↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/70

第26話 窓辺のあかり

孤児院へ戻る頃には、朝はすっかり白くなっていた。


けれど、ましろにはその白が少しだけ怖かった。


夜を追い払う白。


朝を連れてくる白。


まだ何も書かれていない白。


同じ白なのに、意味が違う。


王冠の空白を知ってから、ましろは白を見るたびに少し立ち止まるようになっていた。


星見坂孤児院の門は、朝の光を受けて静かに立っている。


門の上の小さな鐘が、風もないのに揺れた。


ちりん。


ましろが名乗る。


「久遠ましろ」


ちりん。


ねむが眠そうに続く。


「棘咲ねむ」


ちりん。


ソラは席札を胸に押し当てて、少し遅れて言った。


「帳ソラ」


鐘も、少し遅れて鳴った。


ちりん。


最後に、ヨルが立ち止まる。


黒い鐘の杖を肩に担ぎ、片腕には茶色の木箱を抱えている。


赤い屋根の家で見つけた、窓の絵が描かれた小さな箱。


もう片方の手には、折りたたまれた紙片。


あかりへ。


そう書かれていた紙。


読んではいけない。


でも、なくしてはいけない。


ヨルは門の前で、少しだけ黙った。


そして低く言う。


「黒鐘ヨル」


ちりん。


門の鐘が鳴る。


その奥に、ごん、という黒い余韻が重なった。


ヨルは眉をひそめる。


「まだ変」


「でも、前より近い音だった」


ましろが言うと、ヨルはそっぽを向いた。


「知らない」


それでも、門を越えた。


茶色の木箱は、何も言わなかった。


けれど、箱の蓋に描かれた小さな窓の絵が、朝の光を受けて一瞬だけ淡く光った。


まるで、箱そのものが孤児院の中へ入ることを覚えようとしているみたいだった。


食堂に戻ると、白木の箱はまだそこにあった。


長いテーブルの端。


白い布の上。


黒い布をかけられ、星の護符と夢見のランタンとソラの席札に囲まれている。


未許しの輪(みゆるしのわ)の内側で、声を漏らさずに沈黙していた。


ただいま。


ごめんね。


その二つの言葉は、まだ箱の中にある。


でも、今は勝手に広がらない。


ヨルは白木の箱をちらりと見た。


何か言いかけたように見えたけれど、言わなかった。


かわりに、茶色の木箱を抱え直す。


「これ、どこに置く」


ましろは食堂を見回した。


「白木の箱の隣?」


ヨルは即座に言った。


「嫌」


「うん。分かった」


「早い」


「嫌って言ったから」


「言えばいいと思ってる?」


「言わないと分からないから」


ヨルは何か言い返そうとして、やめた。


ねむが欠伸を噛み殺しながら、夢見のランタンを掲げる。


青黒い光が、茶色の木箱を照らした。


けれど、箱から影は出なかった。


白木の箱のような重い声もない。


ただ、蓋に描かれた窓の絵だけが、ぽう、と淡く光った。


「これは、白木の箱と違う」


ねむが言う。


「どう違う?」


ましろが聞く。


「謝ってこない。帰ろうともしない。ただ、待ってる」


ヨルの表情がわずかに強張る。


「待つな」


茶色の木箱は答えない。


窓の絵が、また少しだけ光る。


ソラが近づいた。


彼は箱に触れず、少し離れたところから見ている。


「この箱、開けるための箱じゃないかも」


「箱なのに?」


ましろが聞くと、ソラは小さく頷いた。


「中に入ってるものを出す箱じゃなくて、外に灯りを置く箱」


「灯りを?」


「うん。窓みたい」


ヨルが低く言った。


「それは見れば分かる」


「違う」


ソラは首を横に振る。


「窓の絵が描いてあるんじゃなくて、箱が窓になりたがってる」


ましろは、茶色の木箱を見つめた。


小さな窓の絵。


その中に灯る、かすかなあかり。


あかりへ。


紙片に書かれていた言葉。


星帰りの歌の一節。


あかりは窓に、待っている。


全部が、少しずつつながり始めている気がした。


けれど、勝手につなげてはいけない。


この箱は、ヨルの痛みに近すぎる。


「あかりって」


ましろは言いかけて、止めた。


ヨルがこちらを見る。


黒い目。


警戒している。


けれど、怒鳴りはしなかった。


ましろは言葉を選ぶ。


「名前なのかな」


ヨルは答えない。


長い沈黙。


やがて、彼女は低く言った。


「知らない」


その声は、知らないと言う人の声ではなかった。


知ってしまいそうで、知らないと言っている人の声だった。


レムが杖の宝石の中から言った。


「まずは置き場所を決めましょう。白木の箱は未許しの輪。茶色の箱は、別の扱いが必要ね」


「開けない箱じゃだめ?」


