第15話 魔族との激闘
俺は知っている。魔王の配下には魔族がいるということを。
その中でも四天王と呼ばれる魔族達がいた。
なんで知っているのかって? 転生する前の記憶だからだ。
多分だが今、目の前にいるのはその魔族だろう。
「ふむぅ。では……始めようとするか。死のカーニバルを」
四天王の一人が言っていた。とはいえ今は一人しかいないが。
くぅ。やるしかない。ここは全力で挑まないと駄目だ。
俺は未だに付与し続けている身体強化と追い風の加護を使い爆速で四天王の一人に立ち向かった。
「ほう? 人間にしては速いではないか。だが」
なに!? この動きに付いてこれるだと!? ぐぅ。流石は魔族と言ったところか。
うん? 四天王の一人は大きく息を吸った。そして吐いた。はぁ!? 分からない。だが凄まじい息吹きだ。押し返される。
……う。気付いた時には俺は場外に出ていた。なんということだろうか。こうも呆気なく押し返されるなんて。なんて無様なんだ。
「フハハ。お前。本当に子孫か。余りにも弱すぎる。この魔神の息吹きにすら対抗できんとはな。失望したぞ」
く。あれは魔神の息吹きという魔法か。ぐは。なんだか。急に全身から血の気が引いていく。俺は……勝てるのか。
「今だ!」
うん? あ……マフティ様がなにかを仕出かすようだ。ああ。だが駄目だ。今の俺にはマフティ様の勇姿を見る力がない。
「フフン。効かんな。ほほう。虹色の賢者か。久しいな」
なんなんだ。いきなり現れたりして。くぅ。動きたくても動けない。あ……回復するのに時間が掛かりそうだ。
「お前にその名を呼ばれる筋合いはない! まだだ! まだ行くぞ!」
あ。マフティ様だ。なんて凄くかっこいいことを言ったんだ。に比べて俺はなんて軟弱なんだ。所詮。俺に英雄なんて無理なのか。
「マフティ様! 俺も手伝います!」
うん。この声はセルフィだ。うぐ。更に男を上げたな。セルフィは。いや。もしかしたら元々がそうなのかもな。
「こら! ギード! なにボサっとしているの? 手伝いなさい! 私も手伝うから!」
え? アスティも? ……くそ。俺は今、なにをやっているんだ。こんなところで……倒れるなんてださいじゃないか。
「俺様はギード様だ! 憶えておけ! たく。誰なんだよ。こいつは」
駄目だ。皆。そいつから離れろ。じゃないと死ぬぞ。この俺ですら立ち向かえないような強さだぞ。ぐぅ。
「マフティ様。援護します」
セシリー! 確かにセシリーは恩義があるだろうけども!
「分からない。だけどこの学校内で戦うというのなら俺も戦う!」
その声は……ダーディか。
「私達は負けた。だからもう敵じゃない。そうよ。なんだか分からないけれど護らなくちゃ」
アリルまで。
「ぼ、僕だって……やれる!」
馬鹿な! アビィまでもが言っただと?
「ほぉう。これが馴れ合いというものか。……いいだろう。くるがいい」
四天王の一人だと皆は知っているのか。くそ。回復はまだか。間に合え。間に合えー!
「行くぞ! 皆! 一斉攻撃だ!」
マフティ様の声だ。くそ。俺は今場外で倒れている。負った怪我はやばく。すぐには動けない状況だった。
「ほう? くるか」
四天王の一人は余裕そうだ。俺が思うに不敵な笑みを浮かべていそうだ。不味いな。もっと強く立ち向かうべきだった。ぐ。
「やったか!」
ううん? またしてもマフティ様の声だ。この感じからすると仲間全員が自身の持てる攻撃魔法を発動したらしい。大体の予想だが――
「ぐぅ!? 効いてないだと!?」
「嘘!? 全て直撃したのに?」
マフティ様とアリルの声が聞こえてきた。そのお陰で大体の予想は付いた。多分だがこの感じからして四天王の一人に直撃した際に爆発した可能性があった。
「フハハ。我が力の前に平伏すがいい。さぁ。反撃の時だ」
四天王の一人はなにを仕出かすつもりなんだ? このままだと嫌な予感がする。皆! 逃げてくれ!
