第17話 人類の10人の王と魔王が集まる和平会議で、僕がスピーチしたら世界中が大騒ぎ!? 戦争が終わったら4人に抱きつかれて、幸せすぎるんだけど!
「うわあ! 王様がいっぱいいるね!」
僕は大きな部屋を見回した。ここはグラドフェル王国のお城だ。長い机を囲んで、10人の王様が座っている。白いひげを生やしたイシェルト王がいた。ゴザルム王は体が大きく、顔には傷がいくつもあった。ミルテサ女王は黒い髪をきれいに編んでいた。ほかにも、赤い服のアルゾン王、丸い眼鏡をかけたレギオ王、青い冠をかぶったナズフィル王がいる。黒い手袋のセルカ王、長い金髪のリュグド王、白い服のテメリア女王、片目に傷のあるガイベン王も座っていた。みんな、それぞれ違う国の王様らしい。しかも、反対側には魔王さんまで座っている。
「すごいなあ! こんなにたくさんの王様と会えるなんて!」
「ルウセト、あんた緊張せえへんの?」
隣にいるポッケナが、僕の腕に抱きついてきた。
「うん! みんなと仲良くできたら嬉しいな!」
「もう、ほんまにあんたらしいわ」
ポッケナは笑って、僕の手を握った。反対側にはガドリカとシェファナがいる。ジルネカも僕のそばに座っていた。
「ルウセト様。何かございましたら、わたくしたちを頼ってくださいませ」
「ああ。あたいらがついてるから、安心しな」
「ボクもいるよ! お父様にも、君のいいところをいっぱい話してあるからね!」
「えへへ! みんなありがとう!」
僕は4人に笑いかけた。そのとき、部屋の中央にある大きな水晶が光った。
「これより、世界和平会議を始める!」
イシェルト王が立ち上がった。
「本日の会議は、魔法によって世界中に放送されている。人間の各国と魔族の国、そのすべての民が我らの言葉を聞いているのだ。また、各地の水晶からは、和平に賛成か反対かを伝えることもできる」
「ええっ!? 世界中に!?」
僕は水晶を見た。水晶の中には、たくさんの街や村が映っていた。大勢の人たちが、同じような水晶を囲んでいる。
「わあ! みんな見てるんだね!」
僕が手を振ると、ポッケナが笑った。
「ルウセト、まだ会議始まったばっかりやで」
「そっかあ!」
僕は慌てて手を下ろした。
「我は人間と魔族の戦争を終わらせたい」
魔王さんが立ち上がった。
「互いの国を攻撃せず、争いが起きたときには話し合いで解決する。そのための不戦条約を結びたいのだ」
ゴザルム王が机をたたいた。
「ふざけるな! 魔族との戦争で、我が国の兵士が何人死んだと思っている! 今さら仲良くしようなどと、信用できるものか!」
ほかの王様たちも声を上げた。
「魔族が約束を守る保証はあるのか!」
「戦争をやめたあと、攻め込まれたらどうする!」
「我が国の民を危険にさらすわけにはいかん!」
みんな怒っているみたいだ。魔王さんは腕を組んだ。
「人間に家族を殺された魔族もおる。互いに憎み続けていては、いつまでも戦いは終わらぬ!」
「では、どうすれば信用できるというのだ!」
ゴザルム王が立ち上がった。魔王さんは僕を見た。
「そこで、諸王に紹介したい少年がおる」
「うん?」
「ルウセトよ。前へ出てくれぬか?」
「はーい!」
僕は元気よく立ち上がった。すると、10人の王様が僕を見た。
「何だ、この少年は?」
「まだ子供ではないか」
「なぜ、このような場所に連れてきた?」
僕は頭を下げた。
「初めまして! 僕はルウセト! 16歳の荷物持ちだよ!」
「荷物持ちだと!?」
ゴザルム王が目を丸くした。魔王さんは笑った。
「この少年は、かつて勇者パーティーに所属していた。人間の街で7人の子供を救い、A級の魔物も何匹も倒しておる」
