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犬と猫の可愛い戦争~なお、人間は気づいていない。~  作者: 白川 透


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第20話 今日はそばにいて

 その日、あおいは朝から押し入れを開けて、厚い毛布を一枚出してきた。


「寒くなってきたからね。ふたりの分」


 毛布は、敷物の上の窓に近いところへ広げられた。すみは前足でそっと踏んでみた。沈む。柔らかい。


 けれど、すみはすぐに毛布から下りた。むぎが寝床から起き上がって台所のほうへ歩いていったからだ。


 すみは、ついていった。


 むぎが台所の入口で振り返った。


「なんだ、すみ。腹が減ったのか?」

「ううん」


 むぎは台所をひと回りしてから窓辺へ行った。すみもついていった。むぎがソファの横で立ち止まると、すみもソファの横で立ち止まった。


 むぎが首をかしげてすみを見た。


「すみ、ボールか? ロープか?」

「ううん」

「じゃあ、窓辺がいいのか? それとも、そこの毛布か?」

「ううん」


 すみは前足をそろえて座った。


「今日は、そばにいる」


 むぎはしばらくすみの顔を見ていた。それから「ふうん」と鼻を鳴らした。


「そうか」


 むぎは毛布のところまで歩いていき、くるりと一周して、まんなかに伏せた。すみは毛布の端に上がって、むぎの横に座った。むぎの背中は温かそうだった。すみは体を少し傾けてその背中に寄りかかろうとした。


 むぎが、立ち上がった。


 すみの体は何もないところへゆっくり傾いていった。前足を踏ん張って、すみは座り直した。


「水」


 むぎはそれだけ言って、台所のほうへ歩いていった。


 すみはむぎの背中を見送った。それからむぎの伏せていた場所を見た。毛布のまんなかが、むぎの形にくぼんでいてまだ温かかった。


 すみはそのくぼみに入って、体を伸ばした。前足を前へ、後ろ足を後ろへ、尻尾もまっすぐに。毛布のまんなかはほとんどすみのものになった。


 台所からぴちゃぴちゃと水を飲む音が聞こえて、やがて止まった。爪の音が近づいてくる。


 すみは顔を上げた。むぎが毛布の前で立ち止まっていた。


 すみは少しだけ体をずらした。前足をほんの少し引っこめて、尻尾を体のほうへ寄せる。むぎがどうにか入れるくらいの隙間ができた。


 むぎはその隙間に入り、くるりと回って伏せた。毛布が沈んで、すみの体がむぎのほうへ少し傾いた。


 すみは目を閉じた。後ろ足は、まだ毛布の端まで伸ばしたままだった。

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