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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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96話 密約は交わされた

 シャオメイがザラニアの死骸から肝を剥ぎ取り終えてから、馬車の進行を再開させる。

 しかし意外と時間がかかってしまった、日が暮れる前にバビロード登山道の麓町に辿り着けるだろうか。


 昼頃になって、ザラニアの群れを撃破した後にもう一度寝直していたアイリスが起きてきて、俺と交代、ようやく寝ることが出来る。


 水と塩梅を腹に入れてから、馬車に入る。


「おぉリオ、今から昼寝か?」


 馬車に入ると、アンドリューさんが地勢図を片手に塩梅を食べていた。


「はい、また魔物の襲撃が来ない限りは、しばらく寝ときます」


「お疲れさん。この辺りまで来れば、少しずつ涼しくなってきて、魔物の数も減ってくるはずだ。麓町まであと少しだが、また戦闘になったら頼むぞ」


「任せてください」


 と言っても俺は今から寝るんだが。

 幌の中にシートを敷いて、横になる。

 暑いせいで神経が昂っているが、目を閉じて横になっている内に、眠く……なって……


 ……


 …………


 ………………






 帝都キャピターレ。

 その中でも、後宮に近い位置にある貴族の屋敷に、訪ねる者がいた。

 武装した紅い髪の粗野な男――モーゼスを見て、ハウスキーパーの男二人はあからさまに警戒した視線を向ける。


「何か御用で?」


 モーゼスはモーゼスで警戒した視線など意に介することもなく、堂々と用件を告げる。


「『ゼリウス』御大将はいるか?「モーゼスと言う男が来たら通せ」と言われているはずだ」


「……では、身分証を」


 身分証を出せと言うハウスキーパーに、モーゼスは懐から"偽造の“身分証を差し出す。

 ハウスキーパーはそれを穴が空くほど目に通し、ややあってから身分証を返し、襟を正した。


「失礼致しました。屋敷に入る前にボディチェックを受けていただきます」


「全く、俺の顔なんざもう覚えているだろうが」


「万が一と言うこともあるので確認は徹底するようにと、ゼリウス様からのご命令を受けております、悪しからず」


 悪しからずと言いながらも、何の遠慮もなくモーゼスの全身を確かめて。


「それでは、どうぞ中へ」


「おぅ、邪魔するぞ」

 

 使用人を前後に付けられた上で"御大将“の元へ案内――いやこれはもはや連行に近いものがあるが。

 先程のハウスキーパーの対応と言い、コレと言い、どうにも自分の雇い主は用心深さのあまり金的が小さいな、とモーゼスは声に出さずに呟く。


 そうして目的の部屋の前まで案内されると、使用人はドアを二回ノックし、きっかり二秒後に告げる。


「失礼致します、ゼリウス様。モーゼス様をお連れしました」


 用件を告げてからもきっかり二秒後に、ドアを開けて、モーゼスに道を譲る。


「それでは、ゼリウス様に失礼の無いように」


「おぅ」


 片手を軽く上げて会釈しつつ、モーゼスはずかずかと入室する。

 ドアが閉められるなり。


「一体何の用だ、御大将」


 彼の視線の先にいるのは、足を組んでソファーに腰かけた金髪の男――ゼリウス。


「つれないね、モーゼス。そんな顔だから、ウチの使用人やハウスキーパーから疑われるんじゃないのかい?」


「この(ツラ)は元からだ。文句があるなら俺の産みの親にでも言ってくれ」


 もうこの世におらんだろうがな、と吐き捨てて。


「で、今度は何の仕事だ?」


 モーゼス自身、自分の雇い主であるゼリウスから呼び出されると言うことは即ち、また何かしらの汚れ仕事でも依頼されるのだと理解している。

 汚れ仕事は正直好まない。けれど金のためにも十全にこなすつもりだが。


「近々、とある商隊がバビロード登山道を通るらしい。その商隊の専属冒険者に、黒鉄……あ、いや、今は銀級だったかな?そのリオと言う青年がいるのだけど、」


「そいつを始末しろと?」


「気が早いよモーゼス。始末するんじゃなくて、彼の【タイム連打】と言うスキルを調べてほしいんだ」


「はぁん?なんだその、ふざけた名前のスキルは。しかもそれを調べろだと?」


 訳が分からんぞ、とモーゼスは眉間に皺を寄せる。


「そんなもの、手前の小飼の密偵お得意の【鑑定】スキル持ちの奴に鑑定させれば済むだろうが」


「それなんだがね……」


 ゼリウスは、以前に密偵から聞かされた『リオと言う冒険者の持つ、【タイム連打】スキル』について説明すると。


「『時を止める代わりに自分も動けなくなる』だと?よく分からんスキルだな」


「そう。だから君にそれを確かめてもらいたいんだ。その【タイム連打】スキルを持ったリオと戦って、どんな戦い方だったか、戦った君自身が何を感じたか、それを知りたい」


 そのリオとか言う冒険者を殺さない程度に、しかし適度に戦って相手のスキルの性質を調べろと言う依頼だ。

 それを思い起こした上で、懸念すべき点をいくつか脳裏に上げると。


「これはまためんどうな依頼だな……」


 苦虫を噛み潰すどころか、生きたまま丸呑みしたかのように顔をしかめるモーゼス。


「君ならやってくれると、安心して依頼が出来るのさ。やってくれるかい?」


「……報酬は?」


 スッ、とゼリウスが差し出した数枚の小切手は、一般庶民の金銭感覚で言えば、一生遊んで暮らしても有り余るほどの金額になる。


「フン……まぁいいだろう。この依頼、引き受けた」


「頼んだよ」


「用件は以上か?」


 是正するゼリウスに、モーゼスは無言で踵を返して退室し、部屋の外に控えていた使用人にまた連行されるように屋敷を後にしていった。

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― 新着の感想 ―
まあ、用心深いからこそ生き残れた側面があるでしょうねこりゃ。 そんでリオに対してまさかの……!! それだけ有名になったんだねぇ。
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