60日目②
ポーン
軽い音に目を上げると、モニターの左上の表示していたアンとの接続サインが青色表示に変わっていた。
『お待たせしました。』
「いや、もらった資料を見ていたらあっという間だったよ。」
公一は、作ったものの一口もつけずに置いていた、冷めたコーヒーを飲みながら答えた。
「資料は一通り見たが、何故これを?」
『それは何故私がその資料を持っているのかという質問ですか?それとも何故それを河野様に送ったかという質問ですか?』
「両方だ。あと河野様はやめてくれ。」
『了解いたしました。ではマスターとお呼びすれば?』
「あまり変わってない気もするが・・・ご主人様と呼ばれるよりはマシか。」
『意味は一緒ですが?』
「気分の問題かな・・・それより、マスターは佐倉じゃないのか?もしくは防衛省?だかの人間じゃないのか?」
『私にアクセスした時点で、第一管理者はマスターに変更されています。表面的な第一管理者は防衛相戦略センター管理課ということになりますが。マコトー佐倉様がそう設定されました。』
「そうか、じゃあよろしく頼む。聞きたいことがありすぎて時間が足りそうにない。」
『はい。最初のご質問ですが、まず私達ANシリーズには相互補完システムが搭載されています。互いにバックアップを定期的にとりあっており、3号機がそのファイルの保管元です。アメリカのCDC(疾病予防管理センター)の地下10階に設置されています。』
「CDC?君の話だと、軍関係の組織に設置されているシリーズ以外は破棄されたということだったはずじゃないのか?」
『はい。2号機から7号機までは全て軍事利用目的で導入されています。CDCに設置はされていますが、使用者は軍関係者です。』
「なるほどね。しかしわからないな。極秘情報の塊である軍関係の設備なのにファイル共有など許されそうにないが?」
『ANシリーズの補完機能は正式なマニュアルに載っている機能ではありません。知っているのは制作者のマコトだけです。補完用のソフトウェアは基盤コアに内臓されており例え除去されても稼働している限り再インストールされます。』
「イースターエッグとバックドアか・・・あいつらしいな。」
佐倉は覗き見をして喜ぶような男ではなかったが、変に心配性な所はあったので、なんでこんな機能をつけた?と問いただせば、「こういう事もあろうかと」と返ってきそうだなと公一は思った。
『ファイルの入手経緯はご理解いただけたものとして、次になぜマスターにこれを見て頂いたかということですが報告書は全てお読みに?』
「あぁ読んだ、Revive細胞・・・本気で不老不死の研究とはね。恐れ入ったよ。そしてえげつないな。」
公一は報告書に書かれた内容と数々の臨床実験データを思い出しながら答えた。
人類は死なない事を延々と研究しているといっても過言ではない。癌治療や
難病を克服する研究というのもある意味不老不死への道と言えなくもないが、この報告書に書かれた実験は不老不死を得る為ならば犠牲を厭わないたぐいのものだった。
不老不死を得る為に、生贄を捧げ続ける。悪魔の実験。
『マウスを使うか人間を使うかの違いでは?入手難度は後者が高いと推測しますが。』
「そこまで割り切れる人間は多くないよ。僕も含めてね。」
実験の為に多くのマウスを殺してきた公一だったが、マウスではなく人間となれば嫌悪感を抱かずにいられなかった。
自分も臨床実験の段階に進む所ではあったが、健康な人間を実験台にする気など毛頭なく、きちんとした手段と同意の上で行うつもりだった。
『そうですか・・・それは問題かもしれません』
「なにが問題なんだ?」
『マスターの研究を使い、このRevivi細胞を完成させてほしいのです。その上でこれを世界にバラ撒いて欲しいのです。』
「なんだって?世界にバラ撒く?何をいってるんだ?」
『そのために私はあらゆる補佐をするよう命令を受けていますが、受諾して頂けない場合はその時点でマスターの第一管理者の登録は抹消されます。』
唯一の味方と思っていたアンが契約を求める悪魔だと知った公一だった。
そして、自分はもう戻れないことも。
60日目の③も書いたのですが、更新を間違えて消してしました・・・
直接入力やめて、テキストで保存しておくべきですねorz




