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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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138/150

138話 疑え

 ムイがゼリウスの伯爵邸の、地下室に忍び込んでいる時を同じくして。


 アバローナ王国後宮女神像の聖堂


 聖女カナコは、その日の晩の祈祷を終えたところだった。

 周囲に誰もいないことを確認してから、聖堂の机に腰かける

 そして、


「――アウラオーレ、いる?」


 自身を守っていてくれているだろう――聖龍アウラオーレに語り掛けた。


 ――何用だ、聖女カナコよ――


 意識の中にいるからか、カナコが語り掛ければアウラオーレはすぐに応じてくれる。


「王国と帝国が近々戦争になるって、本当なの?」


 ――唐突だな。しかし、そなたがそれを気にするべき事でもあるまい――


「気にしなくちゃいけない。戦争になるかもしれないって言うのに、こんな呑気に過ごしてる場合じゃないって思うの」 


 カナコはカナコなりに、後宮の外で何が起きているかを調べようとした。

 貴族達の間で、王国兵を騙った山賊辺りが国境線で散発的な武力挑発を繰り返し、帝国に王国へ戦争を仕掛けようとしているのではないか、と言う話を小耳に挟んだことがあるからだ。


 ――人間は愚かだ、三千年前から何も学ぼうとしなかったのだからな。故にこうして人間同士で、無意味で浅慮な争いなど起こす――


「けど、今回の戦争の原因は、各地の風土悪化とか異常気象とかも原因だって言われてる。それをどうにかすれば、戦争を未然に防ぐことだって……」


 ――それがどうしたと言うのだ――


 ひどく冷徹で無機質な声色だった。


 ――人間同士の争いなど、好きにさせればよかろう。聖女の恵みと叡智を歪めて享受した者など、それを貪る"(うじ)“に過ぎぬのだからな――


「蛆虫って……ッ、人が大勢死ぬかもしれないのよ!そんなことがいいわけ、」


 ――そうか。で?そなたの何が変わると言うのだ?――


「ッ……」


 底冷えするようなアウラオーレの声は、どこまでも無関心だ。


 ――人が大勢死ぬ?むしろ聖女の恵みと叡智に集り、無意味に喰い散らかすだけの虫ケラ同士が互いに駆除し合うのだろう。大変結構、存分に殺し合うがいい。其奴らはそれが望みなのだろう?――


「ひ、人を一体なんだと……!?」


 ――人は人に過ぎぬ。ならばその戦争とやらで、人間と言う種の存続が危ぶまれた時、選べる道は二つに一つ――


「選べる、道……?」


 カナコは正気を疑い始めていた。

 アウラオーレの言葉の意味と、それを聞いている自分の心を。


 戦争と言う大量殺戮を是とするなど正気ではない、というのがカナコの思考だ。

 けれど、アウラオーレの声は冷たく無機質で――ひどく理性的にも聞こえる。

 正気で大量殺戮を容認しているのか、それとも大量殺戮を否とする自分こそが狂っているのか……


 ――ひとつは、聖女がもたらした恵みと叡智の価値を再認識し、残された人間達でそれを尊び合うこと。もうひとつは……それでもなお聖女の恩恵を忘れ、過ちを繰り返し続けること――


 果たして狂っているのは自分か、アウラオーレか、それとも……世界が既に狂っているのか。


 ――選びし道が前者であればよい。が、それが後者であったとするならば……世界がそれを望み、滅ぶべくして滅ぶのだろうな。……あの、邪龍ダンケルハイトが望んだ、人も魔物も等しく同じの世界であるように――


 尤も、とアウラオーレは続けて。


 ――人間が滅びようとも、それをそなたが気に病むこともあるまい。この世界に聖女など必要なかった、それだけであろう――


「………………マジで言ってる?」


 人類滅亡を気にするなと言われて、実際に何も気にしない人間はいないだろう。


 ――案ずるな聖女よ。そなたが聖女である限り、聖女の生きる世界を滅ぼさせはせん。そなたが務めを果たす限り、世界はその想いに応えよう――


「………………」


 カナコの無言の沈黙を境に、アウラオーレとの交信も終了した。

 おもむろに、聖堂の窓を開けて外を眺める。


 緑豊かな自然に、幻想的に輝く星々。

 深呼吸をすれば空気が美味しく、夜の少し冷たい風が身体を涼やかに冷やす。


 ・・・王国はこんなにも豊かなのに、どうしてそれ以外の場所は風土悪化や異常気象に悩まされるのか?


 今日……と言うかついさっきまで、日常生活のひとつのように、特に何も考えずに女神像に祈祷を捧げてきたが、果たして『それらは本当に正しいことだったのか?』


 ここに至ってようやくカナコは、「聖女たる自分こそが何かの原因となっていないか?」と疑問を抱くことが出来た。


 ――イセコイジャンルにおいて、聖女 (あるいはそれに準ずる役目)として転生した負けインは、自分こそが主人公であり、微笑の仮面を被って役割をこなしていれば良い……と思い込んだ結果、破滅フラグを引きちぎりへし折り叩き潰すために必死に努力していた、本物の主人公である転生悪役令嬢を蹴落とそうとして、ボロが出て、馬脚をあらわし、最後に"負ける“のだ。


 そうして"負けた“結末は、既に知っての通りだ。


 考えろ。


 自分を疑え、フルス王子を疑え、後宮に取り巻く人物全てを疑え、王都領域の環境を疑え、アウラオーレを疑え、


 疑え疑え疑え疑え疑え疑え疑え疑え疑え疑え……

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― 新着の感想 ―
う~む、アウラオーレは世界に対してどう考えてんのか少しは分かる話ではありましたが……結局、アウラオーレは、ダンケルハイトの主張に傾き始めているのか。ただただ聖女以外の人間をどうでもいいと思っているだけ…
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