63日目②
自宅に帰り、PCを起動させパスワードを入力する。
するとマイクからアンの声が聞こえてきた。最初は違和感のあった機械音声だったが、最近は声を聴くとホッとする。
『商談成立おめでとうございます。』
「あぁ、ありがとう。あいつらの動きはどうなっている?」
『今のところは順調だと上に報告をしているようですね。あとは流出ルートをお互いが探りあってる所です。』
「そうか、まぁあいつらは国益より保身が大事だからな。開き直られて、組織的に対応されたらどうしようかと不安だったけど、思ったより俗物で助かったよ。」
『これで、自由の身ということですか?』
「一応はね。社会的には詐欺師ということになるのかな。税金泥棒と・・・まぁ誤解を今更解いても仕方ないしね。」
『ご両親のこと・・・本当に残念でしたね』
「あぁ・・・親不孝な息子だったな。あっちに行ったら誤るよ」
公一は冷蔵庫からビールを取り出し一気にあおった。
油断は出来ないが今日の商談は上々であったにも関わらず気分がさえないのは仕方がない。
【河野さんですね、ご両親のことでお話が】
警察から電話があったのはアンとコンタクトが取れた翌日のことだった。
両親の遺書には、世間に詫び、償いをしながら生きろとそしていつか人の役に立つ研究結果を残せ、息子の不明の責任は私たちが取るということが書いてあった。
葬儀は公一ただ一人が立ち合い、遺骨は今も居間においてある。
親戚一同の反対で墓には入れてもらえなかった。
両親の死はバッシングに沸き返った世間に冷や水を浴びせたようで、その後ろめたさを誤魔化すようにマスコミの行き過ぎた取材に批判が向き、また公一も弁護士を通じてしばらく取材は自粛してほしいと要望を出したこともあり、身辺は静かになった。
「世間の役にか・・・そのつもりだったんだけどな」
公一は最近、吸い始めたタバコを加えながら天井に向かってつぶやく。
『マスターが気に病むことはありません。全てはこの国の官僚のせいです。』
そう、公一は嵌められた国家権力によって。