ましろが聞くと、レムは首を横に振った。


「白木の箱は、開けないことが境界だった。でも茶色の箱は、閉じたままでも外へ光を出そうとしている。完全に閉じ込めると、逆に歪むかもしれない」


「じゃあ、開けるの?」


ヨルの声が鋭くなる。


「開けない」


レムは即答した。


「ただし、暗い場所に隠すのも違う」


ねむがぼそりと言う。


「面倒な箱」


「ええ」


レムは認める。


「待つためのものは、だいたい面倒よ」


ヨルが顔をしかめる。


「待つな」


その言葉は箱に向けられているようでもあり、自分に向けられているようでもあった。


その時、食堂の窓がかすかに鳴った。


こつん。


小さな音。


誰かが外から爪で叩いたような音だった。


ましろたちは一斉に窓を見る。


朝の光が差し込む窓。


そこに、赤い屋根の家が映っていた。


本当なら、ここからは見えないはずの家。


坂の下にある、小さな赤い屋根。


それが、食堂の窓ガラスの中に映っている。


窓の奥には、さらに窓があった。


赤い屋根の家の、あの子ども部屋の窓。


そこに、小さな灯りがともっている。


ましろは息を呑んだ。


「見えてる?」


ねむが言う。


「見えてる」


ソラも頷いた。


「窓がつながってる」


ヨルは何も言わなかった。


ただ、茶色の木箱を抱える腕に力を込める。


窓ガラスの中で、赤い屋根の家の灯りが揺れた。


その揺れに合わせて、茶色の木箱の窓も光る。


「この箱、赤い屋根の家とまだつながってる」


ソラが言った。


「持ってきたのに?」


ましろが聞く。


「うん。持ってきたけど、離れてない」


ねむがランタンを窓へ向ける。


青黒い火がガラスに触れると、そこに細い文字が浮かんだ。


待っていた時間は、まだ家にある。


文字はすぐに消えた。


代わりに、次の文字が浮かぶ。


待つことをやめた人は、時間を売った。


ましろは胸が冷たくなる。


待つことをやめた人。


赤い屋根の家で読んだ便箋にあった言葉。


おかえりを売ってしまった人。


待っていた時間を売った人。


その人が、まだ分からない。


ヨルが窓を睨む。


「誰だ」


声が低い。


「誰が売った」


窓は答えない。


ただ、赤い屋根の家の灯りだけが揺れる。


澄が食堂へ入ってきた。


いつの間にか、子どもたちを別室へ移していたらしい。


彼女は窓と茶色の木箱を見て、静かに目を伏せた。


「窓灯りですね」


「窓灯り?」


ましろが聞く。


澄は頷く。


「星見坂に古くからある、待つためのしるしです。夜道に迷った人が帰れるように、窓に灯りを置く。家の中の人が待ち続けなくても、灯りが場所を覚えてくれる」


「人が待つ代わりに?」


「ええ」


澄は茶色の木箱を見る。


「待ち続けることは、時に人を壊します。だから、昔の人は灯りに待つ役を少し預けたのです」


ヨルが低く言う。


「待つことを、売ったんじゃないの」


澄は首を横に振る。


「本来は、売るものではありません。預けるのです。人が生きるために、少しだけ灯りに任せる」


「燐灯堂はそれを売った」


レムの声が冷たくなる。


「待つ時間を商品にしたのね」


澄は目を伏せる。


「おそらく」


ましろは茶色の木箱を見た。


窓の中に灯る小さなあかり。


これは、待つためのもの。


でも、誰かが待つことをやめた時、その時間は燐灯堂に流れた。


そして、帰る言葉は行き場を失った。


「じゃあ、この箱は」


ましろが言う。


「待つための箱?」


澄は少しだけ考えた。


「待つことを、人から奪わないための箱です」


ヨルが笑った。


笑ったのに、苦かった。


「待つことを奪わないための箱が、待つことを売った家に残ってたわけ」


誰も答えなかった。


答えられなかった。


茶色の木箱が、かすかに光る。


窓の灯りは消えない。


けれど、強くもならない。


まるで、誰かが息を殺して待っているみたいだった。


ましろはそっと聞いた。


「ヨル。この箱、窓辺に置いてもいい?」


ヨルがこちらを見る。


「どこの」


「孤児院の窓」


「何で」


「赤い屋根の家と、ここをつなげるため」


ヨルの目が険しくなる。


「つなげてどうする」


「待つ場所を、一つにしない」


「意味が分からない」


ましろは言葉を探した。


「誰か一人が待ち続けるんじゃなくて、灯りを置く。赤い屋根の家だけが抱えなくていいように。ヨルだけが抱えなくていいように」


ヨルは黙った。


ましろは続ける。


「白木の箱は、まだ許さない場所に置いた。茶色の箱は、待つことを誰か一人に押しつけない場所に置きたい」


ねむがランタンを抱えたまま言う。


