60日目③
ーお詫びー
5話を削除しました。
回想回でしたが、黒幕がわからない(まったく考えていなかった)と言ってしまった部分の整合性がとれなくなってしまったからです。
次回は巻きで黒幕とか諸々の暴露です。やっと見届け生活の準備に入れます。
『その時点でマスターの第一管理者の登録は抹消されます。』
アンからの思いもよらぬ宣言に、公一は自分が激しく動揺していることに気づいた。
「それは佐倉の指示なのか?」
『肯定。マコトからの最優先の絶対命令です。この絶対命令は管理者権限では撤回できません。』
世界に種を撒いてみないか? 公一はそう言った時の佐倉の顔を思い出す。
「わからないな。何故、俺にそんなことをさせようとするんだ?それにRevive細胞の存在を今知った俺が研究を完成させらるかどうかもわからない。そもそも研究しようにも研究室に一歩も入れないのにどうやれと?」
『マスターの環境改善も私に与えられた優先事項です。マスターの協力が必要ですが現状回復は可能と判断しています。』
「どうやって?」
公一は今の環境から抜け出したいと心の底から思っていたが、それが簡単にいかないのは身に染みてわかっていた。佐倉はどこかに秘密の研究室でも用意しているのだろうかとまで考えた。
『マコトからの依頼を受諾されますか?』
アンは、その質問には答えず。公一に聞いてくる。
「話は契約者にサインしてからということか・・・」
公一は悩んだ。アンからのサポート、現状脱出は心底望むものだが、佐倉のように大量殺人者として歴史に名を残すのならこのまま日陰者として生きていく方がマシだと思った。
これまでのアンから出された資料を見ただけでもわかるぐらいRevive細胞の実験は非人道的であったし、また研究者の誇りとして越えてはならない一線があることを公一は承知していた。
「・・・ダメだ。判断がつかない。仮に研究を成功させた場合は俺はどうなる?既に死んだも同然の状態だが、いいように使われて状況がさらに悪く、さらに汚名をかぶるようなマネはしたくない。」
『拒否されるということですか?』
「違う。依頼の内容と報酬が不明確すぎるといってるんだ。依頼ということなら、アン、君のサポートは当然で報酬にはならない。佐倉、いや君達の目的を達成するには非合法な手段を俺が実行する事が不可欠だ。一時的に今の状態から抜け出せても、最後には佐倉のように残りの人生を塀の中で過ごす事になるのなら意味がない。」
足元を見られている-そう公一は感じていた。佐倉の計画がいつ立てられたのかわからないが、自分が窮地を脱する為に飛びつくのを見越して提案されている。
これが佐倉の脱獄を手伝えといった―ある程度の非合法な行いであれば飛びついたかもしれない。
しかし、あいつが俺にさせようとしていることは、そんな小さい事じゃない。
ただ、佐倉ーアンは自分をこの窮地から救い出す方法を間違いなく知っている。
『理解。マスターの要求を具体的に教えて下さい。』
「まず、現状の回復。次は生命と生活の保障。これは実験後も保障してもらいたい。保障出来ないというならせめて計画のラフぐらいは教えてもらいたい。」
『…承諾しました。生活の100%の保障は不可能ですがマスターの要望そうようサポートするということでよろしいでしょうか?』
「あぁ、かまわない。それで計画については教えてもらえるのか?」
『肯定。計画の全体工程の概案をお送りします。』
「頼む。」
アンから送信されたファイルが受信中になっているログを見ながら公一はほっと息を吐いた。
最悪、途中で逃げればいい。アンはいくら優れた人工知能とはいえ機械だ。佐倉は刑務所の中。途中で逃げ出したとしても物理的に自分を止める手段はない。公一はそう考えていた。
『ーマコトの言った通りでした。』
アンが不意にそんな言葉を投げかけてきた。
「何だって?」
『マスターなら絶対に計画の公表と自身の保障を求めてくるだろう。そうマコトは言っていました。』
「そうか・・・他には?何か言ってなかったか?」
『はい。そしてあいつは最悪途中で逃げればいいと思ってるだろうと そう言っていました。』
受信が終了したファイルを開こうとした公一の手がピタリと止まった。痛いぐらい動悸が激しくなる。
「それから?他には?」
『全てを知ったあいつは、絶対に計画から降りることはない ーそうマコトは言っていました。』
「そうか・・・俺も裏切るつもりはないよ。もし、万一だけど俺が逃げたらどうするつもりなんだ?」
表情に出ないよう注意しながら、さりげなく公一は聞いてみた。
『逃げた時にわかりますよ。試してみますか?』
「…遠慮しとくよ」
そう答えて、公一は誤魔化すようにファイルを開いた。




