15 精進料理風に満足満足!
神様だから覗きは許される!?
そんなわけないでしょう!!
しんっっっじられない!!
湯浴みしていた姿をカグツチさんに見られてしまった私は、しばらくの間、カグツチさんのことを『変態』と呼んでいた。まだ、むしゃくしゃしていたし、双子ちゃんは『『賑やかで楽しいですね』』と笑っていたのだけれど、そんな笑っている場合じゃないですってば!だって、こっちは裸を見られたんですよ!?ほんっと、カグツチさんって信じられない!あ、間違った。カグツチ変態さんは信じられないんだから!
それぞれ、個別でお膳に乗った食事が並んでいた。空いている席に座ろうとすると隣に座っていたのがカグツチ変態さんだったものだから、『ふんっ!』と顔を背けつつお食事が並んでいる手前の座布団に腰を下ろした。
「……なんで、そんなに怒ってんだよ。別に、何もしてねえだろ!?」
「……カグツチ変態さんは、ばっちり私の裸を見たんじゃないんですか!?」
私がそう言うと、ククノチさん辺りだろうか、『ごふっ』っと咽ている声が聞こえてきたのだけれど、ヒルコさんは『ニヤニヤ』と笑って『カグツチもやるなぁ~』とからかっている。ドグジンさんは……と思い視線を向けるものの優雅にお茶を口にしているだけで、私とカグツチさんのやり取りを微笑ましく思っているのかもしれない。ちょ、全然微笑ましくなんかありませんから!
「だいたい、お前の貧相な体なんか見たってどうもならねえっつーの!」
「なぁ!?貧相ってなんですか!貧相って!私はこれから成長していくんですよ!?それ、私ぐらいの年頃の女の子に向かって凄い失礼じゃないですか!!」
つい先ほどまで、私は、もしかしたら瀕死とか、体調がめちゃくちゃ悪い状態にあったのかもしれないけれど、池の水に浸り、そして良い匂いが漂う湯も浴びてきたことによってすっかり健康マックス状態を取り戻すことができた。でも、だからって覗いて良いってことにはならないと思う!それに、今、貧相って言ったし!……た、確かに胸は……そう大きい方ってわけじゃないと思うけれど、私だってまだ16歳なのよ!?これからじゅうぶん育っていくはずなんだから!
『『ふふっ、カグツチ様とハノメ様は良いコンビになりそうですね。今代の神たちは大人しく、控えめな方々ばかりかと思っていたのですが、賑やかさの中心にお二人がいてもらえるとこちらまで楽しくなってきますよ』』
それは……褒められているのかな。双子ちゃんは食事をするときも、同じモノから口にし、そして喋るときにも二人同じタイミングで話し、笑顔も向けてくれるけれど……。
やっぱり無理!
「だいたい湯浴みをしている最中なのに、戸を開けて中に入ってくるって……こちらの……えっと、神様たちの間では当たり前のことなんでしょうか?」
『『いえいえ。全然。カグツチ様が異様なだけではありませんか?』』
ほーら!双子ちゃんもそう言っているし!やっぱりカグツチ変態さんがおかしいのよ!カグツチ変態さんは胡坐をかきながら目の前にある食事にほんの数回ほどだけ口を付けつつ、『いつまでもうるせぇなあ……』とかってぶつぶつ文句を言っているし。そりゃあ文句の一つや二つぐらい言いたくなるのは当たり前でしょう!?ちょっとは、っていうか、かなり反省してもらいたい!
