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第14話 魔王軍に連れ去られたかもしれないルウセトを助けたい魔法使いは、聖女と女戦士を呼び寄せる。大好きな彼を2度と失いたくない3人は、魔王城へ向かうことを決意した

「うちが迎えに行く。今度こそ、絶対に守ったる……!」


ポッケナは立ち上がった。今すぐ転移魔法の行き先を調べて、追いかけたかった。でも、杖を持ち上げたところで手が止まった。


「……シェファナとガドリカにも知らせな」


2人もルウセトを探している。何日も何日も、彼の行方を追い続けているのだ。自分だけで先に迎えに行くわけにはいかない。それに、相手は魔王軍かもしれない。ポッケナは魔法に自信があったが、1人で勝てるとは思えなかった。


「待っとってな、ルウセト。うちら3人で、絶対に迎えに行くから」


ポッケナは魔法都市へ戻り、冒険者ギルドに駆け込んだ。受付でシェファナとガドリカへの連絡を頼む。2人が今どこにいるのかは分からない。しかし、冒険者ギルドには各地の支部へ伝言を送る仕組みがある。ポッケナは持っていた金貨を取り出した。


「頼むわ。できるだけ早く、2人に届けてほしいねん」


受付の女性は、渡された金貨を見て驚いた。


「こんなに必要ありませんよ」

「ええから! 足りひんかったら、もっと払う!」

「で、ですが……」

「うちの大切な人の命がかかっとるんよ!」


ポッケナは受付の机に両手をついた。


「お願いや。急いで……!」


受付の女性はポッケナの顔を見ると、すぐに連絡の手続きを始めた。ポッケナは深く頭を下げた。それからギルドの隅に座り、杖を抱きしめた。


今すぐルウセトのところへ行きたい。無事なのか確かめたい。もう1度、あの笑顔を見たい。


「……ルウセト」


名前を呼ぶと、目から涙が落ちた。ポッケナは急いで涙を袖で拭った。泣いている場合ではない。2人が来るまでに、転移魔法の行き先を調べなければならなかった。




数日後、ポッケナは冒険者ギルドで2人を待っていた。


「ポッケナ!」


冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。入ってきたのは、背の高い女戦士だった。短い赤茶色の髪に、日に焼けた肌。丈夫な鎧を着て、背中には大きな盾を背負っている。ガドリカだ。


「ルウセトの手がかりが見つかったって、本当か!?」


ガドリカはポッケナを見つけると、まっすぐ駆け寄ってきた。


「せや。手がかりは見つけたで」

「どこだ!? あいつは今、どこにいるんだ!?」

「落ち着き。まだ本人を見つけたわけやない」

「だったら、何が分かったんだよ!」


ガドリカはポッケナの肩をつかんだ。その大きな手は震えていた。ガドリカも、ルウセトに2度と会えなくなるのが怖いのだ。


「……ルウセトが最後におった場所で、転移魔法の跡を見つけたんや」

「転移魔法?」

「せや。それも魔王軍の魔法やった」


ガドリカの顔がこわばった。


「……魔王軍だと?」

「せや。魔族に連れていかれた可能性がある」

「くそっ!」


ガドリカは近くの壁に拳を振り上げたが、殴る前に手を止めた。


「……またかよ」


小さな声だった。


「また、あいつが危ねえ目に遭ってんのかよ……!」


ガドリカは拳を握ったまま、下を向いた。


「クソ勇者から守ってやれなかった。あんなに傷だらけになるまで、何もしてやれなかった。それなのに、今度は魔王軍だと……?」

「ガドリカ……」

「あたいは、何やってんだよ……!」


ガドリカは自分の手を見つめた。昔、ルウセトと訓練したときのことを思い出した。彼は戦うのが得意ではなかった。それでも、ガドリカに教えてもらえることを喜んでいた。何度倒されても、笑って立ち上がってきた。あのとき、自分はもっと優しくしてやるべきだった。


「……今度こそ、あたいが守る」


ガドリカは顔を上げた。


「魔王だろうが何だろうが関係ねえ。ルウセトを傷つける奴がいるなら、あたいが止めてやる」

「……うん」

「ポッケナ。魔王軍の居場所は分かるのか?」

「今、調べとる。もう少しで分かるはずや」

「だったら、あたいにも手伝わせろ」


ガドリカは盾を床に置いた。


「あいつを迎えに行くまで、あたいはここから動かねえからな」


ポッケナは小さくうなずいた。そのときだった。


「ポッケナさん! ガドリカさん!」


2人が振り返ると、入口に白い服を着た女性が立っていた。長い白紫色の髪と銀色の目を持つ、聖女シェファナだった。いつもきれいに整えている髪が、今日は少し乱れていた。急いで来たのだろう。