「何だと!?」
「しかも我は、この少年を年収金貨1000枚で魔王軍に迎えようとした。だが、断られた。人間を傷つける仕事はしたくないという理由でな」
王様たちがざわめいた。
「魔王の誘いを断ったのか!?」
「金貨1000枚だぞ!」
「それほどの力を持つ少年が、なぜ荷物持ちなどをしている?」
「えへへ! 荷物持ちのお仕事が大好きだからだよ!」
僕が答えると、魔王さんが大笑いした。
「はっはっは! まったく、お前という少年は変わらんな!」
でも、ゴザルム王は納得していないみたいだった。
「小僧。お前は本当に魔族を信用しているのか?」
「うん! 魔王さんもジルネカも、すっごく優しいよ!」
「魔族に騙されているとは思わんのか?」
「うーん。でも、魔王さんは僕が戦いたくないって言ったら、荷物持ちのお仕事をくれたんだ! 嫌なことを無理にさせないでくれたよ!」
僕は笑った。
「だから、僕も魔王さんのお願いを聞いてあげたいなって思ったんだ!」
王様たちは黙った。魔王さんが僕の肩に手を置いた。
「ルウセトよ。お前の思っていることを、皆に話してやってくれ」
「うん! 分かった!」
僕は10人の王様を見た。それから、大きな水晶にも目を向けた。世界中の人たちが見ているんだよね。何を話そうかな。難しいことはよく分からないけど、僕の気持ちを伝えればいいんだよね。
「僕には【肩代わり】っていうスキルがあるんだ。誰かがケガしそうになったら、そのケガを代わりに引き受けられるんだよ!」
王様たちは僕の話を聞いていた。
「でもね、戦争でたくさんの人がケガしたら、僕1人じゃ全員を守れないと思うんだ」
僕は自分の腕を見た。昔から残っている傷が、服の袖から見えている。
「ケガしたら痛いし、大切な人が帰ってこなかったら、みんな悲しいでしょ?」
部屋は静かだった。
「僕はね、みんなでご飯を食べたり、おしゃべりしたりするのが大好きなんだ! お仕事が終わって、元気におうちへ帰れるのって、すっごく幸せだと思うんだよ!」
僕はもう1度、王様たちを見た。
「だから、お願いです! もう戦争はやめませんか? 人間も魔族も、みんなが仲良くなれたら、僕はすっごく嬉しいです!」
僕は10人の王様と魔王さんを見た。
「みんなで仲良く暮らそうよ!」
僕は大きく頭を下げた。しばらく、誰も話さなかった。
あれ? 何か変なことを言っちゃったかな。
僕が首をかしげたときだった。
『ルウセトお兄ちゃーん!』
「えっ!?」
水晶から子供たちの声が聞こえてきた。映っているのは、東の魔法都市だった。広場に7人の子供たちが集まっている。
「あっ! みんな元気だったんだね!」
『お兄ちゃん! 僕たちを助けてくれてありがとう!』
『私もお兄ちゃんに賛成! もう誰もケガしてほしくない!』
子供たちのそばにいた大人たちも声を上げた。
『俺の息子を救ってくれた少年だ! あの子の言うとおりだ!』
『戦争なんか終わらせてほしい!』
『私たちだって、家族と仲良く暮らしたいんです!』
次に映ったのは、北の街だった。
『おい! あの少年、俺たちの毒を全部引き受けてくれた荷物持ちじゃねえか!』
『【万毒を背負う者】だ! 俺はあいつに命を救われたんだ!』
『俺も和平に賛成だ!』
ほかの街や村でも、次々と声が上がった。広場の水晶に触れると、賛成か反対かを会議場に伝えられるらしい。大きな水晶には、各国から届いた声の数が映し出されていた。
「陛下! 和平に賛成する声が、反対を大きく上回っております!」
魔法使いの人が報告した。僕はびっくりした。
「わあ! こんなにたくさんの人が、仲良くしたいって思ってたんだね!」
嬉しいなあ!
