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魔刃少女血風録  作者: アワユキ
終章『魔刃と魔王』
16/17

三幕

 鎧が光となって消え、魔法少女としての衣装もまた消えた。変身道具である朝景を破壊され、弓狩は元の姿へと戻ってしまう。


「う……」


 体から力が抜け、思わず膝を突く。傷を受けすぎたせいか、それとも魔力を失いすぎたせいか、体が重い。折れた朝景を使い、何とか上体を支える。


「クー……ユ、カリ……」


 クーもまた、変身道具から弾き出され倒れ込む。弓狩の名を力無く呟くと、そのまま気を失った。


「――勝負あったな」


 膝を突く弓狩に剣を突き付け、魔王が言い放つ。刀は折れ、変身も出来ない。おまけに体はボロボロだ。最早勝ち目など何処にもないだろう。


「……弓狩。流石に俺も、実の孫の首を取るのは気が進まねえ。命は見逃してやる。そっちの嬢ちゃんを連れて、とっとと逃げな」


 それを聞いてぴくり、と弓狩の肩が震えた。


(……弓狩、もう諦めたらどうだ? お前は十分に戦った。ここまでよくやったではないか)


 心の中に、声が響く。自分自身の声……いや、違う。

 感じる違和感。これは、試練の時聞いた影の声だ。


(魔王が折角見逃してくれると言うのだ。それに甘えれば良い)

「ふざ、けるな……」


 朝景を杖に、立ち上がる。だがその脚は震え、立つのも覚束ない状態だ。


「敵からの情けなど要るものか! 私は、私の命はまだ、尽きてはいないぞ!」


 言って、折れた刀を構える。ふらふらになりながらも、その瞳は未だに光を失っていない。


「くくく……はっはっはっはっは!! 流石だ弓狩、それでこそ武士(もののふ)! それでこそ俺の孫、俺の弟子! ――だが! その有様でなんとする! 刀折れ、最早立つのもやっとのお前が!!」


 確かに、魔王の言う通りだ。戦う力などもう残されてはいない。


(そうだ、勝ち目がないどころか勝負にすらならない。武器もなく、変身する事すら出来ないのではな……。もう諦めろ、弓狩)

「うるさい……」


 朝景の柄を強く強く、握り締める。


「折れた刀でも、貴様の喉笛を掻き切るには事足りる……。変身出来なくとも、一太刀浴びせるくらいはやって見せよう!」

「ったく、誰に似たのか諦めの悪い事だ」


 呆れた様な事を言いながらも、魔王はやけに嬉しそうだ。


(どうしてもやるのか? そこまでして戦う意味が、本当にあるのか?)

「私は……二度と、逃げたくない、負けたくない! ここで逃げたら、脅威に晒されている人々を、私の信じる正義を……そして何より、剣士としての私自身を裏切る事になってしまう! 今、この時……一番戦わなくてはならないこの時に、投げ出す事など、出来るものか!!」

(……それでこそ私の選んだ相手だ)

「その意気や良し。――だが俺も、黙って首をやる訳にはいかねえな」


 いくら威勢の良い事を言おうと、魔王が自ら首を差し出してくれる筈もない。


(弓狩、分かっているな? 勝つ為に、更なる強さの為に必要な事……)

「――只々、全力で打ち込むのみ」

「はは、全力か。さっきその全力の打ち込みが通じなかったのに、そんなボロボロの状態で勝つつもりか?」


 一歩、魔王が踏み出す。


「生きてさえいれば、いくらでも強くなれたろうに……。だが、死ぬまで止まらねえっつうならしょうがねえ。――剣士として、ここで死ね」


 刃が走った。弓狩の首を刎ねんと、一切の容赦もない鋭い一閃が迫る。


「むっ……!」


 金属音が響く。折れた朝景で、首元を狙った刃を止めていた。魔力の籠もっていない刀など、簡単に砕き折れる筈だ。しかし、半ばで折れたその刀身は、しっかりと魔王の剣を受け止めた。

 気付くと、弓狩の体から魔力が闘気となって立ち上っている。既に満身創痍の筈の体にまだこれだけの力が残されていたのか、と魔王が瞠目する。


(相手は貴様の遥かに上を行く相手。それだけの条理を覆そうというのだ。全力――それだけでは到底足りん)

「足りない、ならば……」

(どうする?)

