出会い1-5
ようやくちょっとだけ、異世界の匂いがしてくる
かな?
出会い編もう少し続きます。
では、どうぞ~
==============================
二〇一三年の春
勇二が高原に佇み、腕を組んで、前年に彼女小野田瑞樹との
馴れ初めを思い出し呟いていた。
あんときゃ~、ダブルで食われたよな~。いや?トリプルか?
(寿司とお金と童〇と、演歌のタイトルにもなりゃしないか)
まして、あの後、給料十日前の出費が三万円を超えることが、
残りの日々にどれだけの影を落としたことだろうか(きつかったな)
などと呟き、一年後の二〇一三年春。
一話冒頭のシーンに戻る。
「結局、あの日が付き合いだした日だったんだ~。
二〇一二年四月だからきれいに一年か。はえ~よなぁ~。」
と呟く。
付き合って一年だが、入社した年からなんだかんだと会社に
おける指導と共に、内面的なあれな部分や、こんな性格も全てに
おいて今更なぐらい、わかり合っているのいるので、仕事の呼吸・
タイミングなどがまぁ、よく分かること、分かること。
付き合いだしたのだって二週間ぐらいにはバレバレで、
半年たったら夫婦扱いだし。
と言う訳で、ならば本当の夫婦にと思い、プロポーズするなら、
やはり、俺の地元がどんなに素敵な場所で、俺の大好きな瑞樹と、
ここで一緒に過ごしてほしいと感じてくれるかな、などと
このひと月、頭の中がグルグルと駆け回り、気持ちだけが
くったくたになったのが良かったみたい。
気持ちリセッ~トな感じで、りきみ無く今日を迎えている。
良く見りゃポッケに物を入れてる段階で、目敏い系の女性は
「何を隠しているぅ」とすでに、触手が動いているはずだ。
分かってないのは勇二本人だけで、小さなケースを忍ばせて、
高原のシートに寝っ転がっていた。
ケースを壊さぬように、気付かれないようにと。
道路をはるか背にし、林のほうを見ていた俺は、前方の空気が
歪む?いや、揺らぐように見えた。
次の瞬間、突風が二人の視界を遮る。
俺と彼女は、過ぎ去った突風から視線を元の前方へと移した。
ユラユラと、馬だろうか。こちらに向かって歩みを進める一頭の
影絵のような、黒く見える馬がいた。
距離にして三~四〇〇mぐらいだろうか。
場所が場所(牧草地)なだけにどこからか迷い込んだのかな、位に
考えていた。
しかし、その距離が一〇〇mを切る頃になると、馬体から何本か
木の枝が生えている?いやいや、馬体から生える訳ねぇし、と考え
ていると、距離が五〇mを切った。
その距離になってようやく馬体に人がうつぶせになっているのが
確認できた。
確認できたのはいいが、正直どうしたらいいか、どうするべきか
と考え、視線を彼女に向けると視線がぶつかった。
二人は駆け出し、俺は彼女に手綱を取ることを指示し、ついでに
馬が動いて、間違っても、俺が馬の後ろに回るような体勢に
ならないように、首筋を撫でて落ち着かせることに集中してくれ
と頼んでから、馬体に近寄った。
馬体には矢が三本刺さり、馬上の騎士?にも左わき腹と、
左太ももに一本ずつ刺さっていた。
降ろす為に、騎士の体に触れてみる。
反応はない。
(死んでる?気絶?どのみち降ろさなきゃないから、どれ。)
矢の刺さってる場所の出血状態を見ると、馬体も騎士も、
体を傷つけている割には、どちらも出血がたいして見られない。
ん?これなんかの撮影(特殊メイク)か?と、周囲を見回して
みる。
しかし、撮影ならば、撮影対象物と近距離にいれば、
当然フレームインする。
すると部外者である俺たちが映れば、このシーンはボツになる。
さすれば、現場を仕切る助監督か誰かが、なにかしらの
リアクションを取るだろうが、一切ない。
はて?げせぬ。
やはり、現実に起きていることなんだなと感じる。
ならば話は簡単だ。
とりあえず騎士を降ろす。止血作業をする。一一九番する。
そ、簡単であるが、言うは易し、行うは難しだ。
まず、騎士のオッサンを降ろそうと思ったら、ことのほか
重かった。
そりゃそうか。成人男性七〇kgに金属鎧(30kg位ありそう
なのを考慮しておらず)の重量で、潰れそうになっていた。
思わず「みっ!みずぎ~~だめ、だずげでぇぐれ、潰されるぅ~」
とは情けない。しかし、けが人を地面に叩き落すわけにもいかない
から俺の判断は、決して間違ってはいないはずだ。うん。
笑わば笑えだ。
「安全第一」が俺のモットーなのだ。
次に止血だが、俺は震災以来、トランクには、水二L×十二本、
応急処置セット×二セット、毛布五枚、非常携行食三人×十二食
読書セット、ラジオ&ハンディライトとその電池、二回交換分
粉ミルク(小)野外炊飯機器セット(固形燃料十二炊飯可能量、
インスタントコーヒー一瓶、調味料一〇種、テント三人用、
野外チェアー五脚、清潔な未使用タオル三十枚などだ。
このなかのタオルを使うが、よく時代劇のなかで、矢を刺され
