……。


「……分かった分かった。取り敢えず、退治にはハノメを連れて行かなきゃ良いんだろ?」


「そう、ですね。出会った悪霊や怨霊がハノメさんに何か仕出かすことがないように同行からは一時的に外してしまった方が良いでしょう」


 ……ちょっと寂しい。でも、現実的なことを考えれば私は外界にはしばらく出ない。それが良いんだろうなあ……。


「ええ!?ハノメを連れて行かないのかよ!?だって、もしかしたら外界で戦闘になったときに力が目覚める可能性だってあるんだろ?俺は、別に同行を外さなくても良いと思うぜ?」


 ヒルコさんは、そのように言ってくれるけれど、もしも何かあったら……また、双子ちゃんに神様たちが怒られてしまうだろう。そんなの、申し訳ないじゃん……。


「え、えっと……僕も、どちらかと言えば……ハノメさんには、外界のいろいろな場所を見てもらった方が……良いかと、考えています」


『『おや、ヒルコ様とククノチ様は同行に反対なされないのですか?』』


「だってさー……双子とここで留守なんて、寂しくね?外界の世界だっていろいろな町があるんだし。もちろん廃れている場所が多いけどさー……でも、なかにはかろうじて普通に暮らしている町もあったりするんだぜ?だから、そういう場所に行くときには一緒に行っても良いんじゃねえか?」


 何度か行ったけれど、こんな世の中でも人が活発に生活できているという町もあるんだろうか。ちょっと信じられないのだけれど、でも、そういう町なら……悪霊とか怨霊に襲われるっていう危険も少なくなる、かな?


『『……まあ、皆さんがそう仰るのなら……時と場所によってはハノメさんの同行を許可してもよろしいのですが……でも、くれぐれもお気を付けてください』』


 私に力が無いから。だから、双子ちゃんも何度も注意をするんだろう。誰だって外界に出れば気を緩めるわけじゃないと思うけれど穢れにはあてられないように気を付けなければならないなあ……。

 おやおや。神によっては意見が真っ二つに分かれてしまった様子……。荒れている世界でも人がまともに生活できている場所……行ってみたいですね。どんな生活ができているのか、気になります!!


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