第38話 今日はひとりで寝たい
こたつ布団の裾が持ち上がって、むぎの頭が出てきた。
むぎは尻尾まで布団から抜け出すと、大きく伸びをして、敷物の上にどさりと横になった。舌が少し出ている。
すみは窓辺から下りて、むぎのそばへ行った。むぎの体からは、こたつの中の匂いと、乾いた熱がまだ立ちのぼっていた。
すみは、その背中にくっついて座った。
むぎが、ずりずりと前へずれた。すみとのあいだに、猫一匹ぶんの隙間ができる。
「暑い」
むぎはそれだけ言って、目を閉じた。
すみは隙間を見た。それから、むぎの背中を見た。尻尾の先で、床を一回だけ叩く。
すみは立ち上がって、敷物の反対の端まで行った。敷物が終わって、床の板が少しのぞいているところだ。横になって前足を伸ばすと、肉球がひやりとした板に触れた。
悪くなかった。
すみは後ろ足も伸ばした。体が、どこまでも長くなる。窓からの光が、ちょうど腹のあたりに落ちていた。むぎにくっついているときは、こんなふうには伸びられない。
すみは目を閉じた。
遠くで、あおいが紙をめくる音がする。窓の外で、どこかの犬が一回だけ吠えた。腹の上の光が、少しずつ脚のほうへずれていった。
足音で、目が覚めた。
むぎが、敷物のこちら側へ歩いてきていた。舌は、もうしまっている。むぎはすみの少し手前で止まると、くるりと回って横になった。すみの後ろ足の先と、むぎの背中のあいだに、前足一本ぶんくらいの隙間があった。
「暑いんじゃなかったの」
「今は、こっちがいい」
すみは返事をしなかった。後ろ足は、伸ばしたままにしておいた。
むぎの寝息が聞こえはじめた。すみも、もう一度目を閉じた。床の板は、まだ少しひやりとしていた。
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