「ルウセト様の手がかりが見つかったと聞きました。本当ですの……?」


シェファナは2人に近づいたが、ポッケナの顔を見ると足を止めた。


「……何か、あったのですか?」


ポッケナは答えた。


「ルウセト、魔王軍に連れていかれたかもしれへん」


シェファナは目を見開いた。


「……魔王軍?」

「まだ決まったわけやない。でも、あの子が最後におった場所に、魔王軍の転移魔法が残っとったんや」

「そんな……」


シェファナの足がふらついた。ガドリカが急いで腕を支える。


「おい、大丈夫か?」

「……はい。ありがとうございます」


シェファナはガドリカの腕につかまったまま、目を閉じた。ルウセトは7人の子供を救うために、呪いを自分の体に引き受けたと聞いていた。あれほど危険なことをしたあとに、今度は魔王軍に連れていかれたかもしれない。


「ルウセト様のお体は、ご無事なのでしょうか……?」

「分からへん」

「……そう、ですか」


シェファナは胸の前で両手を握った。目から涙が落ちた。


「わたくしが、もっと早く見つけていれば……」

「シェファナ、あんたのせいやない」

「いいえ。わたくしは、あの方を何度も傷つけてしまいました」


シェファナは首を振った。


「ルウセト様は、いつもわたくしを助けてくださいました。わたくしが危険な目に遭わないように、ご自分が傷を引き受けてくださったのです」


シェファナの声が震える。


「それなのに、わたくしはあの方の治療を後回しにしたことさえありました……」


ガドリカは何も言えなかった。ポッケナも杖を強く握った。シェファナは自分の両手を見つめた。ルウセトが目の前にいたら、今すぐ抱きしめて、どこか痛むところがないか聞いてあげたかった。


「……今度こそ、わたくしが治して差し上げたいのです」


シェファナは涙を拭った。


「今度は、ルウセト様が大丈夫だと笑っても、きちんとお体を診ます。もう2度と、苦しい思いをさせたくありませんわ」

「……ああ。あたいも同じだ」


ガドリカがうなずく。


「今度はあたいが盾になる。あいつに攻撃なんか受けさせねえ」

「うちもや」


ポッケナは2人を見た。


「ルウセトが危ない目に遭わんで済むように、うちが魔法で守ったる」


3人は顔を見合わせた。ルウセトを守りたい。その気持ちは、全員同じだった。






翌朝、ポッケナが大きな声を上げた。


「分かったで!」


机には地図が広がっていた。その上に、杖から出た小さな光が浮かんでいた。


「昨日まで調べとった転移魔法の跡やけど、魔力の流れをたどったら、行き先の方角が分かったんや!」


ガドリカが身を乗り出す。


「どこだ!?」

「こっちや!」


ポッケナは地図の上を指さした。そこには、人間の国から遠く離れた山々が描かれていた。


「魔族の国の奥や。この辺りに、魔王軍の本拠地があるはずやねん」


シェファナが地図を見つめる。


「……魔王城ですか?」

「せや。まだ確実とは言えへんけど、可能性は高いと思う」


ガドリカはすぐに盾を背負った。




3人は冒険者ギルドを出て、ルウセトを迎えに魔王城を目指した。道のりは長かった。森を抜け、山道を進み、何度も休みながら先を目指した。ガドリカは重い荷物を持ち、先頭を歩いた。


シェファナは2人の体調を気にかけ、疲れていないか何度も尋ねた。ポッケナは杖を使い、調べておいた方角を何度も確かめながら進んだ。3人とも疲れていた。それでも、足を止めようとはしなかった。


やがて、遠くに大きな城が見えてきた。黒い壁に囲まれ、高い塔がいくつも建っている。周りには険しい山が広がっていた。ポッケナは立ち止まった。


「……あれや」


ガドリカが顔を上げる。


「あれが魔王城か……」


シェファナは胸の前で両手を握った。


「ルウセト様……」


ポッケナは杖を持ち上げ、魔力を確かめた。城の方から、魔王軍の転移魔法と同じ魔力を感じた。


「……間違いあらへん。ここや」


ガドリカは盾を構えた。シェファナはいつでも治療魔法を使えるように、杖を握った。ポッケナは2人を見た。


「……行こか」

「ああ」

「はい」


3人はそろって、魔王城の門の前に立った。

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