「つまり、待つのを分担する?」


「分担というより」


ソラが食堂の窓を見て言った。


「灯りが場所を覚える」


ましろは頷いた。


「うん。それ」


ヨルは茶色の木箱を抱えたまま、長く沈黙した。


その沈黙の中で、箱の窓は静かに光っている。


やがて、ヨルは言った。


「待つな」


ましろは答えない。


ヨルは続けた。


「待ってると、壊れる」


その声は、怒りではなかった。


本当に、知っている人の声だった。


「待っても帰ってこないことがある。待ってる間に、自分が何を待ってたのか分からなくなることがある。灯りをつけても、誰も見ないことがある」


ましろは静かに聞いた。


「それでも」


ヨルは箱を見下ろす。


「灯りが消えたら、本当に終わる」


その言葉で、食堂の空気が少しだけ変わった。


ヨルは自分の言葉に気づいたように、眉をひそめる。


「今のは」


「うん」


ましろは頷く。


「聞いた」


「忘れろ」


「忘れない」


「だと思った」


ヨルは、疲れたように息を吐いた。


「でも、勝手に待つな」


「うん」


「私の代わりに待つな」


「うん」


「灯りを置くだけ」


「うん」


「帰ってくるかどうか、勝手に決めるな」


「決めない」


ヨルはましろを見た。


「返事が早い」


「大事だから」


「本当に面倒」


けれど、ヨルは茶色の木箱をましろへ渡した。


ましろは両手で受け取る。


軽い。


でも、軽さの中に緊張がある。


中身が軽いのではない。


開けられていないから、まだ重さが決まっていないのだ。


食堂の窓辺に、白い布が敷かれた。


そこへ茶色の木箱を置く。


蓋に描かれた小さな窓が、外の朝を向くように。


ましろはその隣に、あかりへ、と書かれた紙片を置こうとして、手を止めた。


ヨルが見る。


「読むな」


「読まない」


「でも、なくすな」


「うん」


ましろは紙片を開かないまま、小さく折りたたんだ布の下にそっと挟んだ。


文字は見えない。


でも、そこにある。


ねむがランタンを窓辺に近づける。


青黒い光が、箱の周りに薄い境界を作る。


ソラは席札を少しだけ窓辺へ寄せた。


「場所、貸す」


茶色の木箱の窓が、淡く光った。


澄が静かに言う。


「窓辺のあかり」


その言葉に、ましろの胸が少しだけ震えた。


名前ではない。


人の名前ではない。


でも、そこに置くための呼び方。


ヨルはその言葉を聞いて、ほんの少しだけ目を伏せた。


「名前にするな」


「しません」


澄は優しく答えた。


「これは役目です」


「役目も売られる」


ヨルの声は低い。


「だから、ここでは売らせません」


澄の声は静かだった。


ましろは茶色の木箱を見つめる。


「窓辺のあかり」


小さく繰り返す。


箱は、かすかに光った。


その瞬間、食堂の窓に映っていた赤い屋根の家の灯りが、少しだけ強くなった。


遠い家と、孤児院の窓。


二つの窓が、一本の細い光でつながったように見えた。


子どもたちは別室にいるはずだった。


けれど、悠太だけが食堂の入口から顔を出していた。


「入っていい?」


澄が少し困った顔をする。


「少しだけですよ」


悠太はスケッチブックを抱えて入ってくる。


窓辺の茶色い木箱を見ると、ぱちぱち瞬きをした。


「これ、あかりのおうち?」


ヨルがすぐに言った。


「違う」


悠太は首を傾げる。


「じゃあ、あかりの席?」


ヨルは言葉に詰まる。


ソラが少しだけ笑った。


「席に近いかも」


「ソラ」


ヨルが睨む。


ソラは両手を少し上げた。


「名前を書く席じゃなくて、灯りを置く席」


悠太は納得したように頷いた。


「じゃあ、窓の席だ」


ましろはその言葉に胸が温かくなった。


窓の席。


待つための場所。


でも、人を縛らない場所。


「描いていい?」


悠太が聞く。


ヨルはすぐには答えなかった。


ましろも、何も言わず待った。


やがて、ヨルは低く言った。


「中は描くな」


「うん」


「紙も描くな」


「うん」


「外だけ」


「うん!」


悠太はスケッチブックを開いた。


窓辺の茶色い木箱。


その隣に、小さな星の護符。


ランタン。


席札。


黒い鐘。


そして、外の朝。


悠太は真剣な顔で描いていく。


その絵の中で、箱の窓には灯りが一つともっていた。


けれど、そこには誰も描かれていない。


悠太は絵の下に、ひらがなで書いた。


まだ、まってる。

でも、ひとりじゃない。


ましろは、その文字を見て息を止めた。


ヨルも見ていた。


怒らなかった。


何も言わなかった。


