216話 ★【タイム連打】
すると、俺とダンケルハイトを追うように、アウラオーレも飛翔してくる。
『……邪龍よ、なんだそれは。私の真似のつもりか』
……そうか、この構図。
3000年前はアウラオーレが聖女を乗せていたが、今回はダンケルハイトが (聖女じゃないけど)人間を乗せている形になるのか。
『真似?まさか。貴様の上位互換に決まっておろう』
「いやいや、俺聖女じゃないし。ただの冒険者なんだが」
俺のツッコミもなんのその。
『そうか。ならば冒険者よ、名は何と言う?』
「……リオだ」
『良かろう、リオよ。貴様のその【タイム連打】、存分に使うがいい』
いや、存分に使うがいいって言われてもな……
「すまん、俺のスキルは『時を止める代わりに自分も動けなくなる』し、それを自覚出来るのは俺だけなんだよ」
『どのようなものであれ、"時を止める“ことが出来るのだろう?』
とかなんとか問答している間に、アウラオーレが近付いてくる!
『御託は済んだか、邪龍と冒険者よ。ならば滅せ!』
瞬時に吐き出される稲妻のブレスに、ダンケルハイトはぐるんと身を翻して稲妻を躱し、
「え か ! っ ? ?!ッぁ」
。くつみがしに首かとんな、がたっなにうそれさと落り振でいせたい動に急がトイハルケンダ
『なに、遠慮はいらんぞリオよ。我の見積りが正しければその【タイム連打】、単に時を止めるだけの力ではあるまい』
「っ……はっ、はっ、はぁっ?いや、ちょっ、待っ……」
今、有り得ない方向に有り得ない勢いで急制動かけられたせいで、一瞬三半規管が引っくり返ったんだが……!?
『構わん、使え』
と言った瞬間には火炎ブレスをアウラオーレに向かって薙ぎ払い放つダンケルハイト。
まるで炎の魔法剣のような、燃え上がる一閃はしかしアウラオーレにひらりと躱され……
「っぐっかっはァッ!?」
ッじゃねぇ!こいつが勢いよく首を振り回すから、今度は一瞬目の前が真っ赤になったぞおい!?
「ガハッ、ゴホッゴホッ……ぉおいダンケルハイト!おまっ、人乗せてること忘れてねぇだろうなァ!?」
あぁもぉ、どうにでもなっちまえ!
「んーーーーーなら、言われた通りやってやるよ――【タイム連打】ァ!!」
――発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除発動解除……!
『――む?』
アウラオーレは、不可解な感覚を覚えた。
目の前で対峙しているダンケルハイトと、その首にしがみついているリオとか言う冒険者。
その動きが、どこかちぐはぐに見えるのだ。
鈍くなったり、急に止まったり、かと思えば急に動き出したり、火炎ブレスを吐き出すかに見えて、何もしてこない、と思った次の瞬間には猛炎が襲いかかってきたり……
『何だ……邪龍よ、貴様何を?』
ダンケルハイトの動きの不可解さに疑問を感じるものの、どうであれ関係ない、少々劣勢ではあったものの、今のダンケルハイトは人間と言う脆弱な弱点を自らをさらけ出しているも同然だ。
現に、ダンケルハイトの急な動きにリオはついていけておらず、苦しみながらも必死にしがみついているように見える。
ならば、今こそ反撃の好機。
聖女が実は偽物で、使い物にならないのは計算外ではあったが、それでもダンケルハイトが弱点を抱えているのであれば、そこを突けば形勢は逆転する。
アウラオーレは動きの鈍いダンケルハイト目掛けて稲妻ブレスを放つが、
『……なっ!?』
どういうわけか、ダンケルハイトとリオは、いつの間にかそこにいた。
目に見えぬほどの速度で動いたわけではない、瞬きする間も無くその間には既にそこにいたのだ。
ならば肉薄しての近接攻撃ならばと、アウラオーレは翼爪に稲妻を纏わせつつダンケルハイトに迫り、雷爪を振り下ろすが、
瞬きの間も無く"突然消えた“。
『なにっ、奴はどこに……っ!?』
そう思った次の瞬間には、ダンケルハイトとリオが突然目の前に現れ、
『ぐっ、があぁぁぁぁぁッ!?』
目の前にいるのに何故か後ろから激しい炎が吹き付けられ、白翼を焼かれていく。
何だ、一体何が起きている!?
『ッ……邪龍、貴様……何をした!?』
『そ れ を 答 え る と で も 思 っ て い る の か ?』
愚かな、とダンケルハイトの口蓋が嘲笑に歪むと、また姿が消え――
『なっ!?がっ!?はっ!?ぐっ!?ごっ!?』
前から後ろから右から左から上から下から、四方八方から、何もないところから攻撃を叩き込まれていく。
黒曜の翼爪が至るところを斬り裂き、突然何もないところから放たれる火炎ブレスに龍鱗を焼かれ、真下にいたはずなのに脳天から龍尾の一撃を受け、龍角をへし折られ、苦し紛れの反撃に光弾を顕現して放ってもいつの間にかそこにはおらず、
背中から組みつかれ、龍翼に龍牙を突き立てられ、喰いちぎられる。
『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァ!?』
文字通り片翼を失い、これまでに受けたことのない痛みにアウラオーレは絶叫し――
国章の旗竿をへし折りながら、アウラオーレは再び城壁を突き破って墜落した。
へし折れた国章は、火災が発生している場所へと落下し、灰になっていく。
『バ、バカな……この私が、聖龍たる私が、手も足も出ないなどと言うことが、あってたま』
『口が減らないのは貴様も同じだったか』
瞬間、アウラオーレの喉元に、ダンケルハイトの龍牙が喰らいついた。
『ごっがっ』
抵抗らしい抵抗が出来る力も奪われ、アウラオーレは弱々しくもがく。
――かつて邪龍を地の底へ追いやった聖龍が、今この時はその姿が逆転しようとしていた。