「……カグツチさん。一応、ハノメさんは女性なのですから、これからは気を付けてくださいね?ハノメさんも、今回はカグツチさんにも非があるかとは思いますが、もしかしたら湯浴みをしているハノメさんが倒れているんじゃないかと心配して戸を開けて様子を見てみたのではありませんか?」
え。
そう、なのかな……。確か、私がぐったりしているときも、池の水まで連れてきてくれたのはカグツチさんだったんだっけ。……え、もしかして。めちゃくちゃ心配していたのかな。
「……あの……心配、していたんですか?」
「あ?……心配したら悪いのかよ」
「……あー……えっと、ありがとうございます……でも、せめて一声ぐらいは掛けて欲しかったです!……もう、変態とは言わないので……これからは気を付けてください……」
「……あれ、つまんねぇの。もう落ち着いたのか、カグツチとハノメ。もう少し揉めると思ったんだけれどなぁ~」
「ヒルコさん?それ、どういう意味ですか。私とカグツチさんが喧嘩していても面白いものじゃないでしょう?」
どうやら口喧嘩のやり取りもいったん収束することができたらしいが、そんな様子を見ていて少しばかり残念そうにしているのがヒルコさんだった。
「だってさー、カグツチがあんな剣幕になってまで言い争う姿ってあんま見たこと無かったし?面白いものが見れておかしかったんだぜ?」
「……と、言うと……カグツチさんって静かな人、だったりします?」
「えぇ、それはそれは。言い争いをするような相手も今までいませんでしたからね。一人で、ぼーっと過ごしたり、寝て過ごすばかりが彼の時間の過ごし方のようなものだったので、今回のことは驚きつつも良いモノが見られたので私も安心しましたよ」
ドグジンさんも、新たなカグツチさんも様子……というより、一人静かに過ごしてばかりいるカグツチさんを何処か心配していたのか、私があらわれたことによって一緒に遊ぶ対象ができたかのように生き生きとしているカグツチさんの姿を見て喜んでいるようにも見られた。
「意外ですね……」
小さく『いただきます……』と挨拶しながら、小鉢料理をそれぞれ口にしつつ、ぼそっとカグツチさんのイメージに意外だと呟くものの見た目は精進料理風なのに、それぞれ素材本来の味が感じられる品々に感動していた。
「!美味しい……」
『『ハノメ様にも気に言っていただけたようで良かったです。胃にも、もちろん精神にも癒し効果があるとされているので……今日、あった事はツラいでしょうが、どうか安心してお過ごしください』』
双子ちゃんの言葉に、こくこくと頷きつつ、決して量は多くない小鉢料理なのに、何故だろう……一口二口食べるだけで満足してしまうような食事に不思議がりながら時折お茶を口にしていた。でも、隣の……カグツチさんのお膳を見ると私以上にあまり料理が減っていない様子なのでちょっと心配してしまう。
「カグツチさん?料理、召し上がらないんですか?」
「……べ、つに……」
気まずそうに、お茶ばかりを口にしているカグツチさんに首を傾げているとドグジンさんと双子ちゃんは理由を分かっているらしく可笑しそうにクスクスと笑っていた。
『『カグツチ様は、ここの料理は苦手なようですよ。お口に合わないのか、味がお気に召さないのか……ふふっ、それでお茶やお茶菓子を他の誰よりも召し上がっているのかもしれませんね』』
そう言われてみるとー……大木の元では、黒子さんたちが運んできてくれるお茶やお茶菓子をバクバクと誰よりも食べていたのはカグツチさんだったような気がする。まさか、この料理が苦手?いや、でも普通に美味しいと思うんだけれどなあ……。
「はは!カグツチは変なところで子どもみたいだからなあ!好き嫌いが激しいんだと」
「ヒルコ!てめぇ!」
あー……好き嫌い、ね。なるほど。そう言われるとしっくりくる気がした。お菓子はめちゃくちゃ食べるけれど、いざ食事を前に出されると苦手なものが多いとか、あまり好みの味ではなかったりすると途端に箸も付けなくなっちゃう……なーんだ、子どもかぁ!納得納得!!
今度はヒルコさんとカグツチさんによる言い争いがはじまってしまったけれど、私はそれを微笑ましく思いながらお腹に入るだけの量を食べていった。(量とかが多いんじゃなくて……なんだろう、頭の方が先に満腹だよーっ!って言われているみたいで、全てを綺麗に平らげることはできなかった)。
こういう世界の料理だと……あまり肉肉しい料理よりも、精進料理風の方が合っているかな?と考えています。それぞれの食材の良さがきちんと出される調理とかもされているんでしょうねぇ……。これからどうなるか……きちんと世が平穏になるのか怪しいのですが……。良ければ興味を持っていただけると嬉しいです!
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