↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬と猫の可愛い戦争~なお、人間は気づいていない。~  作者: 白川 透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/22

第11話 この箱の使い方

 玄関から運ばれてきた箱はあおいが中身を出したあと、敷物の上に置きっぱなしになった。


 すみは箱の縁に前足をかけて、中をのぞいた。紙の匂いと外の匂いがする。底にはくしゃくしゃの紙が一枚残っていた。


 すみは箱の中へ下りた。左右の壁がちょうど体に触れる。紙の上で一度向きを変えて、すっぽりと座った。


「あっ」


 振り向くとあおいがしゃがんでこちらを見ていた。


「すみ、入ってる。かわいい……。ちょうどいい大きさだったんだ」


 あおいの声はいつもより高くて、少し震えていた。すみは箱の中で前足をそろえた。よく分からないが、これはいいことらしい。


 足音がして、むぎが来た。むぎは箱の匂いを嗅ぎ、すみの顔を見て、あおいの顔を見た。


「それ、いいのか?」

「いいよ。ぼくの」


 むぎは箱の縁に前足をかけ、片方の前足を箱の中へ入れた。もう片方も入れた。箱がみしりと鳴って、少し傾いた。


「狭い」

「狭いよ。ぼくが入ってるもん」


 むぎは前足を箱に入れたまま後ろ足をどうするか迷うように、その場で足踏みをした。あおいが笑いだした。


「むぎ、むぎ、無理だって。箱が壊れちゃう」


 むぎは前足を抜いて、箱の横にお座りをした。尻尾がゆっくり床をなでた。


 すみは箱から出た。あおいの声が少し残念そうに「あー」と下がった。すみは箱の周りを一周して、また入った。


「おかえり」


 あおいの声がまた上がった。


 すみはもう一度出て、また入った。何度か繰り返すうちにあおいの声はもう上がらなくなったが、笑い声だけはずっと続いていた。


 すみは箱の中で座り直して、前の縁に顎を乗せてみた。紙の壁がちょうど顎の下に当たる。


「……すみ、それはずるいよ」


 あおいの手が伸びてきて、すみの頬を指の背でそっと撫でた。右の頬、それから左の頬。すみの目が勝手に細くなった。


 箱の外では、むぎが箱の横腹に顎を乗せて伏せ、それを見ていた。紙の壁は、むぎの顎にもちょうどいい高さらしかった。


 あおいが台所へ立ったあとすみは顎を縁に乗せたまま、むぎに言った。


「箱はね、入ればいいってものじゃないの」

「じゃあ、どうすればいいんだ」


 すみは少し考えた。入って、出て、また入って、顎を乗せた。そうしたら撫でられた。どれが効いたのかはすみにもよく分からなかった。


「……使い方があるの」


 すみはそう言って、縁の上で顎の位置を直した。

お読みいただきありがとうございます!

「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク・評価・リアクションをいただけると嬉しいです。

Xでも更新情報などを発信しています。

よろしければこちらもフォローいただけると嬉しいです!

https://x.com/st_shosetsu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。