第37話 新しい寝床は、そちらです
寝床が、二つ並んでいた。
ひとつは、むぎの新しい寝床だ。前のものより平たくて広く、むぎが体を思いきり伸ばしても、まだ縁まで余る。前の寝床は、すっかりぺしゃんこになったからと、あおいが洗ってしまいこんだ。
もうひとつは、すみの新しい寝床だった。小さくて丸く、縁が高い。お椀のような形をしている。
「はい。こっちがむぎで、こっちがすみ。仲良く使ってね」
あおいは二つを壁ぎわに並べると、満足そうに台所へ行ってしまった。
むぎは自分の寝床の匂いを嗅いだ。新しい布の匂いがする。それから、隣のお椀を嗅いだ。こっちも新しい布の匂いだ。けれど縁が高いぶん、中に匂いがこもっている。中は、どんな具合なのだろう。
むぎが顔を上げると、すみはもう、むぎの寝床のまんなかに座っていた。
「そっちは俺のだぞ」
「広い」
すみはそれだけ言って、むぎの寝床の上で一周した。
むぎは、すみのお椀を見下ろした。
前足を一本、縁の内側へ入れてみる。底は柔らかくて、ふかふかしていた。もう一本入れると、お椀が少し傾いて、縁が胸に当たった。この先、体の残りをどこに入れればいいのか分からない。
むぎは、前足を二本とも抜いた。お椀は、元の丸い形に戻った。
隣を見ると、すみは広い寝床の縁に背中をつけて丸くなっていた。少しすると立ち上がって、別の縁へ移る。そこでも丸くなって、また立ち上がる。広い寝床のまんなかは、ずっと空いたままだった。
やがて、すみは寝床から下りた。お椀の縁をまたいで中へ入り、くるりと回る。すみの体は、お椀にぴったり収まった。縁の上には、耳の先と、背中の黒い山だけがのぞいている。
むぎも、自分の寝床に戻った。体を思いきり伸ばしても、どこにも何も当たらない。
むぎはしばらく、そのまま横になっていた。
それから、首を少しずらした。顎が、ちょうど隣のお椀の縁に届いた。乗せてみると、縁の布はふっくらしていて、顎を置くのにちょうどいい高さだった。
お椀の中で、すみの耳がこちらを向いた。
「そこ、ぼくの」
「入ってないぞ」
むぎは顎を縁に乗せたまま、目を閉じた。
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