「全力を尽くし、それでもまだ足りぬなら、この身を、命を、魂を燃やす。私の全てを懸けて、限界でも何でも超えてやる……!」

「何だ……!?」


 弓狩から異様な凄みを感じ、魔王が距離を取った。彼女の体を覆う魔力が、燃え上がる様に高まっていく。


(その意気だ。私も今一度だけ、力を貸そう。勝てよ、弓狩……)


 頭の中に、新たな呪文が浮かび上がる。浮かんだそれを、そのまま言葉にしていく。


「我は魔を狩る魔の刃、更なる魔道を往かんが為に、命燃やし魂燃やし、魔という魔、闇という闇焼き払わん! ――変身!!」


 折れた朝景が、光の粒子へと分解されていく。地面に突き立った切っ先もまた同じ様に光に変わり、それらが弓狩の体を取り巻き、次々と吸い込まれていく。

 光が、爆発する。


「魔法少女・魔侍狩弓狩・天衣!!」


 光の中から現れた弓狩の姿は、いつもの黒い衣装でもなく、甲冑で鎧われてもいない。その身に纏うのは白く輝く、羽の様に軽やかな衣だ。そしてその手には、闇を塗り込めた様な漆黒の刀身をした刀が握られている。

 立ち上る魔力は更に高まり、陽炎の様に大気を歪ませている。


「……仕切り直しだ。今度こそ覚悟しろ、魔王!」

「ははははは! 全く全く、本当に楽しませてくれるぜ!!」


 弓狩が踏み込む。その衝撃で石の床に亀裂が走った。


「奮ッ!」

「おおっ!」


 速度を乗せたまま、袈裟懸けに斬り込む。対する魔王も弓狩の肩口目掛けて刃を振り下ろした。

 刃と刃が激しくぶつかり合い、甲高い金属音が響く。


「ぐっ……!」


 魔王が苦悶の声を上げた。打ち合った衝撃で両腕に痺れが走る。

 重い。先程までより遥かに。


「おおおぉぉ!!」

「うらあぁぁ!!」


 更に切り結ぶ。苛烈な斬撃の応酬。


「ちぃぃ!」


 打ち合う度に腕が痺れ、甚大な負荷に宝剣の刀身が悲鳴を上げる。


「征ッッ!!」

「うおっ!」


 弓狩の真横へ薙ぎ払う一撃。受け損ない、体が横に流れる。


「そこだ!」


 追撃の一太刀。腕を狙い、逆向きに刃が返される。

 鋭い一閃が魔王の腕を切り裂く。しかしギリギリで魔王が身を引き、切断までには至らなかった。ぱっくりと割れた傷口から血が滴る。


「やりやがる! さっきまでと同じ人間とは思えねえ動きだな」

「浅いか。だが……ぐ……がっは!」


 言葉の途中で突如、弓狩が血を吐き出した。零れ落ちた血液が床に赤い模様を描く。


「……くく、そりゃそうだ。急にそんな無茶苦茶な力を引き出して、ただで済む筈がねえ」


 自身の限界を超えた力。強大過ぎる魔力が、弓狩の体を蝕んでいた。


「ふん、貴様の首を取るまでは持つ」


 口の端についた血を拭いながら、刀を構えなおす。


「言うじゃねえか……そう易々と、この首取れると思うなよ」

「さっさと終わらせてやる! 散るは花びら、散るは命……魔導剣! 『桜花』!!」


 速い。先程よりも数段。漆黒の刃が、まるで四方から同時に襲い掛かるかの様に錯覚される程に。無数の剣閃が黒い嵐となって、魔王を押し包む。


「破ァァァ!!」

「ぐ……おおぉ!!」


 自身を呑み込まんとする刃の嵐に、魔王が必死に抗う。

 凄まじい連撃を刃で受け、逸らし、身を躱す。

 それでも完全には防ぎ切れない。頬に、脇腹に、脚に、赤い線が刻まれていく。

 徐々に、魔王の動きに陰りが見え始める。その防御に僅かだが、しかし致命的な隙が生じた。


「――取った!」

「がぁっ!」


 深々と、厚い胸板に黒い刀身が埋め込まれる。生じた隙を見逃さず放たれた刺突が見事に魔王を貫いていた。


「……フンッ!!」

「な……!」


 弓狩の頭の中に火花が散る。魔王が至近距離から頭突きを食らわせたのだ。衝撃に思わず後退ってしまう。


「げほっ! ごふっ! いっ……てえなあ糞……」


 胸の傷と口から血を流しながら、魔王が呟く。


「くっ……まだ立っていられるのか……!」

「……これは使うまいと思ってたのによぉ。――力を寄越せ! 『アウローラ』!!」


 魔王が自らの剣を掲げ、その名を叫んだ。


「往くは覇道、斬るは万象、天地一切我に敵無し! ――装身!!」


 そのまま高らかに呪文を唱える。宝剣から光が溢れ出し、魔王の体を包み込んだ。


 光が晴れ、現れた姿。全身は鈍く輝く黒い甲冑で覆われ、ボロボロになっていた外套は真新しく生まれ変わっている。西洋風の甲冑であるが、兜は無く頭部はそのまま剥き出しになっている。


