第6話 窓の向こうの見張り番
リビングの低い窓はすみが座るとちょうど顔の高さに外が見える。むぎが伏せると、むぎの顔もちょうど同じ高さになる。
秋の昼下がり、すみは窓辺に座って外を見ていた。窓は閉まっていて、ガラスに鼻を近づけるとひんやりする。いつのまにかむぎも隣に来て伏せていた。
向かいの家の塀の上に灰色の鳥が下りてきた。このところ毎日この時間になるとやってくる鳥だ。すみのひげが前へ倒れた。
「また来た」
すみが言うと、隣でむぎが鼻を鳴らした。
「来たな。今日はちょっと早い」
「むぎも知ってるの?」
「毎日見てるからな」
すみは少し驚いた。むぎがあの鳥を見ているところなど、一度も見たことがなかった。
「いつもあそこにいるよね」
「いつもあそこを通るな」
すみの耳がぴくりと動いた。通る、というのはどういうことだろう。
「ほら、止まった」
「止まったな。なんか嗅いでる」
鳥は塀の上で首をかしげて、羽をつくろっていた。何かを嗅いでいるようには見えなかった。
「歩いてる」
むぎが言った。鳥はじっと止まっている。
「歩いてないよ」
「歩いてるだろ。ほら、角を曲がった」
その瞬間、鳥が塀から飛び立った。
「飛んだ!」
「飛んでない。曲がったんだ」
すみはむぎを見た。むぎもすみを見た。二匹とも、しばらく黙っていた。
「……むぎ、なに見てたの?」
「赤い帽子の人とその犬。毎日あの道を通るんだ。あの犬、電柱のところでいつも止まるんだぞ」
「ぼくは、鳥」
「鳥? どこに」
「もう飛んでった。塀の上にいたの。灰色で、首のところだけ光ると緑になるの」
むぎは塀の上をじっと見た。そこにはもう、何もいなかった。
「明日も来るか?」
「たぶん。この時間に」
「赤い帽子の人も、たぶん来る」
すみは前足をそろえ直した。赤い帽子の人がどんな顔をしているのか、すみは知らない。鳥の首が緑に光るところも今度むぎに見せてやろうと思った。
*
次の日の昼下がり、すみが窓辺へ行くと、むぎはもう先に伏せていた。すみが隣に座ると、むぎは外を見たまま尻尾を一回だけ揺らした。
「今日は何が見える?」
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