表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/148

93話 砂を泳ぐ魚群

 アイリスと一緒に不寝番として一晩を過ごして、そろそろ夜が明ける頃合い。


「やっと夜明けですね、ふぁ、ふ……」


 うっすらと砂の向こう側から昇って来た朝日を眺めながら、アイリスは欠伸をする。欠伸の際に手で口元を隠す辺り、お嬢様育ちだなぁ。


「お疲れさん。人生初の徹夜を成し遂げた気分はどうだ?」


「と……とっても、眠いで、あふぅ……ん。リオさんって、こんなことを毎回しているのですよね?」


「毎回ってわけじゃないが、今はもう普通に一晩中起きられるな」


 疲れている日とかは難しいが、意識を「今夜は不寝番」と切り替えればそうそう寝落ちすることもない。


 ぐいぃーっと背伸びをしていると、馬車の中からシャオメイが、食材や調理器具を抱えて出てくるのが見えた。


「おはよう、シャオメイ」


「おはようございます、シャオメイさん」


 アイリスと合わせて挨拶すると、すぐに振り向くシャオメイ。


「おはようございマス。お二人トも、オツカレサマです」


「これから朝飯の準備か?」


「ハイ。今日モ砂漠を渡りマスし、スタミナのツクモノを作ろうかナと」


 焚火お借りしますネ、と言いつつ俺達が一晩中焚いていた焚火の方へ向かうシャオメイ。


「よし、俺達も手伝うとするか」


「ですね」


 アイリスも眠たい目を擦りつつ、シャオメイの調理を手伝いにかかる。




 次第にみんなが起きてきて、朝食を終える頃には、もう夜の冷え込みなんて忘れたかのように灼熱の日差しが朝の挨拶をけしかけてくる。


 手早く野営を撤収したら、進路を再び北西へ。

 今日の夕方頃にはこのサンドロ砂漠を抜けて、バビロード登山道の麓の町に着くはずだ。

 ギガスコルピオン出没による非常事態宣言もあって、ビヤバンの町で二日ほど滞在したために日程が遅れてしまったが、水や食料は問題ないとアンドリューさんは言う。


 アイリスには先に眠ってもらい、俺は昼になってからアイリスと交代する形で眠らせてもらうつもりだ。

 彼女が一時戦列から離れる間は、ムイが代役を担ってくれる。


 さぁ、今日も頑張るぞ。




 じわりじわりと砂漠の熱気に体力と水分を奪われつつある中、不意にムイが何かに反応した。


「ん?」


「ムイちゃん?どうしたの?」


 リーゼさんが声を掛けるが、ムイは「ちょっと待ってください」と言うなりスライムの姿になると、砂地に頬(?)を押し付け始めた。

 スライム形態のムイが何をしているのかは分からないが、彼女が何かに気付いたとして、アンドリューさんに馬車を止めさせる。


「ムイちゃん、何してるっての?」


 シャルルはムイの様子を見て、何をしているのかと俺に訊いてくるが、俺にも分からん。


「何かを感じたのは、間違いなさそうだが」


 感覚的なものであれば、人間形態よりもスライム形態の方が感じやすいのかもしれない。


「プキュ……プキュキュ……」


 スライム語で独り言を言われてもな。

 ややあって、ムイが人間形態に戻った。


「ムイちゃん、何か分かったの?」


「んー……多分ですけど、ザーッて音が聴こえました。それも、たくさんいるみたいです」


 音がたくさん、と聞くなり即座にリーゼさんはセプターを手に取り、シャルルもチャクラムを抜き放った。もちろん俺も、ロングソードの柄に手を添えて臨戦態勢だ。

 馬車を再出発させつつも、アイリスには悪いが起きてもらい、臨戦態勢を整えてもらう。


 すると、リーゼさんがすぐに反応した。


「あれは……」


 陽炎で揺らぐ視界の先に、その姿が見えた。


 一見するとただの砂煙だが、その砂煙を切り裂くように、(ヒレ)の先端部が見え隠れしている。

 それが、複数。

 俺自身は戦ったことは無いが、魔物図鑑で見たことがある、そいつらは、


「『ザラニア』の群れだね。しかも、真っ直ぐこっちに向かってくる」


 やはりか。

 元々水棲の肉食魚類が、砂漠への適応進化を果たして、"砂を泳ぐ"ようになったらしい魔物だ。

 真っ直ぐこっちに向かってくるってことは、商隊を集りに来たってことか。

 数は……数えないで20匹以上はいる、多いな。


「非戦闘員は全員馬車の中へ避難!慌てて外に出ようとするなよ!」


 アンドリューさんが声を張り上げると、すぐに馬車の幌が閉じられていく。

 そうしている内にも、ザラニアの大群が迫り来るが、


「病み上がりだけど、問題はないかな。――ヘイルブリザード!」


 まだ距離がある内から、リーゼさんはヘイルブリザードを発動し、猛吹雪をザラニアの群れの中心に叩き込む。

 突然の氷雪の暴力に、ザラニアの大群は慌てて散開するが、群れの中心辺りにいた何体かは逃れられずに猛吹雪によって凍死した。さすがはリーゼさん、病み上がりでも全く衰えていない。


 そうしてヘイルブリザードから逃れるために散開した、残りのザラニアの相手をするのは俺達だ。


「俺は右の群れをやる!他のみんなは左を頼む!」


 数は右の群れの方が少ないので、俺一人でも食い止められるだろう。反対の左の群れの方が多いので、そっちに手数を回した方がいい。


「分かりました!」


「りょーかいっての!」


 アイリスとシャルルはすぐに応じて、左の群れの迎撃にかかる。


 さて、俺の方は四体が相手か。ちと分が悪いがやるしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新が速くなったら出遅れてしまい、5話一気に拝読しました。 「一人はみんなのために、みんなは一人のために」、ユタと不思議な仲間たちだー、と個人的にうれしかったです(劇団四季で昔観た)。 まあ、リーゼさ…
なんか近年のサメ映画のサメ並みにとんでもない適応力だねぇ。 にしても、どうしてもラザニアに見えてくる不思議(ォィ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