「……これが本気の本気だ。真の魔王の力、存分に味わえや!!」


 ただでさえ強大だった魔力が更に膨れ上がった。重圧に一瞬、気圧される。


「寄せる波返す波、全てが泡沫全てが永劫!」


 呪文に応える様に、魔王の剣に魔力が集まっていく。研ぎ澄まされた魔力が、激しく光を放つ。


「魔導剣! 『劫波』!!」


 呪文の完成と共に勢い良く剣を振り下ろす。切っ先が宙に弧を描き、その軌跡が巨大な魔力の刃となって放たれた。床を切り裂きながら、巨大な三日月型の刃が弓狩へと迫る。


「ぐうぅっ……!」


 弓狩は正面からこれを受け止めた。漆黒の刃と輝く魔力の刃が鬩ぎ合う。


「おおぉ!!」


 雄叫びと共に、魔力の刃を弾き飛ばす。明後日の方向へ弾かれた刃は広間の壁を切り裂き、更にそのまま城の壁を全て貫通。島の外の結界へ衝突し、ようやく消え去った。


「これを止めるか! だが、まだまだぁ!!」


 魔王が飛び込んでくる。突撃の勢いを乗せた強烈な斬撃。


「りゃぁぁ!!」


 強大な魔力の籠められた刃と刃が激しくぶつかり合い、衝撃が大気を揺らす。


「おらぁぁ!」

「うおおぉ!」


 更に打ち合う。二人の足元の床に亀裂が走る。凄まじい力と力の衝突。

 魔王の鋭い突きが迫る。弓狩は後ろへ跳躍して回避。

 着地点へ追い縋り、追撃の一閃。体を大きく屈めて躱す。目標を失った刃が弓狩の背後にあった柱を両断。柱は轟音を立てて崩れ落ちた。

 低い体勢から懐に飛び込む様に反撃の突き。顔面を狙ったこれを首を反らして何とか躱す。


「魔導無刀! 『剛箭』!!」

「魔導無刀! 『巌』!!」


 刃の振るえぬ至近距離。魔力を帯びた拳と拳が打ち合わされる。人間の肉体が出す音とは思えぬ爆音が広間に響いた。

 一拍置いて、互いの拳から血がしぶく。


「くっ!」


 仕切り直しとばかりに、両者が同時に跳び退った。


「やるな、弓狩! 本気の俺と渡り合うとはよ! ははは!」


 命を削る様な死闘の最中だというのに、この期に及んで魔王は戦いを楽しんでいる。


「うるさい! その減らず口、黙らせてやる!」


 笑い声を遮る様に弓狩が叫ぶ。刀を鞘に納め、居合の構えを取った。


「鞘に満ちるは魔の力。抜き放たれるは稲光……」


 鞘の内に、膨大な魔力が籠められていく。僅かに切られた鯉口から紫電が迸り、辺りに稲妻が走る。


「刃が奔るその間隙。寸刻瞬刻、光陰切り裂く……」


 応える様に、魔王も呪文を唱え始める。宝剣に荒れ狂う魔力が注ぎ込まれ、刀身が燦然と輝きを放つ。


「魔導剣! 『雷迅』!!」

「魔導剣! 『瞬き』!!」


