第16話 4人の女の子に甘やかされていたら、魔王から人類との和平を頼まれた件
「ルウセトよ。我はお前を荷物持ちとして雇ったはずだが、どうして4人もの女に取り合われておるのだ?」
魔王は僕を見て、目を丸くした。右腕にはポッケナが抱きつき、左手はガドリカが握っている。シェファナは僕の服を直してくれているし、ジルネカは後ろから抱きついていた。
「えへへ! みんな僕と一緒にいたいって言ってくれたんだ! 僕もみんなが大好きだから、すっごく嬉しいよ!」
「うむ。ずいぶん仲がよいのだな」
「せやで! うちら、もうルウセトと離れるつもりあらへんからな!」
ポッケナが僕の腕に頬を寄せた。魔王はポッケナたち3人を見回した。
「そうか。ならば、お前たちも我が城に滞在するとよい。部屋を用意させよう。今夜はルウセトとの再会を祝って、ごちそうも用意するぞ」
「本当!? 魔王さん、ありがとう!」
僕が喜ぶと、4人も嬉しそうに笑った。夕食まで、みんなで部屋に集まることになった。僕が長椅子に座ると、ポッケナが膝の上に乗ってきた。
「ルウセト、頭なでてほしいねん。うち、あんたがおらん間、ずっと寂しかったんよ。せやから今日は、いっぱい甘やかしてな?」
「うん! いいよ!」
僕はポッケナの薄緑色の髪をなでた。
「えへへ。気持ちええなあ」
「ポッケナって可愛いね! 僕、この髪も大好きだよ!」
「か、可愛いって……。もう、そんなん言われたら照れるやんか!」
ポッケナは顔を赤くして、僕の胸に顔を隠した。それから、そっと顔を上げる。
「なあ、ルウセト。ちょっと目ぇ閉じてくれへん?」
「うん!」
僕が目を閉じると、頬に柔らかいものが触れた。ポッケナがキスしてくれたのだ。
「えへへ。大好きやで、ルウセト」
「僕も大好きだよ! お返ししていい?」
「えっ!? う、うん……!」
僕はポッケナの頬にキスをした。すると、ポッケナは耳まで真っ赤になって、僕に抱きついた。
「もう、ほんまに大好きや……!」
そんなポッケナを見て、ガドリカが羨ましそうな顔をしていた。
「ガドリカもおいでよ!」
「い、いいのか? あたいみたいな女が甘えても……」
「いいよ! 僕、ガドリカのことも大好きだもん!」
ガドリカは顔を赤くして、僕の前にしゃがんだ。僕が抱きしめると、ガドリカの大きな腕が僕の背中に回った。
「へへっ。あたい、こんなふうに誰かに甘えたことなんかねえんだ。でも、お前に抱きしめてもらうと、すげえ幸せなんだよ。なあ、もう少しこのままでいさせてくれねえか?」
「うん! いいよ!」
僕はガドリカの短い髪をなでた。
「ガドリカも可愛いね!」
「ば、馬鹿野郎! あたいみたいな女を可愛いなんて言うんじゃねえよ……!」
そう言いながら、ガドリカは嬉しそうに笑っていた。僕がガドリカの頬にキスをすると、彼女は目を丸くした。
「お、お前……。いきなりキスなんかするなよ。嬉しくて、どうにかなっちまいそうだろ……!」
ガドリカは僕の手を握り、指を絡めてきた。今度はシェファナが近づいてきた。
「ルウセト様。わたくしも、少しだけわがままを言ってよろしいでしょうか? わたくしのことも抱きしめて、頭をなでていただきたいのです」
「うん! おいで!」
シェファナは僕の隣に座り、僕の胸に顔を寄せた。僕は長い白紫色の髪を優しくなでる。
「シェファナの髪もきれいだね! すっごく可愛いよ!」
「ありがとうございます。ルウセト様にそう言っていただけるなんて、わたくし、とても幸せですわ」
シェファナは頬を赤くした。
「それから、もう1つお願いがございます。わたくしにも、キスをしていただけませんか?」
「うん! いいよ!」
僕がシェファナの頬にキスをすると、彼女は幸せそうに目を閉じた。
「大好きですわ、ルウセト様。これからは毎日、こうしてあなた様に甘えてもよろしいでしょうか?」
「うん! 僕も毎日一緒にいたいな!」
シェファナは嬉しそうに微笑み、僕の頬にキスを返してくれた。
「ずるいよ! ボクだってルウセトのこと大好きなのに!」
ジルネカが頬を膨らませている。
「ボクにもぎゅってして! キスもしてほしい!」
「うん! ジルネカもおいで!」
ジルネカは勢いよく抱きついてきた。僕がジルネカの頬にキスをすると、彼女は嬉しそうに笑った。
「えへへ! ボクも大好き!」
ジルネカも僕の頬にキスしてくれた。みんながこんなに仲良くしてくれるなんて、本当に嬉しいなあ!
「おお、ずいぶん楽しそうだな」
夕食の時間になり、魔王が僕たちを迎えに来た。ジルネカはまだ僕の腕に抱きついていた。魔王は困った顔で娘を見た。
「ジルネカ! 父親の前で何をしておる!」
「えへへ。ルウセトとくっついてるんだよ! ボク、この子が大好きなんだもん!」
「むう……。我が娘が、そこまで人間の少年を気に入るとはな」
魔王は困った顔をしたあと、笑った。
「ルウセトよ。娘を大切にしてやってくれ」
「うん! ジルネカは大切な友達だからね!」
「むう……。友達かあ……」
ジルネカは少し不満そうだった。どうしたんだろう? でも、すぐに笑顔になって、僕の腕をぎゅっと抱きしめた。
夕食には、たくさんのごちそうが並んでいた。
「ルウセト、あーんして?」
ポッケナが肉を食べさせてくれた。ガドリカも肉を小さく切ってくれた。シェファナは飲み物を用意してくれたし、ジルネカも自分のお皿から料理を分けてくれた。
「みんなありがとう! 今度は僕も食べさせてあげるね!」
僕がそう言うと、4人が一斉に顔を上げた。
「うちが最初やで!」
「おい、ポッケナ! あたいにも食わせろよ!」
「わたくしも、ルウセト様に食べさせていただきたいですわ」
「ボクも! ボクも!」
僕は順番に料理を食べさせてあげた。4人とも顔を赤くして、とても嬉しそうだった。魔王も大笑いしていた。
「はっはっは! 人間の聖女も女戦士も魔法使いも、我が娘まで、お前に夢中とはな!」
「えへへ! みんな優しいから、僕も大好きだよ!」
僕が笑うと、ポッケナが腕に抱きついてきた。ガドリカは僕の頭をなで、シェファナは嬉しそうに微笑んでいる。ジルネカも反対側から頬を寄せてきた。
こんなに幸せでいいのかなあ!
魔王は僕たちを見つめながら、あごに手を当てた。しばらくして、僕に声をかけてきた。
「ルウセトよ。我は以前から、人間との戦いを終わらせたいと考えておった。しかし、我ら魔族が和平を申し出ても、人間たちは信用してくれぬのだ」
「そうなんだ。僕も、みんなが仲良くできたら嬉しいな! 魔王さんもジルネカも、すっごく優しいもん!」
魔王は笑った。
「お前は人間でありながら、我ら魔族を友として受け入れてくれた。人間の街でも多くの者を救っておる。そこで、1つ頼みたいことがある」
「うん! 僕にできることなら何でも言って!」
魔王は真剣な顔になった。
「ルウセトよ。我は人類との不戦条約を結びたい。そのために、人間と魔族の橋渡し役を、お前に頼めぬだろうか?」




