104話 襲撃
シャオメイとムイによる旨い昼飯の後は、再び山道登りだ。
日が暮れる前に野営地足り得る場所を見つけて、腰を落ち着けないとな。
そう考えつつも――ふと思い出したことがあったので、前方を警戒しつつも視線は周りの植生物に左右させる。
ふむ……やっぱりか。
「リオ、そんなキョロキョロしてどうしたっての?」
端から見たら挙動不審に見られたか、シャルルが訝しげに声をかけてきた。
「あぁ、周囲の植生物を観察していたんだが……この登山道も、風土悪化の影響を受けているなと思ってな」
ネオライトやメルキューレ周辺ほど顕著ではないが、状態の悪い植生物がチラホラと。
「ここも風土悪化、ねぇ……」
するとシャルルは溜め息混じりに。
「これ、何が原因なんだっての?」
「分からない。ただ、リーゼさんが言うには、王都の聖女が何か関わっているんじゃないか、と言うらしいんだが」
「聖女?さっきの壁画にもあった、あの聖女?」
「そうらしい。だがそうなると、聖女と言う国に豊穣をもたらす存在が、どうして荒廃をもたらすようなことをするのか、と言う疑問があって、シャオメイはそれを「聖女のお怒り」らしいと」
ネオライトのグリード領主が好き放題していたから、それへの天罰として風土悪化を起こしたのではないか、と言うことを話すと。
「でも、風土悪化とか異常気象って、各地で起きてるんでしょ?それも、王都周辺だけひとつもそう言うのが起きてないって、なんか不気味だっての……」
不気味、か。
確かにその通りだな。
今の王都に一体何が起きているのか?
そこに住んでいるルイン達は大丈夫なのか?
疑問や不安は絶えないが、今の俺にはどうすることも出来ない……と思っていると、
ヒュゥンッ、と言う風切り音が聞こえ――
「あっ……火!?馬車に火が点いています!」
アイリスのその声に慌てて振り向くと、複数ある馬車の一台の幌に矢が刺さっており、そこが燃え始めている――火矢!?
が、すぐさまリーゼさんが右手を向けて、火矢ごと燃えていた部分を凍らせた。
「どうしたっ、お嬢さん!」
アイリスの声を聞いて、アンドリューさんは泡を食ったように先頭の馬車から顔を出そうとするが、
「みんな周囲を警戒!ムイちゃんも戦闘態勢!」
それを制止するようにリーゼさんが声を張り上げ、戦闘になるかもしれないとムイが「はいです!」と馬車から出てきた。
馬車の足を止めて、周囲への警戒を強めると同時に――岩影や木陰から、武装した人間が複数人現れた。
山賊か?
人数は七人、しかし囲まれているな……
「隊長、リオって奴は任せますけど、他の女は好きにしてもいいんで?」
「好きにしろ」
リーダー格――隊長と呼ばれた紅い髪の男は、背中のバスターソードを抜いた。あいつが首領か。
だが、俺の名前を知った上での襲撃?
「そいつはどうも……へへっ、選り取り見取りだ」
リーダー以外の、何人かの男は下卑た笑みと視線を俺達――と言うよりは女性陣に向けている。
「リオ……こいつら、ただの山賊じゃないっての」
ロングソードを抜くと同時に、チャクラムを構えたシャルルがそう言ってくれる。
ただの山賊じゃないのは分かるが……こいつらまさか、怪盗ハートクイーンが言っていた、闇ギルドの連中か?
山賊か闇ギルドかは分からないが、俺達を狙ってきたのだけは間違いなさそうだ。
「あの紅い髪の奴……リーダーは俺が狙いらしいから、あいつは俺が抑える」
「りょーかい」
人数は向こうの方が多いな、さっさとリーダーを倒してみんなの援護に向かわなければ。
意図的に呼吸をひとつ挟んでから、ダンッと地面を蹴り付けるように走る。
狙いはリーダーのこいつのみ、横目でリーダーの近くにいた奴は俺から遠ざかり、シャルルの方に向かって近付いていくのを見やる。
ただの山賊じゃない、とシャルルは言ったが……いいや、後ろのことはみんなを信じて任せるだけだ。
今は、最短最速でこいつを倒すだけだ!
「ふっ!」
ロングソードを振り抜き、それに合わせるように奴がバスターソードをぶつけてくる。
瞬間――ガギャィンッ!!と剣刃同士が衝突し、僅かに火花を散らし、ギリギリギリギリと擦れ合う。
弾き返し合い、奴がバスターソードを振り上げ――【タイム連打】、発動。
普通に、上段からバスターソードを叩き込みに来るか。
【タイム連打】、解除――と同時にバスターソードが振り下ろされるタイミングを見計らって、ロングソードの腹で受け流しつつ往なす。
「チッ」
受け流したとは言え、かなり正確な攻撃だった、まともに受けていたら体勢を崩していたかもしれない。
返す刀、ロングソードを突き立てるが、相手の反応も早い、バスターソードの腹で殴るように跳ね返してきた。
【タイム連打】の発動と解除による先読み回避と反撃を繰り返し合うが、こっちも向こうも一撃を与えられない。
一撃、ニ撃、とロングソードとバスターソードを打ち付け合い、三撃目で鍔迫り合いにもつれ込み――同時に互いの額をぶつけ合う。
「ぎっ……!」
「フン……ッ!」
こっちは必死に歯を食い縛っているが、向こうの方が余裕はありそうだ。そう見せかけているだけかもしれないが……
互いに弾き返し合い、イニシアティブを取り直す。
次の瞬間には奴の方から仕掛けてくるらしい、【タイム連打】で奴の挙動とバスターソードの位置を確かめつつ、的確に反撃を叩き込もうとするが、いずれも反撃返しにバスターソードに弾き返される。
こいつ、かなりやる……ッ!




