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犬と猫の可愛い戦争~なお、人間は気づいていない。~  作者: 白川 透


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第24話 明日も、俺がいちばんだ

 部屋の明かりが小さくなると、すみとむぎは毛布の上に集まった。今夜は、すみが先に毛布のまんなかを取った。むぎはその横でくるりと二回まわってから伏せた。


「今日はな、俺、朝も散歩のあともごはんのあとも撫でられた」

「ぼく、膝に乗った」

「俺は耳の後ろもやってもらった」

「ぼくはお手した」

「俺だってした。お手は俺のほうが先だ」

「ぼくのほうが、長く乗せてた」


 むぎは鼻を鳴らした。すみもひげを前へ出した。毛布の上は温かくて、言い合っているうちに、むぎの声はだんだん間延びしていった。


「それから、な……俺は……」


 むぎのまぶたがゆっくり下りていく。もう寝てしまうのかとすみが顔をのぞきこんだとき、むぎが急に目を開けた。


「明日も、俺がいちばんだ」


 それだけ言うと、むぎはまた目を閉じ、今度は本当に寝息を立てはじめた。


 すみはむぎの寝顔を見ていた。言いたいことはまだあった。けれど、相手が寝てしまっては言い合いにならない。


 明日になれば分かる。


 すみは毛布のまんなかで丸くなった。


*


 ピピピという音で、すみは目を開けた。


 部屋はまだ薄暗かった。奥の部屋からあおいが寝返りを打つ気配がする。でも、起きてはこない。一回目のピピピではあおいは起きない。むぎに教わったことだ。


 隣でむぎはまだ眠っていた。横向きになって前足を少し曲げ、口の端を開けている。むぎの脇腹が寝息に合わせてかすかに上下していた。


 二回目のピピピが鳴った。


 奥の部屋で布団の動く音がした。あおいが起きる。もうすぐ、あの扉が開く。


 いま行けば、扉の前にいちばんに座れる。あおいが最初に撫でるのはすみになる。むぎは寝ているのだから、何も言えない。


 すみは毛布から一歩、前足を下ろした。


 それから、振り向いた。


 すみはむぎの鼻先に顔を近づけた。ひげが鼻に触れても起きないので、前足でむぎの頬をちょんと押した。


「むぎ。起きて。あおい、起きた」


 むぎの耳がぴくりと動いた。次の瞬間、むぎの目がぱちりと開いた。


「あおい!」


 むぎは跳ね起きた。毛布を蹴散らし、すみの横をすり抜けて廊下へ駆けだしていった。


「……ちょっと!」


 すみは毛布の上に取り残された。むぎの爪の音が廊下の奥へ遠ざかっていく。


「起こしたのはぼくなのに!」


 すみは毛布を飛び出した。廊下の先で、むぎの茶色い背中が揺れている。尻尾が、右へ左へ、思いきり振れている。


 その向こうで、奥の部屋の扉が開いた。眠そうな顔のあおいが、こちらを見て笑いながらしゃがみこむのが見えた。


 すみはむぎの背中を追って走った。

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