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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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126話 傷だらけの怪盗

 国境線を越境し、少し離れた地点で昼食休憩も取ったところで。


 ここからまた数日かけて陸路を歩き、そうしてようやく帝都に到着する。

 もう少しだからこそ油断は禁物だ、ここはもう帝国領で、王国領とは魔物の分布が異なるのだ、勝手の違いに戸惑うわけにはいかない。

 加えて、風土悪化や異常気象で魔物の気が立っている可能性も高く、しかも治安の悪化もあって尚更油断は出来ない。


 まぁだからと言ってやることはいつもと変わらない、商隊の前衛は俺とシャルル、後衛はアイリスとリーゼさん、ムイは予備戦力。


 道中の村や集落の世話になったり、野営をしたりしつつ、風土悪化で荒れてしまった街道を進む。




 越境してから三日が過ぎた頃。

 今日は分厚い雲が空を覆っており、空気も湿気の匂いがするため、どこかのタイミングで雨が降ってくるのではないかと、冒険者四人は雨具を準備してから出発し――


 予想していたように夕立が降ってきた。


「っと、降ってきたか。本降りになる前に雨宿り出来るところ探さんとな」


 雨が降ってきてもアンドリューさんは動じずに、冒険者に雨具の着用を指示、手早く雨具を着こんで。

 幸いにも、そう遠くない距離に林を見つけたので、そこまで馬車を急がせる。


 雨を凌げる位置で馬車を停め、周囲に魔物が潜んでいないかを確かめて、雨が弱まるまで一旦休憩だ。


「あまり濡れなくて、助かりましたね」


「だねー、本降りになったら風邪引いちゃうところだったっての」


 雨具に付いた雨粒を水切りするアイリスとシャルル。


「夕立ナラすぐニ止ミそうデスし、夕食ノ準備だけ先に始メますネ。ムイサン、お手伝イお願いしマス」


「はーいです!」


 夕立が止むまでの間、火を使わなくていい調理だけ先に進めようとするシャオメイとムイ。

 それまでは、俺達四人は周囲の警戒をしておく。まだ焚き火が作れず、木々や雨に紛れて襲ってくる魔物も存在するので、そこも要注意だ。


 シャオメイとムイがきゃいのきゃいのと楽しそうに調理をしている中。


「……足音?」


 ふと、リーゼさんはセプターを抜いてその方向を警戒する。

 魔物かと思い、俺、アイリス、シャルルも武器を構えて迎え撃つ体勢を整えるが、

 現れた姿を見て驚き、戸惑う。


 最近になって見覚えが増えてきた、真っ赤な正装を纏った長身の女性――


 怪盗ハートクイーンだ。


 が、しかし……


「はぁ……は……うぅ……は……」


 いつもの堂々たる姿はどこへいったのか、真っ赤な正装はボロボロ、身体中は傷だらけで、仮面も無くしたのか付けていない。

 足取りは引き摺るように重く、右手で左腕を押さえており――ふと、向こうもこちらに気付いたようだ。


「怪盗ハートクイーン?一体どうした?」


 俺から声をかけると、怪盗ハートクイーンはいつもの不遜な笑みを見せたが、無理矢理作り笑いを維持しているのが丸分かりだ。


「やぁやぁどうもごきげんよう、こんな雨の中も旅とは、お互い大変です、ね……」


 すると、怪盗ハートクイーンは突然膝を折り、濡れた地べたに倒れそうになったので、咄嗟にロングソードを手離して支える。


「おいっ、しっかりしろ!」


 支えた拍子に、背中に触れた際にべちゃりという感触――止血出来ていないのか!?


「どうした、何があった!」


 アンドリューさんも慌ててやって来て、瀕死の怪盗ハートクイーンの姿を見て、すぐに指示を飛ばす。


「リオ、彼女を馬車に入れろ!リーゼさんはエトナと手当ての準備、ムイにも手伝わせるんだ!お嬢さんとシャルルは周囲を警戒しろ、追手が来るかもしれん!」


 アンドリューさんの指示通り、俺は怪盗ハートクイーンを抱き上げて馬車に入れて、あとはリーゼさんとエトナ、ムイに任せる。服とかも脱がす必要があるので、男子禁制だ。

 怪盗ハートクイーンが治療中の間はアイリスがその馬車の番をして、俺とシャルルは、怪盗ハートクイーンの追手が来ないかを警戒する。




 馬車の中のシートの上に横たえられた傷だらけの怪盗ハートクイーンを、リーゼとエトナが手当てし、ムイがヒールによる体力の回復を試みる。


 止血及び傷口の消毒と保護が終わったところで、エトナは怪盗ハートクイーンを【鑑定】する。


「……出血多量による衰弱と過労、それと体温の低下で、一時的な昏睡状態になっているようです。ムイちゃんのヒールで、回復傾向に向かっていますが、予断を許さない方がいいでしょう」


 今の彼女がどのような状態にあるかを確認し――同時に、怪盗ハートクイーン本人についても【鑑定】していた。


「(本名『ニーリン・ガーネット』、21歳、経歴は……帝国の元男爵令嬢?けど、当主の『ウィリアム・ガーネット』は死亡、ガーネット男爵家は現在は取り潰し、遺された一人娘は出奔した後、行方不明……)」


 元とはいえ男爵令嬢が、義賊の真似事をしているのだ。どこかアイリスと似たような境遇とも言える。

 もう少し詳しく【鑑定】しようと、魔力を強めて読み取るエトナ。


「(……ウィリアム氏の死因は、闇ギルドの構成員による、事故死に見せ掛けた暗殺……ニーリン本人は現在、怪盗ハートクイーンの偽名を名乗り、闇ギルドの構成員、及び闇ギルドと繋がりのある組織や人物に、義賊のように襲撃して回っている、と……)」


 怪盗ハートクイーン――ニーリン・ガーネットが義賊の真似事のようなことをしているのは、"復讐"のためかと、エトナは結論付けた。

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― 新着の感想 ―
ついに正体が明らかに(;゜Д゜) ていうか鑑定スキルすごいなぁ……名前どころか親族の死因と犯人の正体まで詳細に分かるだなんて、本格ミステリファンが泣くぜ(ォィ それはそれとして、彼女の敵の追手が近く…
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