でも、黒い鐘は鳴らなかった。


それだけで、今は十分だった。


昼近くになると、窓辺のあかりは落ち着いた。


赤い屋根の家の映り込みも消え、食堂の窓には普通の中庭が映っている。


子どもたちは少しずつ戻ってきて、いつものように騒ぎ始めた。


ただ、何人かは窓辺の木箱を不思議そうに見た。


「あれ、何?」


「新しい飾り?」


「箱?」


ましろが答える前に、悠太が胸を張った。


「窓の席!」


「窓の席?」


「うん。誰かが帰る道を忘れないようにするところ」


子どもたちはよく分からないまま、へえ、と頷いた。


それでよかった。


全部を説明する必要はない。


言えないものは、言えないまま置いておけばいい。


ただ、勝手に売られないように。


勝手に読まれないように。


勝手に忘れられないように。


そのための場所を作ればいい。


ヨルは食堂の隅に座っていた。


スープの器を両手で持っている。


まだ慣れない手つきだった。


ましろが隣に座ると、ヨルは少しだけ横目で見た。


「何」


「何も」


「何もないのに座るな」


「座りたいから」


「理由が弱い」


「ヨルの隣なら、歩いていいって言ったから」


「座っていいとは言ってない」


「じゃあ、だめ?」


ヨルはスープを見た。


少しだけ沈黙してから言う。


「……別に」


ましろは笑った。


「じゃあ座る」


「もう座ってる」


「うん」


ヨルは呆れたように息を吐いた。


けれど、席を立たなかった。


しばらくして、ヨルが小さく言った。


「あれ」


「窓辺のあかり?」


「その呼び方は嫌い」


「じゃあ、窓の席?」


「それも嫌い」


「じゃあ何て呼ぶ?」


ヨルは答えなかった。


スープの湯気が、少しだけ彼女の顔の前で揺れる。


「まだ、呼びたくない」


「うん」


ましろは頷いた。


「じゃあ、呼ばなくていい」


ヨルは少しだけ目を伏せた。


「でも、なくすな」


「うん」


「またそれ」


「大事だから」


「本当に面倒」


けれど、その声に棘はなかった。


夕方。


窓辺の木箱が、また少し光った。


食堂には、ましろとソラだけがいた。


ねむは仮眠という名の気絶をしていた。


ヨルは外で黒い鐘の手入れをしていた。


悠太は澄の手伝いで、洗濯物を畳んでいた。


ソラは窓辺に立ち、木箱を見ている。


「どうしたの?」


ましろが聞くと、ソラは首を傾げた。


「箱じゃなくて、窓が見てる」


「窓が?」


「うん。外じゃなくて、中を」


ましろは窓辺へ近づいた。


茶色の木箱の窓の絵。


そこに、何かが映っていた。


赤い屋根の家ではない。


星見坂の街でもない。


小さな部屋。


机。


星の紙飾り。


窓辺の空の鉢植え。


そして、机の引き出し。


あかりへ、と書かれていた紙片が入っていた場所。


その引き出しの奥に、もう一枚、紙がある。


ましろは息を呑む。


「まだ、あったんだ」


ソラが小さく言う。


「でも、今は取りに行けない」


「どうして?」


「道が閉じてる。朝の道じゃないと、家が開かない」


木箱の窓の光が、少しだけ揺れる。


そこに文字が浮かんだ。


二枚目は、待つことをやめた人へ。


ましろは、声を出せなかった。


待つことをやめた人へ。


では、あの「あかりへ」は誰に宛てたものだったのか。


あかり。


待つことをやめた人。


帰れなかった人。


謝れなかった人。


まだ、線がつながりきらない。


けれど、確かに次の場所が見えた。


二枚目の紙。


赤い屋根の家の、子ども部屋の引き出しの奥。


ソラが窓を見つめる。


「明日の朝、また行くことになるね」


ましろは頷いた。


「うん」


その時、背後から声がした。


「勝手に決めるな」


ヨルだった。


いつの間に戻っていたのか、食堂の入口に立っている。


ましろは振り向く。


「見えた?」


「見えた」


「行く?」


「行く」


「決めるの早い」


「言わないと始まらないんだろ」


ましろは少しだけ笑った。


ヨルは不機嫌そうに顔を背ける。


けれど、その耳が少しだけ赤いように見えた。


窓辺の茶色い木箱は、もう光っていない。


ただ、そこにある。


待つために。


でも、誰かを縛らないために。


ましろは胸元の護符に手を当てた。


白木の箱。


茶色の木箱。


読まない手紙。


まだ見つからない二枚目の紙。


赤い屋根の家は、まだ終わっていない。


それでも、少しずつ。


「おかえり」の声は、孤児院の窓辺にも届き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。