僕が笑うと、ポッケナが駆け寄ってきた。
「ルウセト! あんた、ほんまにすごいわ! うち、あんたのこと、もっともっと好きになってもうた!」
ポッケナが僕の腕に抱きついた。ガドリカも隣に来た。
「あたいも、お前の言うとおりだと思うぜ。こんなに優しい奴がいるんだ。人間も魔族も、仲良くできるはずだろ!」
シェファナは王様たちに頭を下げた。
「わたくしは、ルウセト様に何度も命を救っていただきました。この方は、ご自分が傷ついても、ほかの方が無事であることを喜ばれるのです。どうか、この方の願いを聞いてくださいませ」
ジルネカも僕の手を握った。
「ボクは魔族だけど、ルウセトのことが大好きだよ! 人間だからって、嫌いになんかなれないもん! みんなだって、仲良くなれるよ!」
魔王さんが大きくうなずいた。
「我も、この少年の願いをかなえたい」
10人の王様たちは顔を見合わせた。やがて、イシェルト王が立ち上がった。
「我が国でも、多くの民が和平を望んでおる。魔王よ、互いに攻撃をやめることを約束できるか?」
「うむ。我が名にかけて誓おう」
ミルテサ女王もうなずいた。
「争いが起きた場合は、まず使者を送って話し合うこと。それも約束していただけますか?」
「よかろう」
ほかの王様たちも、次々と賛成した。赤い服のアルゾン王がうなずき、丸眼鏡のレギオ王は条約の書類を確かめた。青い冠のナズフィル王は隣の王に話しかけ、黒い手袋のセルカ王も静かにうなずいた。長い金髪のリュグド王と白い服のテメリア女王も賛成した。片目に傷のあるガイベン王は、腕を組んだまま魔王さんを見ていたが、最後にはうなずいた。
残ったのはゴザルム王だった。
「……小僧」
「うん?」
「お前は、本当にこれで戦争が終わると思っているのか?」
「うーん。これからもケンカしちゃうことはあるかもしれないね!」
僕は少し考えた。
「でも、そのときは僕がまたお話を聞きに行くよ! 荷物持ちだから、どこへでも行けるもん!」
「……はっはっは!」
ゴザルム王が大笑いした。
「まったく、変わった小僧だ! よかろう! 我が国も、この不戦条約に賛成する!」
「本当!? ありがとう!」
僕は嬉しくなって頭を下げた。
10人の王様と魔王さんが、順番に書類へ名前を書いていく。最後の1人が書き終わると、イシェルト王が立ち上がった。
「ここに、人類10か国と魔族の国との不戦条約が成立したことを宣言する!」
大きな拍手が響いた。水晶の向こうでも、世界中の人たちが喜んでいた。
「やったあ! 魔王さん、よかったね!」
「うむ。お前のおかげだ、ルウセトよ」
魔王さんは僕の肩をたたいた。
「人間と魔族を結びつけてくれたこと、心から感謝するぞ」
「えへへ! 僕もみんなが仲良くなれて嬉しいよ!」
10人の王様も、僕にお礼を言ってくれた。
すごいなあ! 今日はたくさんの王様と仲良くなれたね!
「ルウセトぉっ!」
「うわっ! ポッケナ!?」
会議が終わると、ポッケナが僕に飛びついてきた。
「もう、あんたって子は! ほんまにすごすぎるわ! うち、世界中の誰よりもあんたが大好きやで!」
ポッケナは僕の首に両腕を回した。そのまま頬に何度もキスしてくれる。
「えへへ! ありがとう、ポッケナ!」
「なあ、ルウセト。うち、もうあんたと離れたくないねん。これからも毎日、朝起きたらあんたにおはようって言いたいし、夜は抱きしめてもらって眠りたい。ずっと一緒におってくれる?」
「うん! 僕もポッケナと一緒にいたいよ!」
「ほんま!? 約束やで!」
ポッケナは嬉しそうに笑って、僕の胸に頬を寄せた。
「おいおい、ポッケナ。あたいにも代わってくれよ」
ガドリカが笑いながら近づいてきた。彼女は僕の前にしゃがみ、大きな腕を広げる。
「ルウセト。あたいからも抱きしめさせてくれねえか? お前が世界中のみんなに褒められて、あたいもすげえ嬉しいんだ。へへっ、自分のことみてえに喜んじまったよ」
「えへへ! ガドリカもありがとう!」
僕はガドリカに抱きついた。ガドリカは僕の背中を優しくなでてくれた。
「なあ、ルウセト。あたいもお前と一緒に暮らしてえ。毎日一緒に飯を食って、手をつないで歩いて、眠る前にはお前を抱きしめたいんだ。そんな暮らしをしてもいいか?」
