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金目の召喚術師 ~猫狂いは二塔に挑む~  作者: 鼻血魔人
召喚術師は挑戦者へと至る
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「召喚術師は穿つ」

遅くなりました!残すところこの章もこれを入れて後2話!お楽しみください!

 「アルマーオ、あとは君がやりなさい」


 自分の体を息子に預け、自身と息子の未来も同時に託す。そのまま意識を手放してしまったのは、限界を超えて自身に強化を行使した結果である。抱きとめた息子は、一瞬動揺したものの視線に力を宿し、我獣を睨みつける。


 「…えぇ、と……やるしか、ないか」


 しかし、自身の体は満身創痍だ。どうにか強化を用いて、思考は鮮明に行えるほどまでに回復したが、足を使った立ち回りは出来そうにない。左腕は先ほどの激突で折れたのか、全く動きそうにない。シーガを練ることは問題なくできそうだが、それだけだ。


 「いや、足が使えても意味は無いか。さっきもそれで全く対応できなかったんだし」


 現在の状況を分析しつつ、必勝の策を探る。1つの失敗も許されない極限状況の中で、アルマーオの頭脳は、いっそ冷徹ともいえるほどに冴え渡っている。高い志力を存分に活用して、歯を食いしばりながら彼は勝利への道筋を探し続ける。


 「カジャ、ツオーノ君、回復を遅らせてっ」


 時間稼ぎの指示を飛ばす。我獣は、ケンソーが命がけで突き刺した棍と石の槍によって縫いとめられている。脱出しようと体をよじりつつ、体からは持続回復が急速に作用しているために煙が上がっている。


 「ルゥゥガアアアアアアア!!!」


 思い通りにならない体に苛立ちを覚えたのか、我獣悪魔は吠える。


 「ぶもおおぉおおぉぉあああああ!!!」


 「アルマオ がんばるー カジャも がんばるー」


 そこに、ツオーノの斧による打撃とカジャの熱線が襲う。どちらも痛打を与えるわけではないが、脱出に専念させず、傷の回復に専念させず、状況を停滞させる重大な役目を担う攻撃となる。


 (足を動かせない、動かしても意味は無い、僕の普通の攻撃ではあの体を突き抜けない。だけど、穿角の一撃は、確かにえぐることができたんだ。けど、何回も攻撃したって、あの威力じゃジリ貧…。なら、一撃だ。今出来る全部の力を込める。一撃に全てを賭ける)


 覚悟を決めたアルマーオは目線を上げる。自らの視線で射抜こうとでもするのかのように、我獣を睨みつける。右腕に握ったまま離さなかった穿角を掲げて射線を通す。周囲から少しずつシーガを集め穿角へと通していく。穿角の持つ特性により、通されたシーガは自然と回転をしつつ収束し始める。アルマーオは、先の戦いで使用したよりもシーガの量を増やしていく。回転速度はどんどん増していく。ともすれば、穿角本体から勝手に弾け跳びそうになるほどに回転速度と密度が増していく。それをアルマーオは、外側から別のシーガ膜を作ることによって押さえつける。そうすることによって溜めを産み出しているのだ。圧力を極限まで高めた所で一気に抑制を解放し、勢いを増して貫こうという算段だ。


 「ツオーノ君、カジャ、大変だと思うけど時間をもっと稼いで!」


 ツオーノ君は、飛んで来た声に顔を向けもせずに即座に頷く。カジャはちょっとめんどくさそうな声を出しながら熱線の本数を増やす。


 「はやくしてねー」


 「グルゥゥウアアアアアアアアアアアア!!!」


 持続回復、火炎放射、衝撃波、三つの特殊能力を持つ我獣悪魔特異個体ではあるが、どうやら同時に行うことはできないようだ。回復を優先させているために、衝撃波や火炎放射による遠距離攻撃は行われていない。初めはその事に気付いていなかったアルマーオだが、自身が動けないのにもかかわらず、それらの特殊能力を発動させていないことに気付き、推論を重ねて結論を出した。


 「ツオーノ君、カジャ、回復してる時は遠距離攻撃が来ないみたい!様子に注意してみて!」


 その言葉を受けた二体の召喚獣の動きが変わる。ツオーノ君は離脱を重視した軽めの一撃ではなく、体重を前がかりにして重めの一撃を放つ。カジャは、傷口の回復を遅らせることが攻撃機会を増やすと判断し、熱線を足の傷口に集中し灼いていく。そんな二体に振り回される我獣。踏み込んできたツオーノに攻撃を合わせようとするが、その瞬間に眼に向かって熱線が跳んでくる。ほんの刹那、眼を閉じることで回避はするが、その隙にツオーノ君は滑り込んで攻撃を命中させる。我獣はツオーノ君が離脱する際に何とか攻撃を命中させようとしているが、再度カジャからのフォローが入る上に、斧の攻撃により体勢を崩しているため捉えることができない。


