「アイクウの 1日」
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「僕は、猫が大好きだああああ!!……」
「ん。んぅー。 あるまー…お?…」
今の声はアルマーオかしら…今日も早いのね…頑張り屋さん…やっぱりケンの子ね……ケン?ケンはどこ?
「おはよう、アイ。今日も素敵だよ。…鍛錬に行ってくるから、もう少し寝てていいよ。」
あぁ、ケン。良かった、側にいてくれたのね。意志の強そうな瞳が、今日も私を見つめる。どんどん近づいてくる。どうしよう、朝からどきどきがとまらない。思わず目を閉じちゃったけど、おでこ? むぅ、おでこ? たまには良いけど、朝はそこじゃだめ。
「んー…おでこ?」
寝起きだからか、心の中の言葉が出ちゃった。どうしよう、呆れられてないかしら。あ、ケンが顔を近づけてきてくれる、嬉しい! 本当に嬉しいわ。朝から幸せを感じられる私は、きっと世界で一番幸せ者ね。
「ん。 おはようケン。今日も大好きよ。」
うぅ、寝起きで頭が回らないからって、私どうしてあんなに甘えちゃうのかしら。おでこ?って、おでこ?って、もう!我慢しなさいよ朝の私!うぅ、こんなんじゃケンに嫌われちゃうわ。よし、今日も美味しい料理を作って、ケンの胃袋をがっちり掴むのよアイクウ!
『アイクウー おなかすいたー』
「あら、カジャちゃんおはようっ。今作っちゃうからね。あ、ちょっと火を強くしたいの、手伝ってくれる?」
『まかせてー』
カジャちゃんは本当に働き者ね。私は『変質』が下手だから、本当に助かるわ。ケンが喚んでくれたのよね。さあて、二人のためにも最高に美味しい料理を作らないとね。今日は朝からしっかり元気を蓄える料理。魚介のパエリアと、トマトのサラダ、温かいお茶も用意しなくちゃね。
さてと、料理も出来たし、二人を呼びに行かなくっちゃ。今日も、二人で一生懸命に鍛錬してるのね。んー、私も混ざりたいけど、戦闘はどうしても苦手なのよね。アルマーオ、ケンと同じ髪色と鋭い目をした私の息子。賢くて優しくて本当に自慢の息子、ちょっぴり心配なこともあるけど…いつだって大好きよ。シーガの練習、大変だけど頑張ってね。あなたの身の安全を守るためよ。あぁ!ケン、そんなに強くしなくても…いえ、だめよアイクウ。シーガの練習はケンに任せるって話し合ったじゃない。あれも必要なことなのよ、うん。あぁ!今度はおでこに!………そ、そうよ。ゴハンができたから呼ぶのは悪いことじゃないわよね。うんうん。ゴハンは大切だもの。
「二人ともー!ごはんよー!!」
「アイクウちゃ~ん。おっはよぅ~。今日もとってもきれいよぉ~。うらやましいわ~。」
ハフゥさんのお店、カマど屋に到着。ハフゥさんは体は男、心は乙女の人なのよね。色々服装のアドバイスとか、ケンへのプレゼントとか相談にのってくれる、頼りになるお姉さんなの。
「ハフゥ姉さんも、その紫色のスカーフ、とってもお似合いですよ。」
「そう? ありがとっ。 じゃあ、今日もがんばりましょうねん。」
「はいっ!いっぱい作りますよ。」
力こぶを作って見せたら姉さんに笑われちゃった。ちょっと恥ずかしいね。カジャちゃんが尻尾で撫でて慰めてくれるの?ありがとね、ちょっと復活できたわ。よぉし、今日もたくさん作るわ!
「アイクウさーん キギュウ丼三つ! タトンのセイキョウ焼き二つ!ウチョウ卵丼4つ!」
「はーい!」
今注文してくれたのはクレナちゃんね。この量、ザンゴーフさんも来てるのねきっと。クレナちゃんはまだ若いのに、色々お父さんの手伝いをしてるとっても良い子。優しい顔立ちで勇ましい話し方をするのだけど、もうちょっと優しい言葉遣いのほうが良いと思うわ。あの赤い髪も、伸ばせばきっととても素敵だと思うの。
「クレナちゃーん、出来たわよ。手伝ってくれる?」
「はーい。わぁ!今日も美味しそう!」
「ふふふ、いつもそういう話し方してたらいいのに。とっても可愛いわよクレナちゃん。」
「か!…かわわ…アイクウさんには適いませんよっ。 親父っ、もってきたぜー。」
「ん?おお!アイクウ! 今日もありがとうな。この新メニュー、食い応えもあって最高だ!」
「ほんとっ!? 嬉しい! 息子が考えをくれた料理なの。」
「ほお、息子さんかい。そりゃあ将来優秀な料理人になるだろうな! は
っはっは!」
ザンゴーフさんって本当に豪快な笑い方をするのね。こっちまでつられて笑っちゃうわ。さてと、次の料理を作らなきゃ。ん?一瞬背中のほうで悪いシーガが動いたような?何かしら?