「うん! ガドリカと一緒なら、毎日楽しいだろうね!」
「へへっ。ありがとな」
ガドリカは顔を赤くして、僕の頬にキスをしてくれた。
すると、シェファナもそばに来た。
「ルウセト様。わたくしも、お伝えしたいことがございます」
「うん! 何かな?」
シェファナは僕の両手を握った。
「わたくし、今日ほどあなた様を誇らしく思ったことはございません。世界中の方々が、あなた様の優しさを知ってくださいました。ですが、わたくしが何より嬉しいのは、こうしてあなた様のおそばにいられることなのです」
シェファナは優しく微笑んだ。
「これからは、わたくしが毎日あなた様を甘やかして差し上げたいのです。お食事も、お体のお世話も、何でもさせてくださいませ。朝も夜も、あなた様に大好きだとお伝えしたいのです」
「わあ! そんなにしてくれるの!? 僕、すっごく嬉しいよ!」
シェファナは僕を抱きしめた。長い髪が僕の頬に触れる。
「ルウセト様。大好きですわ」
「僕も大好きだよ、シェファナ!」
僕が抱きしめ返すと、シェファナは幸せそうに目を閉じた。それから、僕の頬にそっとキスをした。
「ちょっと! ボクのこと忘れてない!?」
ジルネカが頬を膨らませていた。
「ルウセト! ボクだって君のこと大好きなんだよ! お父様にお願いして、ボクも君のおうちで一緒に暮らしたい!」
「ええっ!? ジルネカまで来てくれるの!?」
「うん! ボク、君と毎日一緒にいたいんだもん!」
ジルネカは両手を広げた。
「ねえ、ルウセト! ボクにもぎゅってして!」
「うん! おいで!」
ジルネカが勢いよく抱きついてきた。僕は笑って受け止める。
「えへへ! ルウセト、大好き!」
ジルネカは僕の頬にキスしてくれた。それから、僕の顔を見上げる。
「ねえ、ルウセト。ボクにもお返しして?」
「うん! いいよ!」
僕がジルネカの頬にキスをすると、彼女は嬉しそうに笑った。
「やったあ! もう1回!」
「ジルネカ! 父親の目の前で何をしておる!」
魔王さんの声が聞こえた。ジルネカは僕に抱きついたまま振り返る。
「だって、ボク、ルウセトのこと大好きなんだもん! お父様、ボクもルウセトのおうちに住んでいいでしょ?」
「むう……。我が娘が人間の少年と暮らしたがるとはな」
魔王さんは僕を見た。
「ルウセトよ。娘のことを頼んでもよいか?」
「うん! ジルネカが来てくれたら、僕も嬉しいよ!」
「そうか。では、我からも頼むぞ」
「やったあ! お父様、大好き!」
ジルネカは大喜びだった。
僕も嬉しいなあ! みんなと一緒に暮らせるなんて、夢みたいだね!
「ルウセト、うちらも毎日いっぱい甘えるからな?」
ポッケナが僕の右腕に抱きついた。
「あたいもだ。今度からは遠慮しねえぞ」
ガドリカが僕の左手を握った。
「わたくしも、毎日抱きしめていただきたいですわ」
シェファナが僕の肩に頬を寄せた。
「ボクも! 毎日キスしてね!」
ジルネカは後ろから抱きついてきた。4人とも笑っている。
「えへへ! みんな、もっと近くにおいで! 僕もぎゅっとしたいな!」
ポッケナとガドリカが僕の両側から体を寄せてきた。シェファナも僕の背中に腕を回し、ジルネカは僕の肩に頬を寄せた。
「えへへ! みんな、温かいね!」
僕はポッケナの頭をなで、ガドリカの手を握り直した。シェファナの背中にも手を回す。4人とも、嬉しそうに笑っていた。
「みんな、大好きだよ!」
「うちも大好きやで!」
「あたいも愛してるぜ!」
「わたくしも、心からお慕いしておりますわ」
「ボクが1番大好きなんだから!」
4人が笑いながら、僕の頬にキスしてくれた。なんだか、くすぐったいなあ。
「えへへ! 僕、今すっごく幸せだよ! 早くみんなでおうちに帰りたいね!」
僕がそう言うと、4人は嬉しそうにうなずいた。ポッケナは僕の腕に頬を寄せ、ガドリカは僕の頭をなでてくれる。シェファナは僕の手を両手で包み、ジルネカは僕の背中にぴったりくっついていた。僕は4人をぎゅっと抱きしめた。
「これからは毎日、みんなで一緒にいようね!」
「うん!」
4人が声をそろえて返事をしてくれた。僕は嬉しくなった。明日からも、きっと楽しい毎日になりそうだね!




