14 湯浴み、ドッキリドキドキ
私が原因不明の体調不良になってしまったのは、『穢れ』というものが関係しているらしい。
でも、その穢れがいつ私に付いたものなのか、どういう経路で付いたものなのかが分からず双子ちゃんは困っているようだ。ワケの分からないもので体調不良になったら他の神様たちも怖いもんね……。
『『……女性……いや、でも、先代がいなくなったのはかなり昔のことですし……』』
「おや。双子さんたちも先代が絡んでいるとお思いですか?実は、私もそうなのではないかと考えていたところなのですよ」
先代?確か、先代って孤独で、人間に恋をしちゃったとか、支配する側にまわってしまったとかって言っていた水の神様のことだろうか。私が下手に何か意見を出すよりも、ここは徹底的に聞き役にまわった方が良いのかもしれない。双子ちゃんとドグジンさんの話し合いがはじまるとカグツチさんも気になることがあったらしく、双子ちゃんとドグジンさんとのやり取りを聞き入っているようだ。
『『だいたい、多くの代を遡っていっても、女性が神になるときには『水』属性の神になることが多いとされています。水は、繊細、命の源……とも言われていますから女性が神になるのは決して変なことではありません。今代も、ハノメ様が水の神としてここにいるわけですからね。……ただ、集落に出掛けた先で唯一穢れにあてられてしまったのがハノメ様だけ、という所が気になります』』
「ハノメさんに、というよりも神そのもの自体に憎しみもしくは考えているところがあるのかもしれません」
「あれ。でも、先代の方は力を失っているはずでは……?」
『『……そこも疑問ではあります。厄介な怨霊にでもたぶらかされたのか、もしくは完全に神の力を失っていなかったのか……。でも、ここにハノメ様が来られている以上、神としての力はごく僅かしか持っていないものと考えられるのですが……』』
う~ん?なんだか、どこまでが神とされるのか、それとも怨霊とされるのか分からなくなってきてしまった。えーっと……つまり、私は、あの集落でたまたま出会うことになってしまった女性が怨霊、もしくは神に近い力を持っていたけれど、それが悪いモノで、私に『穢れ』という形で残されてしまったっていうこと?
「はは、おい、このバカ。お前はまだまだ分からねえことだらけなんだから、コイツらの話に耳を傾けようとしたって無駄だぞ?頭でも痛くなったらどーする?ほら、お前はさっき池に沈んだんだろ?とっとと湯浴みでもしてこいよ」
カグツチさんから、なんと気の利いた言葉を向けられてしまったが、この巫女のような服に着替えたばかりだというのに、湯浴み……えっと、つまりお風呂みたいなものだよね?その湯浴みなんてしてきても良いのだろうか?一応、自分のことで話し合っているんだし、内容が難しくて話にはなかなか加われないけれど聞いておいた方が良いんじゃないだろうか。
『『あ、えぇ。そうですね。ハノメ様。お身体は冷えておりませんか?湯の用意はいつでも出来ておりますので、一度体を温めてきては如何です?』』
双子ちゃんは、二人揃って同じタイミングで私に向かって微笑みかけてくれると可愛らしく首を傾げていた。か、可愛い……よしよし、してあげたい……。
「えっと……じゃあ、失礼します……」
屋敷に行けば、分かるだろうか……と歩いて行けば何処からともなくやって来てくれた黒子さんたち。黒子さんたちは特に何か発してくれるというわけではないのだけれど私がしたいことを見抜いているのか、こちらへどうぞ、と言わんばかりに手で湯浴みが出来る場所へと促してくれる。
そこには、木製で出来た浴槽?みたいなものもあったのだけれど、さすがに全身を湯に浸からせるのは気が引けてしまって、巫女装束や下着やらを脱ぐと桶にお湯を少しずつ組んで、ゆっくりと体、髪にもお湯を掛けていった。このお湯も、どこか不思議なイイ匂いがしているので、あの大木の花弁が使われているのかなと思う。香水ほどに強すぎる匂いってわけではないけれど、かすかに匂うイイ香り。きっと湯浴み直後だと全身からはイイ匂いに包まれてイイ気分に浸ることができるだろう。