 「ッ、ッルガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 苛立ちが限界に達したのか、我獣は回復をやめて衝撃波を放つ。しかし、二体の召喚獣は、我獣の身から煙が消えた瞬間に距離をとるので、有効な攻撃にはなりえない。しかし、その衝撃によって我獣を縫いとめている岩の槍に亀裂が走る。左足の岩の槍は、そのまま砕け折れてしまう。恐らく我獣は、衝撃波を連発すれば、戒めから解放されることになるだろう。しかし、衝撃波を用いることで消耗する体力は、持続回復を用いなければならない。しかし、持続回復を用いれば小うるさい召喚獣どもに一撃を与えることができない。我獣には、そういったジレンマが生じている。もちろん、カジャたちも、時間稼ぎをすることは出来ても、決定打を放つことが出来ないというジレンマを抱えている。


 「あるまおー まだー?」


 「ぶもあああああああああああ!!!」


 果敢に切り込むツオーノ君、気の抜けた炭酸のような声とは裏腹に、冷静で的確な支援に徹しているカジャ。その支援に感謝しつつ、アルマーオは額に汗をしながら、必死でシーガの制御を行っている。


 「ぐっ…まだだめ。まだまだ足りないっ」


 既に穿角に纏わせたシーガの回転は眼に終えないほどの速度となっている。量も、これまでの記憶の中の最大量に近づいている。しかし、アルマーオは理解していた。こんなものでは、決してあの我獣を止めることはできない、と。


 「一撃しか…機会は無い…一撃だ、一撃で決めるんだ。まだだ…もっとだ…超えるんだ!」


 徐々に穿角にこめられるシーガが視覚化を起こし、輝き始める。大きな光の渦が、緩やかな回転を描きながら我獣へと突きつけられた穿角へと集い始める。しかし、それよりも鮮やかに輝き始めたものがある。


 「絶対に…倒す!お前を倒して、お父様を救い、お母様の下へ戻り、猫との生活を守り抜く。お前ごときに、僕の夢を打ち砕かせなど…させるものかああ!!!」


 限界を超えたシーガの操作、消耗した体力、自身を苛む激痛、その全てに打ち克つために、アルマーオは吠える。猫のように細くなる瞳孔に敵を捉え、柔らかな緑色の虹彩を苛烈な輝きを放つ金色に変じさせながら、彼は吠える。全てを超えていくために、目の前に立ちはだかる壁を、撃ち貫くために。


 「グゥ、ッグルゥゥゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 

 


 しかし、その輝きは当然のことながら我獣の眼に止まる。その輝きの危険性を即座に察知した我獣は、回復を即座にやめて火炎放射をアルマーオに放つ。アルマーオは、迫り来る炎の奔流を一顧だにせずひたすらにシーガを練り上げていく。


 「させないよー」


 そこにカジャが立ちはだかる。翼を大きく広げ、真紅の体をくねらせて、盾となる。自身に炎を纏い、アルマーオへの直撃だけは防ぐ形で炎の波の防波堤となる。


 「むー」


 「ぶもああああああああ!!!」


 意識が離れた隙を狙い、我獣の口元へと斧を叩き込むツオーノ君。二体の活躍により、アルマーオへと炎は到達できなかった。しかし、我獣はその程度では諦めない。自身を殺すにはまだ足りないが、殺す可能性のある力を見逃すはずが無いのだ。先ほどよりも大きく息を吸い込むようにシーガを溜め込み、一気に炎として放つ。先ほどの数倍の炎の奔流がアルマーオを襲う。


 「ぶもおおおあああ! ぶもぁ!?」


 「ぬぅー ぬぁー」


 同じように口元を狙ったツオーノ君の攻撃は、潰され動かないはずの我獣の左腕によって、地面に叩きつけられることで阻害される。炎の盾となったカジャもまた、押し寄せる炎の波濤の勢いを減じつつも抗えず、大きく弾き飛ばされる。結果、アルマーオへと、炎が襲い掛かることとなる。


 「ぐっ。ぐぉおおおおおあ!!!」


 直撃。しかし、相手へと狙いを持って構えられた穿角、そこに集まる膨大な量のシーガは、攻撃のために収束しているのであっても、その余波によって炎の勢いを抑えることに成功する。しかし、内部の圧力を抑えるためのシーガ膜が大きく削られ、暴発しそうになる。


 「この程度で、僕の夢を焼き尽くすことなどできはしないっ!!」


 アルマーオは、その危機をすらも強き意志でねじ伏せる。一瞬でも気を抜けば荒れ狂うだけの無駄な暴発で終わるだろう恐るべきシーガの奔流を、一点へと固定し、回転させ、威力を高める。今や彼の瞳は爛々と金色の恒星のように輝き、収束するシーガのうねりは金色の星雲のように辺りを染めている。