「馬鹿な!? その魔法は!?」
セルフィがなぜか驚いている。なんだか。凄く嫌な予感がする。早く。早く。動けよ。頼むから。動いてくれぇえ!
「そうだ。さぁ。喰らえ。これが我が魔法技【サーチライトレーザー】だ」
なんだと!? サーチライトレーザーといえば俺の罠技【自動反撃】とそっくりな魔法じゃないのか。不味いぞ。これは。
しかもサーチライトレーザーを発動するにはバリアを張り魔素変換も発動する必要性がある。つまり――
「ぐはぁ!?」
なんだ? マフティ様と重なるようにほぼ同時にやられた時のような声が聞こえた!?
「ふん。他愛もない」
四天王の一人が実に残念そうに言っていた。どうしたんだよ? なぁ? 皆! 俺みたいにならないでくれよ! なぁ!
「あ奴には感謝せねばならんな。呪われし英雄の子孫よ。ここで朽ち果てるがいい」
四天王の一人の目的は俺の死だ。一体。どこからばれたんだ。あ奴ってだれなんだ。一体。くぅ。だがな。俺はここで死ぬ訳にはいかないんだ。見送ってくれたお母さんの為にもな。
「ほぉう。まだ立てるのか。グハハ。面白い。ならば……これは耐えれるかな」
実のところ回復は間に合わなかった。だが俺を信じてくれた仲間の為にも俺は立ち向かわなくっちゃあいけないんだ。はぁ。はぁ。はぁ。こっちも最大出力だ。
「ほう。同じ技を繰り出すというのか。実に面白い。いいだろう。くるがいい」
四天王の一人は人差し指をこちらに向けてなにかを溜め込んでいた。俺も四天王の一人を見つつ人差し指ではなく。手の平を向けた。しかももう一つの手で支えながら。
双方に沈黙が走った。俺も手の平に溜め込んだ。ありったけの出力を加えるつもりだ。これで駄目なら俺は死ぬだろう。だが俺は諦めてはいない。最後の希望が尽きるまで踏ん張るんだ。
「では……さようなら。英雄風情君」
四天王の一人の言葉を皮切りに俺はくると思った。
「うおおおおお!」
俺は武者震いを誤魔化すように声を出した。それはもう喉が裂けるくらいに。
「ふん」
その瞬間だった。四天王の一人の人差し指から細い光線が放たれたのは。
一方の俺はギリギリまで待った。あの細い光線を呑み込むだけの出力はギリギリじゃないと無理と悟ったからだ。
限界を極めた俺はすかさず手の平から細い光線を出した。これはきっとだが人差し指と手の平では出力の差があると思った。だから俺はそれに命を懸けた。
俺と四天王の一人の光線がぶつかり合った。拮抗している。ま、不味い。このままだと拮抗の末に消え失せてしまう。
「うおおおおお!」
俺は再び声を出した。今度は武者震いを誤魔化す為ではない。ただ気合いを入れたかった。だがそれが幸をそうしたのか。それとも相手が油断していたのか。分からないが敵の光線を押し返し始めた。
「なに!? くぅ! 油断したせいか! ここで負ける訳には!」
俺の全力がどんどん敵の光線を押し返していた。よし。これならいけるぞ。いくんだ。どこまでも。そして勝つんだ。だってこいつはお父さんの仇なのだから。
「俺の! 勝ちだぁあ!」
「ぐぅおおおおおお!?」
四天王の一人は叫んでいた。俺が虚ろ状態から気付いた時には四天王の一人はいなくなっていた。憶測だが逃げた可能性が高い。だがあれだけの出力だ。ただでは済んでいないだろう。
だがこれで分かった。俺には安息の地はないと。もしまたあのような奴らが襲撃にきたら俺は死ぬだろう。それどころか。仲間を危険に導き兼ねない。ぐぅ。これから俺はどうすればいいんだろうか。