「ん?」
あら?どうしてか男のお客様がザンゴーフさんとハフゥ姉さんに腕を掴まれてるわ。
「お二人とも、どうしたの?」
「ん? あぁ、こいつ久しぶりに会ったやつでな。懐かしくてつい手を掴んじまったのさ。」
「実は私とも知り合いなのよぉ。どうもこの店のルールが分からない部分も有ったみたいだから、ちょっと ハナシアイ してくるわね。」
「まあ!お二人のお知り合い?すごい素敵な偶然ね。」
男の人は何か青白いような顔をしているけど、二人が笑顔だし漏れ出るシーガも濁ってないし、大丈夫ね。それにしても、二人とも知り合いってすごいわねぇ。さ、料理の続きっと。
「この店でアイクウさんのお尻を触ろうなんて…命知らずの馬鹿もいたもんだねぇ。」
通り過ぎる時にクレナちゃんが何か言ってたけど、何だったのかしら?
「えぇ? 逃亡者ぁ? 困るわねぇん。」
「いえ、大丈夫です。ケンソー主任が動いておりますから。」
「ケン? ケンがそんな仕事をしてるの? 危なくないかしら。 でも犯罪者を捕まえるケン、見てみたいかも。きっとかっこいいわよね。」
「アイクウちゃん、ほっぺた赤くなってるわよぉん。」
え!?やだ、私ったら恥ずかしい! うぅ、ケンにこんな姿見せられないわ。あ、あの役人さん二人は、そのまま入り口で警備をしてくれるのね。えっとじゃあ何か作ってあげないと!カジャちゃんを呼びましょう。
「こ、これを我々に!?ですか?」
「えぇ。いつもありがとうございます。ケンのこともよろしくお願いしますね。」
「………女神だ…。」
差し入れたおにぎりがそんなに嬉しかったのかしら?なんだか感極まった表情をしていたわ。あら?もう一人いらっしゃったわ。おにぎりつくらなきゃ!
「アイクウさん!今、ケンソー主任が逮捕したみたいです。ご心配おかけしました。」
「ケンが! あぁ、やっぱり素敵…。」
「……可憐だ。」
ケンのことを想像して感動してたら、みんながこっちを見ているわ。やだ、恥ずかしい!どうして私ってこうなのかしら。うぅ、こんなんじゃケンに嫌われちゃうわ…。
「え? どうしましょう、あの野菜が無かったら特製ランチがだせないですよ、ハフゥ姉さん。」
「そうねぇ、けど私たちには何も出来ないし…。」
あの隣村の野菜が、この1週間の特製ランチのメインなのに…どうしましょう…。しかも他の野菜もこないんじゃ、出せない料理がたくさん出てきちゃうわ…楽しみにしてきてくれるお客様を悲しませちゃう。
「ハフゥ姉さん。何か別のを―。」
「だめよ、あの野菜のための仕込をしていたのだもの、違うものを使っても味が合わないわ。仕方ないわよ、今日は臨時休業にするしか…。」
「けど、それじゃあお客さんがっ。」
「ああもぅ、泣かないでアイクウちゃん。そうね、簡単なもので良いか、お客様に確認して、できる範囲でなんとか―。」
「アイ、大丈夫だよ、今野菜を持ってきたから。」
「ケン! あぁ、愛してるわ!」
ハフゥ姉さんと話してたら、かごに野菜を一杯に盛った旦那様が来てくれたの。これは、飛びついても仕方ないわ、うん。き、キスだってするのが当然よ。そうよそうよ。………うぅ、どうして私、我慢できないのかしら。
「あらあら御熱いわねぇ、ご両人。 もう、アイクウちゃん顔真っ赤じゃない。可愛いわぁ。」
「アイ、昼は君の特製ランチって決めてるんだ。お腹が空いて倒れちゃいそうだから、作ってくれると嬉しいな。」
「任せてケン。とびきりのゴハンを作ってあげるわね。」
こんな素敵な男の人、絶対に他の人に渡したりしないわ!胃袋をがっちり掴むのよ、アイクウ。これは女の戦いよ!
