第39話 それも持ってくるの?
むぎがボールをくわえて戻ってくると、なつは両手を広げて迎えた。
「持ってきてくれたの? えらーい!」
なつは敷物にあぐらをかいて座っていた。むぎはその膝の上に、ボールをぽとりと落とした。
「ありがとう、むぎ。ほんとに天才」
なつの手が、むぎの耳の後ろをくしゃくしゃにした。
むぎは、膝の上のボールを見た。持ってきたら、褒められた。
むぎは寝床へ走った。耳の垂れたぬいぐるみをくわえて、戻ってくる。
「え、それも? くれるの?」
ぬいぐるみが、ボールの隣に並んだ。なつの声が、また高くなった。
むぎは次にロープのおもちゃを運び、その次に、窓辺に落ちていたすみの布のねずみを運んだ。なつの膝は、だんだんにぎやかになっていった。
ねずみを置いて顔を上げると、すみがなつの横に来ていた。すみがなつの膝にかけた片方の前足は、ロープの端に乗っていた。
すみの前足が、ぬいぐるみをちょいと押した。ぬいぐるみが、膝からころんと転がり落ちた。膝の上に、ぽっかり隙間ができる。すみのもう片方の前足が、床から浮いた。
むぎはすぐにぬいぐるみをくわえて、その隙間へ戻した。
すみの前足は、浮いたまま止まった。
「それ、もういいんじゃない」
「まだ遊べるぞ」
むぎは鼻で、ぬいぐるみの位置を少し直した。
「あはは、むぎ、ありがとう。全部くれるの?」
なつは笑いながら、膝の上のおもちゃを一つずつ撫でた。それから、むぎの頭も撫でた。
むぎは、また走った。
寝床には、もう何も残っていなかった。むぎは寝床の中を嗅ぎまわり、敷物の端を嗅ぎ、こたつ布団の裾に鼻を突っこんだ。
布団の奥から、靴下が片方出てきた。あおいの匂いがする。
むぎはそれをくわえて、意気揚々と戻った。
なつの膝の上では、ボールとぬいぐるみとロープとねずみが、小さな山になっていた。すみはなつの横に座って、その山を見ていた。
むぎは、山のてっぺんに靴下を乗せた。
「それも持ってくるの?」
すみが言った。
なつは笑い転げながら、台所のほうへ声を上げた。
「お姉ちゃーん、靴下来たよ!」
「あ、それ探してたの」
なつの膝は、もう、どこも見えなかった。
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