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タイム連打ってなんだよ(困惑)  作者: こすもすさんど


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112/151

112話 モーゼス対怪盗ハートクイーン

 今より数刻前――手下が全滅し、撤退中だったモーゼスの前に、怪盗ハートクイーンが立ち塞がったところまで時は遡る。


 二丁拳銃の銃口を向ける怪盗ハートクイーンに、モーゼスは思わず舌打ちした。


「ちっ、お前はこの間の赤い奴……まさかこんな時に現れるとはな」


「ふふふ、こんな時だからこそ狙い目と言うものさ。さぁ、武器を捨ててお縄につくか、それとも……身体がバラバラになるまで切り刻まれるか、選びたまえ」


 一歩、一歩とジリジリ迫る怪盗ハートクイーンを前に、モーゼスは思考を回す。

 後ろに逃げようにも、その先にいるのはリオと商隊の冒険者達がこぞって迎え撃って来るだろう。それ以前に、今ここで背を向ければ即座に撃たれるのも目に見えている。

 で、あれば。


「………………年貢の納め時とやらか。仕方あるまい」


 モーゼスはバスターソードを抜くなり、足元に放った。

 ついでに、ベルトに備えていた暗器の類いも切り離して地面に放り投げ、両手を上げる。


「降参だ。さすがに今回ばかりは逃げられんようだ」


 武器らしい武器を捨てて見せ、両手を上げて見せるモーゼスに、怪盗ハートクイーンは仮面越しの目を訝しげに細めた。


「おや、随分と潔いことで。この間の国境線の時もそうやって大人しくしてくれれば楽に済んだのですが」


 まぁ尤も、と怪盗ハートクイーンは銃口を油断なく向けたまま続ける。


「抵抗されても困るのでね、手足ぐらいは撃たせてもらおうか。下手に動かなければ、死ぬほど痛いくらいで済みま……」


 そこまで言いかけたところで、突然モーゼスは右足を振り上げて、()()()()()()()()バスターソードを怪盗ハートクイーンに向かって蹴り飛ばした。


「おっと」


 飛んでくる肉厚の長剣に、怪盗ハートクイーンは身を捩って躱し、

 次の瞬間にはモーゼスが目の前に近付いてきており、反射的に銃の引き金を引くが、それよりも先にモーゼスの両手が怪盗ハートクイーンの手首を掴み上げており、銃弾は明後日の方向に消えていった。


「……ふふふ、降参すると言ったのではなかったのかい?」


「すまんなぁ、()()()()()


 さすがに単純な力比べであればモーゼスに分があるようで、怪盗ハートクイーンはその手を振りほどけない。


「嘘つきは女の子にモテません、よっと!」


 怪盗ハートクイーンはその体勢から右足で足払いを仕掛け、モーゼスの左足を内側から刈ろうとするが、その動きを見抜いたモーゼスは左足を浮かせて足払いを躱し、

 しかし左足を浮かせた瞬間、怪盗ハートクイーンは空振りした右足を軸に身体の重心を入れ換えて、片足立ちのモーゼスを巴投げのごとく放り投げた。


 身体が宙を舞うとほぼ同時に、モーゼスは両手を怪盗ハートクイーンから手放し、地面に叩き付けられると同時に受け身を取りつつ転がり、ついさっき蹴り飛ばしたバスターソードを拾い構え、即座に飛んできた銃弾二発を剣の腹で受けて弾き返す。


「フン、降参すると言った相手に危害を加えようとするからだ」


「降参すると言った、舌の根も乾かぬうちに不意打ちを仕掛けるキミに言われたくはないね」


 互いに互いの不徳を罵り合うなり、モーゼスはバスターソードを盾にしつつ怪盗ハートクイーンへ迫り、怪盗ハートクイーンは二丁拳銃を懐に納め、代わりに両手にダガーを逆手二刀流で抜き放つ。

 ダガーの軽さを活かしつつ舞うように立ち回る怪盗ハートクイーンに対し、モーゼスはバスターソードを盾にするように構える体勢を崩さずに隙を窺う。


 何度も何度もダガーとバスターソードが打ち合われ、不意にその時が訪れる。


 怪盗ハートクイーンの右手のダガーが右フックのように振り抜かれるが、モーゼスはバスターソード越しにタックルをするように前進し、勢いよくダガーを弾き返し、――やけに手応えが軽かったことに違和感を覚え――その拍子に怪盗ハートクイーンの手からダガーが弾け飛ぶ。


(もら)った!」


 右手側が無防備になるや否や、モーゼスは防御の構えを解き、


「いいや、それはワタシの台詞です」


 その瞬間を狙っていたように、怪盗ハートクイーンの右手には銃が握られており、既にその銃口が向けられていた。

 今の手応えの軽さの正体はこれか、とモーゼスが悟ったと同時に、バァンッと薬莢の炸裂と共に銃弾が撃ち出され、彼の右肩の肉を貫き、骨に突き刺さった。


「グゥッ……」


 右肩の鈍い激痛に、モーゼスはよろめく。

 骨折には至っていないが、関節の痛みからして、脱臼かそれに近い状態に陥っていると体感する。


「おやおや、随分痛そうだね。脱臼でもしましたか?」


 しかも、右肩がろくに動かせられないことを怪盗ハートクイーンに見抜かれてしまう。

 左手だけでもバスターソードを振るえるだけの力はあるが、動きの鈍った右側から攻め立てられたら成す術はない、とモーゼスは客観的に己の危機的状況を理解する。


「さぁ、そろそろフィナーレと洒落混みましょうか」


「(やむを得まい、かくなる上は……)」


 距離を詰めて確実に仕留めようと迫る怪盗ハートクイーンに、モーゼスはその場から飛び退き、


 ――そのまま崖から飛び降りていった。


「なんとっ!?」


 この自殺行為にはさすがの怪盗ハートクイーンも予想外だったらしく、仮面越しの目を見開いているのが見えた。


「(死にはせんぞ、"フィーナ“……俺は必ず、お前を救ってみせる……!)」

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― 新着の感想 ―
まさかモーゼスがシュワちゃんだったとは(違 それはともかく彼は彼で誰かのために戦っているようで……気になりますなぁ。 そんで脱臼した状態で崖下……これまた無茶を。 これで生存フラグってんだからとって…
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