「……でも、あの人が……もしかしたら、先代だったってこと?……でも、たまたま立ち寄った集落で出会うなんて……そんな偶然ってあるのかな……」
もしも先代だったのなら、力の使い方を聞いてみたかったし(たぶん、そういうことって聞いても教えてもらえないだろうけれど)どうして、神様をやめてしまったんだろうか?と聞いてみたい気持ちもあった。だって、この庭園は良い場所だ。同じ立場の神様たちもいるから決して孤独に苛まれるってことは無いだろうし、双子ちゃんも優しく接してくれただろうに……神様に嫌気が差した?それとも人間が嫌いになった?世の中をめちゃくちゃにしてみたくなっちゃった?……うーん、人の気持ちばかりは聞いてみないと分からない。でも、ワケの分からない状態に体が陥ってしまうっていうのは勘弁かな……本当に、自分の体が自分のモノでなくなっちゃうような感じがして、とても怖かった。だから二度とは体験したくはないけれど……。
「おい。いつまでやってる。そろそろ俺たちも食事にするぞ」
「……は?」
戸は、きちんと閉めていたはず。でも、この声は戸越しに聞こえてきたものじゃなくて、すぐ後ろから聞こえてきたもの。つまり……こっちは、裸。
「い、いやぁぁぁぁぁ!!!!」
「は、うお!?ちょ、なんだぁ!?」
「出てって!バカ!変態!!」
「お、おい!ばっか、桶を投げてくんじゃねえよ!!」
こっちは隠すモノが無い!服だって、戸のそばで脱いできてしまったものだから何も無いのだ!それにも関わらず、平然と戸を開けてこっちに来るってどういうこと!?しんっっじられないんだけれど!!!とにかく、近くにあるもの、手にできるものを持っては後ろに立っているカグツチさんに向けて放り投げていった。
「わ、わかった、出て行くから!暴れんじゃねえっつの!!」
慌ててピシャリと戸が閉められた音がしたところで、やっと私は止まることができた。周りには、桶があちこちに散らばり、元に戻さなければならないじゃない!!まったく、カグツチさんってもしかしたら良い人なのかもって思っていたけれどやっぱり常識が無いんだわ!
「……っ、み、見られた……?まったく、とんでもない変態じゃない!!」
これからはカグツチさんのことは『変態』と呼ぶことにしよう。うん、それが良いわね!急ぎ、体の水気、髪の毛の水気を拭き取ると置いてあった下着と巫女装束を着込んでいった。池の水に入ったときは、さっぱりと体に付いた何かが取られていくって感じがしたのだけれど、ゆっくりと何度も湯浴みをするとさっぱり!っていく感じで気持ちが良くなった。……のに!!
私の着替えが終わることを待っていたのか、隅の方で待機していた黒子さんたちはまた何も言わずに手で、こちらへどうぞ、と促してくれる。……黒子さんたちは顔も見ることができないけれど、口も利いてはいけないとかってルールでもあるんだろうか?ちょっと寂しいなあ……普通にお喋りとか出来れば良いのにね……。
黒子さんに案内された先では、それぞれのお膳に乗せられた食事が。そして、神様たちと双子ちゃんたちも勢ぞろいしていた。
『『ふふっ、賑やかなお声がこちらまで聞こえてきましたよ?カグツチさんと仲良しになられたようで、安心しました』』
「な、仲良し!?ち、違いますよ!カグツチさんは、覗いたんですよ!?堂々と!彼は、変態です!!」
「誰が変態だ、このアホ!」
『『うふふ!こんなに賑やかなお食事は久しぶりですね。みなさん、楽しそうで何よりです』』
いや、双子ちゃん!カグツチさんは覗いた!私の裸を堂々を見たんですよ!?信じられます!?人の心が無いんですよ!あ、神様だっけ……神様の心が欠けているんですよ、きっと!!
たまには、ちょいラブコメ的なシーンも取り入れて楽しく過ごすのも良いモンだ!
……え、カグツチは本当に覗いたのか?真相は……彼の心の中に……。
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