 雷すら超える速さの一閃と、光に迫る速さの一閃が交わった。

 その瞬間、轟音と閃光が広間を埋め尽くす。


「ぐあっ!」

「ぬうっ!」


 互いに必殺を期した魔導剣もほぼ互角。ぶつかり合った巨大な力の反動で、両者とも大きく弾き飛ばされた。


「これも受け切るか!」

「ふん、この程度……ぐっ、げほっ!」

「おいおいだいじょう……ごほっ、がほっ!」


 二人揃って咳き込み、血を吐き出す。限界を超えた力を行使し続ける弓狩と、立っていられるのが不思議な程の傷を負っている魔王。これ以上戦いが長引けば、どちらの命も危うい。


「はあ、はあ……。はは、このまま行きゃあ、仲良くお陀仏かもな?」

「う……ふう、はあ……あの世へ行くのは、貴様だけだ!」


 血を拭い、再び構え直す。空気が張り詰め、互いに踏み込もうとしたその瞬間。


「ゆ、かりぃぃぃ!!」


 叫び声が響いた。気を失っていたリリカが、叫びと共に何かを弓狩目掛けて投げ付ける。


「リリカ!? お前……」


 飛んで来た何かを受け止め、手の中のそれを見る。リリカの変身道具……ロザリオだ。先程受けた一撃のせいか、表面に僅かに傷が見える。


「そのジジイに出来るんなら、あんたにだって出来るでしょ! 力が足りないって言うなら、私の分まで持って行きなさいよ!!」


 満身創痍のリリカが、弓狩を叱咤する。改めて、ロザリオを見つめた。その内に息づくクリスタルの力を感じる。


「……分かった。やってみよう!」


 ロザリオを強く握り締め、念じる。


「力を貸せ! 『ティターニア』!! 力を! 誰にも負けない力を私に!」


 手の中から光が溢れ出し、弓狩の体に吸い込まれていく。


「ぐ……あああぁぁ!!」


 苦悶の声が上がる。既に限界以上に張り詰めた器に更に力を注ごうというのだ。いくら弓狩でも耐えられはしまい。


「ユカリー!」

「ユカリン!」


 何時の間にか意識を取り戻した妖精達が、苦しむ弓狩に向かって飛んで来る。


「「『憑依融合』!!」」


 クーは刀へ、タミンはロザリオへ、それぞれが光となって吸い込まれた。


『クー達が補助するから』

『ユカリンは思いっきり、やっちゃってくださいミン!』

「お前達……! ああ、任せろ!」


 二人が魔力の制御を補助をする事で負担が軽くなり、ティターニアから引き出された力が馴染んでくる。

 弓狩の背から一瞬光が溢れ、そこから虹色に透き通る翅が生えた。漆黒の刃の輪郭が曖昧になっていき、黒く揺らめく炎の様な不確かな姿へと変わる。溢れんばかりの魔力を注がれ、形を保てなくなったのだ。