「ほんと健気で素敵な奥さんね。今もあなたのために一生懸命よ。」
「本当ですね。私にはもったいないくらいの素敵な女性です。生涯をかけて愛しぬきますよ。」
「……さらっと、のろけるわよねぇん。うちのお店、アイクウちゃんファンばかりなんだから、気をつけるのよん?」
「アイをほかの人に渡すつもりは全く有りませんから。立ちはだかる輩はすべて叩き潰します。」
「………完全に本気の目ね、それ。」
ハフゥ姉さんとケンが楽しそうに話してる。ふふふっ、好きな人たちが笑顔だと、こっちまで嬉しくなっちゃうわね。よぉし、料理がんばるわ!
「今日もいぃーっぱい働いたわね。やっぱり仕事っていいわね。生きてるって感じがするわ。カジャちゃんもおつかれさまっ。」
『アイクウの 今日のオコゲも おいしかったから ぼくは だいじょぶー』
カジャちゃんとこういう風に何気なく会話して帰るのもすごい楽しいわ。今日も一日がとても充実してたわね。さてと、疲れて帰ってくるケンと、一生懸命練習しているアルマーオにゴハンを作ってあげないとね。
「アルマーオ、ただいま。良い子にしてた?」
抱きしめると取っても良いお日様のにおいがするわ。うぅ、離したくないぃ。
「はい!刺繍をしていました。 お、お母様ぁくるしぃぃ…。」
「あら、ごめんねアルマーオ。刺繍?どんな刺繍をしたの?」
「はい!もちろんコネカットですよ。 ほら!」
ふふふ、本当に良い笑顔をするのねアルマーオ。それにしても良く出来てるわ。めきめき上達していくから、本当に教えがいがあるわ。まあ、コネカットしか刺繍しないのだけど。でも、家紋にしかコネカットは絵姿が残っていないのだけれど、どうしてアルマーオは色々なポーズを縫えるのかしら?
「ねぇアルマーオ。もしかしてコネカットを見たことあるの?」
「んな!? そそっそそ、そんなことあるわけないですよっ。しょ、召喚できていないんですから。やだなあお母様、ははは、ははは。」
んー、シーガが濁ってる。どうして嘘をつくのかしら。じーっとみてあげるわ。じーっ。目が泳ぎだしたわね。じーっ。汗が大量に出てきてる。じーっ。震えだしたわ。んもぅ!ここまで言わないなんて、よっぽどの秘密なのね。
「もう、アルマーオったら頑固なんだから。何か困ったことなら必ずお母様に言うのよ?いいわね?」
「は、はいお母様。えへへ。」
きゃー!はにかむアルマーオってば可愛い!ぎゅうっとしちゃうわ。おでこにもたくさんチューしてあげる!なんて可愛い子なのっ。
「うあぁあぁ お母様ぁぁあぁ。」
うぅ、どうして私は好きなものへの我慢が出来ないのかしら。こんなんじゃ母親失格よ…。よし、アルマーオの胃袋もがっちり掴むのよっ、アイクウ。そうね、あの子の考えてくれたアイディアのキギュウとタトンの合いびき肉焼き…ハンバーグでしたっけ。それを作ればアルマーオの胃袋をがっちりつかめるわね。新メニューなら、け、ケンも喜んでくれるでしょうし。なおさら頑張らないとっ。
「カジャちゃん!夕ご飯もがんばりましょうね!」
『あいあいさー』
美味しいご飯を作り続けて、二人の胃袋をがしっと掴んで離さないわよ!二人とも私の最愛の家族。二人のために、私に出来ることは精一杯やってみせる!…ふふふっ、なんて楽しくて心躍るのかしら。好きな人のために好きなことを出来る。私って本当に世界一の幸せ者ねっ。
「僕は今日も猫が――」
ん、んぅー。アルマーオが、今日も大声を出しているわ。ケンは? いた。今日も私を見て微笑んでくれる。 ふふ、幸せだわ。さあ、今日を始めましょう。
アイクウは家族の二人が大切で大好きです。でもちょっぴり自分に自信がありません。二人とも、胃袋だけじゃなく心もがっつりアイクウにつかまれてますが、あまり気づいていません。
アイクウの裏表の無さと健気さから、飲食店街のアイドルにもなっていますが、やっぱり本人は気づいていません。
天然なところが多々ありますが、先祖がえりを起こしており、シーガの清濁から悪意と善意を見分けることが出来るので、悪いことには引っかかりません。
閑話もおわり、次からようやく3章にはいりますが、明日は職場の都合で間違いなく投稿できません。本当にすいません。