無理矢理引っこ抜く場面を見た事はないだろうか。
話しに聞けば、あの行為はかなり危険かつ傷の治りに悪影響
らしい。
なぜなら、鏃の返しにより内側の組織を抉り出すようなもので、
傷口を広げ、出血を強いるだけの行為らしいが、その鏃に毒性の
薬品が・・・であれば話は別だと思うが。
いずれ現在、矢が刺さり何分経つかは知らないが、呼吸が安定し
出血が多量でない時点で、馬も同様に、無駄にいじり、
事態を悪化させるべきではないとの判断をし、救急車をこのまま
待てばいいと決断した。
決断したのはいい。電話を掛けようとしたこともいい。
スマホで、一一九番に発信した。
「はい一一九番、事故ですか、病気ですか」的なアナウンスを
期待していた、が「電源が入っていないか、地下に・・」
ノ~、俺の聞きたい言葉じゃないぞっと、赤い受話器マークを押す。
スマホの表示を見ると、圏外を示す。
俺がそんなことをしてる間に彼女が、タオルで血止め的処置をし
騎士の汚れた顔を拭いていたら、気が付いたようだ。
俺は、「おい、言葉解るかい」と話しかけると、男が首を少し
もたげ、左右を見渡し、危険な状況ではないと判断すると、
大きくため息をついた。
騎士は、意識を取り戻した後の、俺の問いかけに対し、
二言三言返してきたが、何語か分からない。
これだけの情報化時代だ。意味がわからず、発音ができなくても
イントネーションや語感で、余程の未開地の言語でなければ耳に
したことがあってもいいだろうが、全くわからない。
意味は分からないが、イントネーション的にギリシャ?いや、
もう少し古い語感がするなぁと感じた。
とりあえず言語による意思疎通ができないことが確定したので
次はジェスチャーゲームの始まりだ。
発見した段階で、彼の頭部の兜?面?は脱げており、
頭頂から首、いや肩まで覆う布のマスク(顔面は出ているタイプ)
のため、髪の色や顔立ちはよくわかる。
(ちぃ、外人さんのイケメンか、いまなら殺れるか)
チラッと小野田さんのほうを見ると「悪い顔してるよ」と苦笑いを
され言われたが、俺は「何のことかわからないなぁ~」ととぼける。
ばれてた。(げせぬ)
騎士のオッサンは、オッサンと言う年齢の顔をしてるように見える。
三十五歳ぐらいで、髪はブラウン、目の色はグレーぽい色で
身長は百七十二か三cm、俺よか、ちょっと低いかな?
イケメンに無精ひげってなんかカッコいい。
(やっぱり殺るか)
まぁ、冗談はさておき、彼も先ほど話しかけられたことで、
互いに言語が通じないことを理解したためか大きくため息をついた
安心したせいか彼はジェスチャーでコップを握り口に持っていく
仕草をすることで喉の渇きを訴えた。
暖かい紅茶を俺の黒猫マーク入りカップに移し手渡す。
彼は、手渡されたカップの中身の匂いを嗅ぎ、害がなさそうな
確認をし一口飲む。
紅茶と認識したのだろう。二口三口を啜った。
すると、今までの緊張感が霧散していくのが分かるほど笑顔に
なる。
飲み終わりカップを不思議そうに目線まで上げ見つめている。
俺の大好きな黒猫ちゃんのマークが気に入ったのかな、などとは
思わない。
おそらくカップの素材に疑問を持っているのだろう。
とりあえず人心地付いたのでカップを地面に置き、自分の鎧を
脱ぎだした。
痛がってはいたが、座りながら自ら甲冑を外すと気が付いた。
自分に矢が刺さっていることを。
その際、自分でその矢を抜こうと思ったのであろう。
矢に手をかけようとしたので、その手を俺は右手で止めた。
彼は俺に目線を移したとき、俺は首を左右に振り、左手の掌を
相手にかざし、いわゆるストップのジェスチャーをした。
彼もストップのジェスチャーが(やめておけ)と理解したのだろう。
その後、矢を上手くかわし、下着姿に近い恰好になった。
不意に一瞬、震えるような仕草が見えた。
ああ、寒いんだなと思い、車から毛布を取り手渡した。
騎士のオッサンが「#$%&&$%&#」と言ったが、何となく
「ありがとう」的な感謝の言葉だと思い、右手を胸のあたりに上げ、
握りこぶしにして、親指を立て「いいってことよ」的な意味で返した。
毛布にくるまって寝っ転がっているオッサンが、立って彼女と
このあと、どうするか話し合っている俺に、声をかけてきた。
オッサンは、どうせ言葉は通じないが間が取れなかったのか、
話したかったのかは分からないが「%&$#&%、%$」と
話しかけてきた。全く聞いたことがない言語なのに、俺は、何となく
理解できた。
きっと「俺の馬、どこ?」と。
彼の背後に当たる方向を指さし、彼が振り向く。
二〇〇m向こうで草を食んでいる馬を確認し、安心したのかニコリと
微笑み、目を瞑った。
さて、次はこちらの番である。
働くの嫌いだったが貧乏に負けてバイトした。
なんだろこの負けた感。でも、少しお金持ち。
うれしい。