「くっ……! 待たせたな、魔王……」


 額から汗が滴る。妖精達の助けを得たといっても、限界以上の力を纏っているのに変わりはない。体が悲鳴を上げている。


「おう、楽しい勝負の為ならいくらでも待ってやるぜ。……とはいえ、お互いそれ程時間はかけてられねえと思うがな」

「……次で、最後だ。次の一撃、私の全身全霊……いや、私達四人の全身全霊、全てを籠めて叩き込んでやる。正面から、受け止めて見せろ!」

「がっはっは! 言うじゃねえか! いいぜ! 俺も、俺の持てる力の全てで以って、お前を打ち倒してやる!」


 改めて向かい合い、構え合う。殺気の籠もった視線が交差する。二人の魔力が益々高められ、練り上げられていく。この一撃、最後の一撃に、全てをぶつける為に。


「闇に蠢く影あらば、影を弑する影もあり……」


 構えられた黒い炎の刀身が、更なる魔力を得て燃え上がる様に膨らんでいく。


「天地を染めるその光、刃の向かうその終わり……」


 煌びやかな宝剣の刀身が、更なる魔力を受けて眩く光り輝く。


「魔の影屠るその刃、深き闇よりなお暗く、魔という魔のもの食い尽くす!」


 濃密な闇を塗り込めた様な黒き炎が、対敵食らわんと益々猛る。


「果ての光果てる命、武の極み刃の極み、森羅万象打ち砕く!」


 透き通る刀身から発せられる光が、広間を埋め尽くさんばかりに強まる。


「魔導剣! 『魔刃』!!!」

「魔導剣! 『極光』!!!」


 弓狩が踏み込みと共に漆黒の刃を、魔王が白光の刃を振り下ろした。

 これまでにない絶大な力と力の激突。黒と白の刃が鬩ぎ合い、二人を中心に魔力の嵐が吹き荒れる。


「うおおおぉぉ!!」

「覇ぁぁぁぁ!!」


 光を呑み込まんとする黒の刃へ、闇を焼き尽くさんとする白の刃へ、全身の力が、全霊の魔力が、籠められる。


「おおおおぉぁ!!!」

「あああぁぁぁ!!!」


 みしり、と罅が入る。この世ならざる物質で出来た宝剣の刀身が、大き過ぎる負荷に遂に限界を迎えた。

 光が砕ける。白が呑まれる。白の刃を折り砕いた黒の刃が、魔王の体を袈裟懸けに切り裂いた。

 辺りを照らしていた鮮烈な光が霧散する。魔王がゆっくりと、仰向けに倒れ込んだ。その体を包み込んでいた鎧も、光と消えていく。


「見……事……」


 ごぼり、と魔王の口から大量の血が流れ出る。胴に深々と刻まれた刀傷は、明らかに致命傷だ。

 弓狩が倒れ込んだ魔王へ一歩近づき、静かな目でその顔を見下ろす。


「全く、人生ってやつはおもしれえなあ……。まさか、お前に負ける日が、来るとはな……」


 胴と口から夥しい量の血を流しながら、苦しそうに魔王が呟く。


「まだまだ、ガキだと、思ってたのに、よぉ……ごほっ、ごほっ!」


 弓狩は黙って、その言葉に耳を傾けている。


「夢、半ばで散る……か……。だが、弟子に……孫に超えられて、終わるってのも悪く……ねえ……」


 体の末端が、青白い炎を上げて燃え始める。


「……あばよ、弓狩……地獄で、待ってるぜ……」

「……すいません。私は、極楽に行くつもりですから」

「はは、そりゃ、そうだ……じゃあ、今度こそ、今生の、別れ……だ……」

「はい……さようなら、お祖父ちゃん……」


 全身が炎に包まれ、やがて灰となり、消え去った。

 魔王は、弓狩の祖父であった男は、今度こそ完全に、この世から消え去ったのだ。


----------


 戦いの終わり、勝利の後。栄誉なく、称賛なく、それでもなお、続くもの。

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