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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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210/228

210話 邂逅

 俺とアンドリューさんが先頭に立ち、その後ろにアイリスとレウィシア第一皇女、殿はフリーダと言う形で、見つからないように後宮内を進む。


 現在地は、後宮の地下階。

 この辺りは衛兵の出入りは少ないらしく、ここまでは衛兵の巡回に出会していないが、地上階に出てくれば見つかる可能性はぐっと高くなるだろう。


 地上へ続く階段から顔を出す前に、俺が先行し、周囲に誰もいないかを確認してから、後ろに手を振って合図。

 こそこそと地下階段から上がってきたら、次は女神像の間へ。

 ここからはアイリスの案内が頼りなので、先頭に立つアンドリューさんと立ち位置を代わる。


「ここから女神像の間までは、少し距離があります。ですがここは迂回して、衛兵に見つかりにくいルートを通ります」


 最短最速のルートよりは、多少の回り道を通る方が、衛兵に見つかりにくく、それが時間短縮に繋がりますとアイリスは言う。

 急がば回れってやつだな。


 後宮内部の見取り図を知っているアイリスの先導に従い、抜き足差し足忍び足……


 時折、巡回兵に見つかることはあっても、フリーダが即座に無力化して気絶させる。いざとなれば俺もアイリスも衛兵を殺すことに躊躇いはないが、人死が無いことに越したことはないからな。


 衛兵を何人か無力化しながら迂回路を進み……




 ようやく、女神像の間の扉の前に辿り着いた。

 迂回路を進んだせいで、聖女カナコはもう祈祷を終えてしまっているのではないかと危惧するが、その時はその時、翌朝の祈祷の時まで待つだけだ。


「では皆さん、行きますよ」


 アイリスは意を決して、扉を開け放った。




 ――女神像の間は、聖堂のように広く厳かかつ、静謐な場所だった。




 その奥に聳え立つ、星の女神ステッラの女神像の前に跪く、聖衣に身を包んだ人影。


 彼女が、聖女カナコか。


「――星の女神ステッラよ、聖女カナコ・ホシノの名において祈りを捧ぐ。息吹け微風(そよかぜ)、咲き誇れ生命(いのち)、慈しみを以て、この地に愛をもたらしたまえ――」


 静かに祈祷を捧げる聖女カナコ。

 ――この祈祷が、星の運行を乱し、大陸各地に風土悪化や異常気象をもたらしていた……とは、とても思えない。


 どう見ても、ただの熱心な聖職者にしか見えないのに。

 聖女カナコと言う存在は、俺が思っていたよりも悪人ではないのか?


 やがて祈祷を終えて、聖女カナコはのろのろと立ち上がり――


「――ふふ、お久しぶりです、カナコさん」


 アイリスは一歩前に出て、『ごく普通に』挨拶をした。

 ごく普通に――そう、完璧なまでにごく普通の挨拶だった。


 その挨拶が聞こえたのか、聖女カナコの背中が身動ぎし、恐る恐る……と言う風に振り返り、


 ――初めて見たその顔は、有り体に言えば、「ひどい顔」だった。


 病的なまでに青白い顔は深い皺だらけで、骨が浮き出るほど痩せこけた頬、目の下はそう言う紋様なのかと思うほど真っ黒な隈。

 何日もまともな食事も睡眠も取れていないのが丸分かり――いや、下手するとスラムの人間の方がまだ健康的に見えるだろう。


 これが、本当に聖女なのか?


 そうして、アイリスと目が合った瞬間――


「ぁ……あ……?アイリス、さん……?」


 まるで亡霊でも見たかのような――むしろ聖女カナコの方がよっぽど亡霊みたいな顔しているが――顔をしている。

 まぁ、死んだと思われていた人が実は生きてました、なんていきなり知ったら驚くだろうな……と俺は思ったが、


 どうも、聖女カナコの様子がおかしい。


「あ……あぁ……あぁぁぁぁぁ……っ?」


 ガクガクと膝を笑わせながら後退り、尻餅をつく。

 それを意にすることもなく、アイリスはつかつかとハイヒールを鳴らし、聖女カナコに歩み寄る。


「ふふ、どうされましたか?」


 しかし俺には分かる。これは、"人形“のアイリスの声色だった。

 何の感情もない、まさに生きた人形のように、完全で完璧な微笑みの仮面。


「ア、アァ……アイリス、さん……わた、私を、殺すんですか……っ?」


 尻餅をついたまま、怯えきったように後退る聖女カナコ。


「ふふ、何故私が、カナコさんを殺さなくてはならないのです?」


 その無感情な微笑みで言っても、むしろ怖がらせるだけだと思うんだが……いや、アイリスとしても聖女カナコに対して思うところがないわけではないのか。

 何せ、アイリスが王都を追放された間接的な原因は、聖女が召喚されたからと言うのもあるから。


「アイリス、聖女さんが怖がっているわ。控えなさい」


 そこにやんわりと割り込むレウィシア第一皇女。


「失礼いたしました、レウィシア姉様」


 するとすんなりと下がるアイリス。

 なるほど、最初にアイリスを見せて怖がらせて、その後でレウィシア第一皇女に懐柔してもらい、対談を有利に運ぶ、と言う作戦だったのか。


 レウィシア第一皇女は、尻餅をついている聖女カナコと視線の高さを合わせるべく、その場で正座するように座り込む。


「初めまして、聖女さん。私はエンペラル帝国第一皇女、レウィシア・イシューと申します」


「は……は、初め、まして……」


 なおも怯えきったままの聖女カナコだが、レウィシア第一皇女への第一印象は悪くないだろう。


 あとはじっくりゆっくりと言葉を交わして、聖女カナコに祈祷をやめてもらう約束を結ばせれば、こっちの勝ちだ。

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― 新着の感想 ―
王国側の事情を知ってる身としては。 どのタイミングでアウラオーレが介入してくるか分からなくて怖いのぅ。 いきなり「ドワォ」な感じで登場してきたりして(ォィ
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