204話 王都再び
「……と言うわけで、まだ正式に付き合うことになったわけじゃありませんが、暫定的に付き合うことになりました」
「ま、ましたっ……」
アイリスと晴れて恋人同士に――なるのは、まだもう少しだけ先になりそうだが、それももうすぐのことで、具体的なゴールラインも見えている。
で、一夜明けて朝食の時間帯になって、起きてきたみんなの前に立たされた俺とアイリス。
昨夜に交わした約束――アイリスの両親の安否確認と、その両親に俺を紹介し、それからちゃんと返事をする――も、みんなに公表、説明して。
すると。
「ブラボー!!」
真っ先に、アンドリューさんが手を鳴らした。
「素晴らしい!お互いの想いと考えを尊重し合い、その上で通すべき筋を通したいと言う、実に誠実で健やかな馴れ初めじゃないか……感動した!」
ハッハハッ!!といつもの……よりも、心から喜ばしい高笑いをするアンドリューさん。
直後に、みんなからは「おめでとう」や「おめでとうございます」の祝詞と拍手の嵐だ。
「な、なんだか恥ずかしいですね……」
「お、おぉ……」
シャオメイからは「オ祝いの蛋糕 (ケーキのことらしい)トカ用意出来ナクてスミマセン」と謝られてしまったが、そう言うのは落ち着いてからな。
一足どころか大分早い結婚報告みたいな朝食を終えたあとは、すぐに再出発だ。
今日の昼過ぎ頃には、王都に到着する予定だ。
俺はいつも通り午前中は寝させてもらい、午後になったら前衛に就き直すと言う形を取らせてもらい、アイリスも午前中は俺と同じく睡眠時間だ。
とは言え、寝る時はお互い別々の馬車だ。
そうじゃないと……色々と自制が効かなくなってしまいそうだからだ。
"そう言うの“は、正式に付き合うことになってからだと、昨夜の内に決めている。
……今回のこの一件、早くケリを着けたいな。
午前中は寝過ごして、午後からニーリンと代わり、そうして間も無く、シャルルが声を上げた。
「……あ、ねぇリオ、あそこが王都だっての?」
懐かしいと思えるにはまだ早いくらいには、見慣れた外壁。
「あぁ。……ついに、戻ってきたな」
王都クロスキングス。
ある意味俺の生まれ育った故郷にして――もう二度と帰らないと決め付けていた、因縁の地だ。
「なんだっけ、昔の冒険者仲間から、勘違いで追い出されちゃったんだっけ?」
「そんなところだ。多分、顔を合わせることになるだろうな」
「……大丈夫?気まずくなったりしない?」
「そこは大丈夫だ。以前のネオライトに来てすぐの頃に一度会って、……一応、決着はつけたつもりだ」
「その決着ってのが何なのか気になるけど……ま、それは今ほじくり返さなくてもいっか」
最終的にぶん殴って解決した、なんて言っても多分理解してくれないだろうしな。
改めて訊かれた時にでも詳しく話そう。
さて、四ヶ月ぶりの王都だ。
――例によって例のごとく、王都入りを拒否されるだろうアイリスには、ニーリンを帝都に密入国させた時と同じように積荷の中に紛れてもらう。
アンドリューさんが門番兵と顔見知りだったこともあってすんなりと身分確認が済み、積荷については問われることもなく、門を潜らせてもらった。
・・・やっぱり変わらない街並みだ、四ヶ月前に振り返った時と同じ光景。
馬車を駐留場を預けたら、アイリスには目立たないようにフードを被ってもらい、すぐに宿を取りに向かった。
王都でも最も高価で設備の整った宿を取ったら、(もちろんレウィシア第一皇女とフリーダの二人部屋と、女性陣用の大部屋、俺とアンドリューさんの二人部屋の三種類)すぐに女性陣の大部屋に集合だ。
ここから先をどうするか、その方針を決めるための会議だ。
「……全員集まっているな」
アンドリューさんがドアを開けて、部屋を見渡し、全員いることを確認してから、入室。
各々、備え付けの椅子や、ベッドに腰かけたりして座ってから、会議開始だ。
「さて、今更言うまでもないが……オレ達の目的は、レウィシア皇女殿下を、王国の聖女カナコと対談させることだ」
聖女カナコの祈祷による、豊穣の独占。
それをやめてもらうために、帝国の代表としてレウィシア第一皇女が、その交渉に赴くと言う形だが。
「しかし、現状王国は、帝国からの使者の受け入れを拒否している。ムイの意見により、介在者を通さずに直接聖女カナコとの対談に持ち込む……と言うところまでは、分かっているな?」
確認も含めたアンドリューさんの問い掛けに、全員が頷く。
受け入れを拒否している以上、正面から堂々とはいかない、王族関係者の目や、後宮の守りを躱しながら聖女カナコの元にたどり着かなくてはならないのだ。
「それを理解した上で、さてどうやって攻略するべきか。意見のある奴はいるか?」
当然、今すぐこの場で挙手する者はいない。
王都に来るのが初めてのシャルル、シャオメイ、ムイ、ニーリン、フリーダ、レウィシア第一皇女から意見を出すのは難しいだろう。
必然的に、王都及び周辺出身である俺、アイリス、エトナ、リーゼさんが中心になって考えなくてはならないが……
いや実際問題どうするんだ、これ。




