第19話 寝顔は反則だ
昼下がり、ソファの端ですみが眠っていた。前足を顔の上に乗せて口の端が少しだけ開いている。
その前に、あおいがしゃがみこんでいた。
「……すみ、寝顔かわいすぎない?」
とても小さな声だった。あおいはそっと手を伸ばしかけて、引っこめた。光る板をすみのほうへ向けてまた下ろし、しばらくただじっと眺めていた。
むぎは寝床から、その様子を見ていた。
すみは何もしていない。お座りもしていないし、お手もしていないし、箱にも入っていない。寝ているだけだ。寝ているだけであおいがしゃがみ、小さな声で褒めてずっと見ている。
反則だ、とむぎは思った。けれど寝るのなら俺にもできる。
むぎは寝床の上でいちばんいい寝方を考えた。丸くなるか、横になるか。少し迷ってから横向きに寝そべり、前足を軽く曲げた。顔はあおいから見える向きにした。
目を閉じた。
何も聞こえなかった。あおいの声も、足音もしない。
見ているだろうか。
むぎは片目をほんの少しだけ開けた。
あおいと目が合った。
むぎは急いで目を閉じた。尻尾が一回勝手に寝床を叩いた。むぎは尻尾に力を入れて、じっとした。
ソファのほうであおいが小さく息をもらしたような音がした。笑ったのだろうか。むぎは目を閉じたまま、耳を澄ませた。
もう少し待てば、あおいがこっちへ来るかもしれない。むぎは鼻からゆっくり息を吐いた。寝床は温かく、窓から入る光がちょうど背中に当たっている。
来るかもしれない。来たら、目を開けないで、そのまま撫でてもらう。そのまま……。
*
むぎが目を開けると窓の外は薄暗くなっていた。
頭を上げると、あおいは机の前で板をかたかた鳴らしていた。ソファの端では、すみが伸びをしているところだった。
むぎは寝床から出て、すみのところへ行った。
「なあ、すみ」
「なに」
「俺、さっき寝てたとき……褒められてたか?」
すみは大きなあくびをしてから、むぎを見た。
「知らない。ぼくも寝てたもん」
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