第23話 騎士道精神
なんとかだ。なんとか俺達は王国の門のところまでこれた。あとはばれずに出るだけだ。
俺達は建物と建物のあいだに身を潜めて好機を窺っていた。果たして巧くいくのだろうか。
「いいかい。ここは皆でいくよりも一人ずついった方が無難だ」
アバンが助言してくれた。どうやらアバンは慎重に行動するタイプのようだ。
「緊張するかも知れないがいけるね?」
俺は比較的に大丈夫だ。だからばれなければいいだけの話だ。といっても確か門は一つしかなかったような。
「それじゃあまずはセシリーからいこうか」
アバンのお陰でここまでこれた。だが門が一つしかない。つまりこれは呼び止められる可能性が高い。
とここでセシリーは頷くと門の外を目指した。俺とアバンは見送った。果たして巧くいくのだろうか。
まだ……今は大丈夫だ。怪しまれてはいない。というか。そもそも騎士団長だけだ。セシリーの顔を知っているのは。
ちなみに俺の顔を知っているのはセシリーとアバン以外にいない。だが油断は禁物だろう。
お? セシリーが兵士に話しかけられたぞ。どうか。頼む。セシリーだけでも助かってくれ。悪いのは俺だけで十分だ。
「……ふむ。どうやら無事に通れたみたいだ、ね? は!?」
気配だ。どこからか。感じたことのある気配がした。これは。確か。はぁ!? 思い返した。これは騎士団長の気配だ。
「騎士団長に呼び止められたぞ」
うん? なに!?
「助けなきゃ!」
この時の俺にしか分からない未来が見えた。このままだとセシリーはなにをされるかが分からない。助けないと。
「ちょっ! 待て! おい!」
俺はアバンを置いてセシリーの元へと急いだ。だって騎士団長はセシリーの顔を知っている。ぐぅ。こうなるのか。結局は。
「さぁ! 君の顔を見せ給え! 我が騎士道の為にも!」
騎士団長のギルバスがセシリーに問い詰めていた。不味い。このままだとばれてしまう。といっても助けない訳にはいかない。
「……待て!」
騎士団長のギルバスがセシリーのフードに手を付けようとした。その時だ。俺の声が木霊した。
「うむ? だれだ?」
ギルバスはセシリーのフードを手掴みしたまま硬直した。だが硬直したのは下半身で上半身は右に傾けるほどに柔らかい。
故にギルバスは上半身を右に傾けると俺と目線が合った。はぁ。これで俺達は無事に出れなくなった訳だ。もう……逃げるのはよそう。
「全く。君って奴は。こうなったら加勢するよ」
俺の隣りにアバンが立った。そう言うとアバンは戦う気のようだった。
「うむ? 戦うつもりか。……この雰囲気。どこかで。は!? 貴様等は!」
ギルバスは俺がフードを被っているから混乱しているようだ。だがすぐに我に返るとすぐさまにセシリーのフードを外した。
「やはりか! おい! 見つけたぞ! こやつ等を絶対に通すな!」
ギルバスはセシリーの顔を確認するとそう言い始めた。言い終わった次の瞬間には兵士達の掛け声が起きた。
「どうして? どうしてこんなことを?」
俺は率直に訊いてみた。どうして俺が狙われているんだ。ただ言えることはこれも魔族達の仕業なのか。
「知らん。だがな。我は聴いた。陛下からな。この世界に災いを振り撒く存在がいると」
くぅ。それが……英雄光とでも言うのか。俺がなにをしたって言うんだ。俺は……俺は……ただ!
「そんなに……そんなに普通の人生を送っちゃあ駄目なのかよ」
このオーラがある限り。俺への偏見は止まらない。どうしてなんだ。どうして。
「うむ? どうした?」
「皆……ここから」
「駄目。アレス」
「いなくなれぇえ! うおおおおおお!」
「駄目ぇえ! アレス!」
へ? セシリー? は! 俺は今までなにを? は! 俺が気付いた時には仲間諸共吹き飛ばしていた。
これは多分だが俺のオーラが暴走したらしい。怒りの余りに膨張してしまったらしい。は! セシリー? アバン?
「待たんか。やはり……陛下の言うことは正しい。貴様は危険人物だ! 我が騎士道精神に乗っ取り、貴様をここで処刑する! 烙印光に罰を!」
へ? なんだよ。それ。もう……偏見を通り越して勘違いじゃないか。俺が……俺が……なにをしたって言うんだよぉお? 負けたくない。死にたくない。殺されたくない。俺は……生きたい!
俺は覚悟を決めるしかなかった。それはもう……それくらいに追い詰められていた。どうしてなんだ? どうしてこうなったんだ? 俺が……俺が……なにを? こうしてギルバスとの戦いが始まるのだった。




