128話 怪盗は元男爵令嬢
――まずは、ワタシが何故怪盗ハートクイーンを名乗っていることからかな。
実はワタシ、エンペラル帝国の元男爵令嬢なのですよ。
そんなお嬢様が何故怪盗などやっているのか?
まぁ、有り体に言えば、闇ギルドの関係者への"復讐"のためです。
何のための復讐かと言うと、父を闇ギルドの構成員に殺されてね、それもただの殺人じゃなくて、事故死に見せ掛けた暗殺です。
おかげでワタシは、実行犯に父の死を糾弾することさえ許されず、おまけに目の敵にされていた貴族に嵌められて、爵位すら奪われて。
――あぁ、そう言えば前に、帝国の伯爵貴族のゼリウス・マーリドが何やら怪しいと言いましたね。
うん、何ならそいつも復讐の対象に含まれそうな気もするね。
むしろそいつが裏で闇ギルドとグルになって謀ったんじゃないかって思っているくらいです。
えぇ、もしそいつが黒幕で、それも目の前にいるなら、秒で撃ち殺してやりたいくらいには、闇ギルドの連中が憎いですね。
そんなわけで、良からぬことを考えている連中は大体闇ギルドと繋がっているか、もしくは本丸かと捉え、こうして成敗しているわけさ。
当然、怪盗ハートクイーンなどと名乗っているのも、ワタシが元男爵令嬢であることを隠すためです。
もちろん、ワタシとて無益な人殺しをするほど狂ってはいませんとも。
そんなものは、闇ギルドの連中と同じようなことだからね。
……さて、そろそろ本題に入りましょうか。
王国が帝国に対して、国境線で武力的な挑発行為を繰り返しているのはご存知ですかな?
そのせいで今にも戦争が始まりそうなことも。
ワタシはこの近況を、闇ギルドが裏で糸を引いて、戦争を引き起こそうとしている、と見たのさ。
とは言え、今の風土悪化や異常気象もあるから、両国が正面からまともにぶつかれば、戦争に勝つのは王国の方でしょう。
しかし、王国としては戦争に勝ったところで、帝国領土は風土悪化と異常気象で荒れ果てているんだ、それを切り取ったところで意味はない。
であれば、王国としては帝国との戦争など望むべくも無し。
だとすれば、何故王国は国境線で帝国に対して武力挑発を繰り返しているのか?
答えは単純、『帝国に武力挑発をしているのはそもそも王国ではない』からです。
それはそうだろうね、戦争をするからには最終的に、国民を納得させられるだけの"戦果"が必要なのだから。
それじゃぁ誰がと言うのならば、王国と帝国が争い合って誰が一番得をするのか、と言う視点から考えました。
答えは簡単、"武器商人"です。
戦争だからね、武具はいくらあっても足りません、多少ぼったくられようがなんだろうが、一つでも多く揃えてくれと言うのが、前線で戦う兵士達の偽らざる本音でしょう。
その"武器商人"の役割を一番こなせて、なおかつ王国と帝国が共倒れになればなおよしと考えられる組織はどこか。
ワタシには、それが出来るのは闇ギルドの連中しか思い付きません。
その上、帝国の貴族とも裏で繋がりがあれば?
必要なら金の融通も効くし、売るための武具の調達だって御安いご用と言うもの、まさにウィンウィンってわけです。
そうやって間接的に戦争に食い込み、王国と帝国、どちらも簡単に倒れないように――出来るだけ長く戦争が続けば、その分だけ武具が売れて儲かる。
王国が優勢になれば帝国に肩入れし、反対に帝国が優勢になれば王国に肩入れして……そうやって"シーソーゲーム"を繰り返させるんです。
で、そろそろ戦争が終わりそうな頃を見計らって、末端の小役人を諸悪の根源――『死の商人』として仕立て上げて、そいつに全責任をおっ被せてトカゲの尻尾切り、自分達はさっさと雲隠れしてマネーロンダリングに勤しむわけさ。
そうして儲けるだけ儲けて、闇ギルドの連中は何を望むのかと言うと……確証はありませんが、恐らくは相応の"立場"でしょうね。
今まで歴史の影に隠れていた自分達が権力を得て台頭し、そして世界を牛耳り頂点に立つ……と言ったところかと。
……長々と話してしまいましたが、結局のところ、ワタシが望むのは、ワタシの家を潰した奴をこの手で嬲り殺しにすることが第一。その副次的に、闇ギルドと言う組織の根絶が第二。
そのためには、闇ギルドの連中を締め上げて、ワタシの家を潰した奴を突き止めて、外堀を埋め、被害者面して泣き喚いても誰も同情出来ない程度には救いようが無いように徹底的に追い詰めて――最後はワタシのこの手をそいつの血で汚す。
それを以て、ワタシの復讐と言う名の"自己満足"は完了です。
最後に、そんなワタシは瀕死の状態でキミ達の前に現れたのか。
戦争を引き起こそうとしているのが闇ギルドの連中だと目星を付けた時点で、ワタシは闇ギルドが仮の宿としている、大陸各地の物資集積所に襲撃をかけました。
最初の内は上手くいっていたのですが、段々と警戒されるようになってそれも難しくなり……そうしてとうとう今日は作戦失敗、敗走。
ワタシも手酷くやられてね、これはさすがに死ぬかと思ったところで、運良くキミ達に助けてもらえた――