 「僕の夢は、僕の夢は、貴様ごときの殺意に負けるほど、やわじゃないんだっ!」


 「グッガゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


 炎の攻撃の無為を悟ったのか、我獣は大胆な行動へ移る。自身の縫い付けられた足が、自身の危険を招くなら、その様な部位など捨て去ってしまえば良い。そう判断したのだ。



 「ギャアアアッゥゥ、グゥ、グガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 我獣は持続回復に回す全てのシーガを左腕と左足の強化へと用いる。縫い付けられた右脚からは、大きく太いものが千切れ跳ぶような音が連続して聞こえてくる。もともと石の槍などで千切れかけていた右脚は、前へと進む力へと耐え切れずに千切れ、結果として我獣は身の自由を手に入れる。即座に我獣はアルマーオへと、左足と左腕の力を用いて跳躍する。腕と足が使えなくても、鋭い牙によって相手を殺そうという深い殺意の表れだ。その目論見はほぼ成功する。カジャとツオーノは攻撃に沈み、アルマーオも一撃にかけるために、すべての力を注ぎ込んでいるために動けない。このままいけば、アルマーオは我獣に食いちぎられてしまう。


 「――――」


 そんな絶望的な状況の中でアルマーオは眼を閉じる。だが、彼の眼を閉じさせたのは「諦念」ではない。彼が瞳を閉じた理由、それは「信頼」、ただそれだけだ。


 「ギュァアアアアアアアアアアア!グゥグルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 跳躍し、口を前回にした我獣が急停止する。当然ことながら、彼の意思では無い。彼の意思を無視して動きを止めたのは、二本の槍。左腕と左足に突き刺さった、新たな岩の槍が我獣の動きを制限したのだ。当然、それを為したのはこの1人と…1匹。



 「…全く…私の息子に何をするつもりだったんだい?」


 「ご主人様に何をするつもりだ。この下郎めがっ」


  

 1人は、息子に寄りかかるように気絶していたケンソー。高い志力と理力を活かし、気絶から復活した直後に状況を判断、我獣の動きを止めるために石の槍を放つ。一匹は、チョコレート色の四肢と耳を持ち、理性的なサファイアブルーの瞳を怒りに燃やしている召喚獣クロ。彼はケンソーの開けた穴から飛び込みながら、我獣へと槍を放つ。この二本の槍が我獣をアルマーオの直前で縫いとめたのだ。そして、アルマーオは目を開ける。金色に輝くその瞳の先にある全てを穿ち、超えていくために。


 「行っけぇえええええええええええええええええええ!!」


 穿角に蓄えられた回転と圧力が、一点に向かって解き放たれる。その金色の弾丸は、一瞬で我獣の頭部を貫通すると、そのまま斜め上へと突き進み、王城全てを貫いて空へと到達する。



 「…………」


 一瞬の静寂が辺り全てを支配する。時さえも止まってしまったかのような沈黙。実際には一秒にも満たない、刹那の静寂。


 「……僕は、超えていく。」


 静寂を破ったのは破砕音。我獣の頭部が弾け飛ぶように四散し、天井は弾丸が突き抜けた部分を中心に、大きく外側へと吹き飛ぶ。魔法的な防御や物理的な防御などを全て撃ち抜いた弾丸、その回転の余波が破壊を大きく広げたのだ。結果、審問室の天井はその4分の1が吹き飛び、外からの光が柔らかに降り注ぐこととなった。


 「…ふぅ……あ、空だ…きれい…だな…」


 背後から二人の友の声が聞こえてくるような気がしつつも、アルマーオの心は眼前の光景に釘付けとなっていた。彼が撃ち貫いた天井の大穴の向こうには、どこまでもどこまでも澄み切った、果てしなく青い空が広がっていたのだ。その清澄さに心を打たれ、吸い込まれるようにアルマーオは意識を失った。その口の端に、困難に打ち克ち、夢を護れた確かな満足の笑みをのせて。



 こうして、召喚術師は運命の壁を穿つ。様々な助けを得つつ、召喚術師アルマーオは大きな困難を穿ち、大穴を開けて突破した。しかし、彼の夢を護るにはまだ足りない。この苦難の先に待つ、より大きな困難を彼らは知らない。撃ち貫いた穴の先に広がる蒼穹は、彼の偉業を称えるかのように、どこまでも澄み渡っていた――

 いかがだったでしょうか?


 次は後日談のようなものですが、ようやく塔へとたどり着くこととなります。

 なろうコンは残念ながら選考からもれてしまいましたが、評価の文を読み、深く納得しておりました。まだ、まだまだ、まだまだまだ稚拙な文章では有りますが、ここで筆を折ることはせず、書き上げたいとは思っています。お付き合いいただけると嬉しいです。


 評価、感想、レビュー、そしてブックマーク!いただけるととても嬉しいです。気が向いたときでかまいませんので、よろしくお願いいたします。



 ちょっと書いてみたい短編のアイディアがあるので、次の一話を書き上げたら、ちょっとそっちにも挑戦してみようかなーとか思っております。

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