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第11話 誘拐犯として指名手配された僕、7人の呪いを【肩代わり】して全員救出! 荷物用の縄で鐘を止めたら死者の王も倒しちゃった!? 一方、僕の無実を証明した魔法使いは泣き、謎の青髪少女が声をかけてきた

ゴォォォン……。


「……何や、この鐘」


ポッケナは足を止めた。東の魔法都市に、大きな鐘の音が響いていた。周りの人たちは慌てている。小さな子供を抱き上げ、家の中へ走っていく人もいた。


ポッケナは杖を持ち上げた。


「ちょっと調べてみよか」


杖の先から紫色の光が広がった。これは、魔力がどこから来ているのかを調べる魔法だ。ポッケナは昔から魔法の勉強が大好きだった。ほかの魔法使いが何日もかけて覚える魔法も、彼女ならすぐに使える。


杖を動かすと、鐘の音に混じって細い光の線が見えた。


「ああ、やっぱりな。これ、普通の鐘やないわ」


光の線は、街の東へ伸びていた。しかも、近くを歩いていた子供の体にも、同じ光がついている。


「……子供を操る魔法?」


ポッケナは眉をひそめた。そういえば、街では子供が7人も消えているらしい。それなのに、衛兵たちはルウセトを誘拐犯として指名手配している。ポッケナは壁に貼られた手配書の端をつかんだ。茶色い髪をした少年の絵。その下には、ルウセトという名前が書かれている。


「ほんま、何考えてんねん……」


紙を握る手に力が入った。ルウセトが子供を誘拐するはずがない。あの子は、困っている人を見つけたら、自分が傷ついてでも助けようとする。誰よりも優しくて、誰よりも自分のことを後回しにする子だ。


「……うちが証明したる」


ポッケナは手配書を見つめた。


「ルウセトは何も悪くないって、みんなに分からせたるからな」


まずは、何があったのか調べないといけない。ポッケナは杖を抱え、衛兵の詰所へ向かった。





一方、その頃。


「うーん。鐘の音はこっちから聞こえたんだけどなあ」


僕は森の中を歩いていた。東の魔法都市では、子供たちが次々にいなくなっているらしい。しかも鐘が鳴ると、子供たちは目を閉じたまま歩き始めるんだ。僕もさっき、3人の子供を助けた。みんな無事にお母さんのところへ帰れたけど、まだ7人も行方不明になっている。


「早く見つけてあげないとね!」


僕は鐘の音が聞こえる方へ進んだ。しばらくすると、山の下に大きな穴が見えてきた。


「あっ! ダンジョンだ!」


入口には古い石の柱が並んでいた。穴の奥から、また鐘の音が聞こえた。


ゴォォォン……。


「あっ! やっぱりここだ!」


僕は嬉しくなった。これなら、子供たちを見つけられるかもしれない。


「よし! 行ってみよう!」


僕はダンジョンの中へ入った。中はとても暗かった。壁には古いランプがついているけど、どれも火が消えている。僕は足元に気をつけながら進んだ。


すると、前の方から足音が聞こえてきた。


「……ん?」


誰かいるのかな。


「こんにちはー!」


僕が声をかけると、暗いところから人影が出てきた。ぼろぼろの鎧を着た兵士だった。でも、何だかおかしい。顔には肉がなく、白い骨が見えている。


「うわあ! 骨だ!」


びっくりした。よく見ると、腕も足も骨だった。しかも、剣を持っている。


「大丈夫? ちゃんとご飯食べてる?」


返事はなかった。代わりに、骨の兵士が剣を振り上げた。


「あっ、危ないよ!」


ガキンッ!


剣が僕の頭に当たった。でも、痛くなかった。剣の方が折れてしまった。


「あらら。折れちゃったね」


骨の兵士は、折れた剣を見つめている。僕も困ってしまった。このままだと、また襲ってくるかもしれない。


「ごめんね! ちょっと通してもらうよ!」


僕は骨の兵士を軽く押した。すると、兵士は後ろへ転がり、壁にぶつかって動かなくなった。


「あっ! 大丈夫かな?」


近づいてみると、骨がばらばらになっていた。

うーん。やっぱり、ちょっと力を入れすぎちゃったみたいだ。でも、ここで立ち止まっていたら子供たちを探せない。


「よし! 先へ進もう!」


僕は奥へ向かった。ところが、しばらく歩くと、また足音が聞こえてきた。今度は1人じゃない。大勢の足音が聞こえる。


「……あれ?」


通路の奥から、骨の兵士たちが現れた。みんな剣や槍を持っている。


「うわあ! いっぱい出てきた!」


骨の兵士たちは、僕に向かって走ってきた。でも、攻撃されても痛くない。僕は近づいてくる兵士たちを、1人ずつ押し返した。


「ごめんね! ちょっと通るよ!」


ドゴンッ!


何人もの兵士が壁にぶつかり、ばらばらになった。これで通れそうだね。


ゴォォォン……。


鐘が鳴った。


「あれ?」


床に転がっていた骨が動き始めた。腕や足が元に戻り、さっき倒した兵士たちが立ち上がった。


「ええっ!? また動くの!?」


すごいなあ。骨って、くっつくんだね。でも、また襲われたら困る。


「うーん。これは急いだ方がよさそうだね!」


僕は骨の兵士たちの間を走り抜けた。兵士たちが剣を振るけど、僕の体には傷1つつかない。




そうして奥へ進むと、大きな広間に出た。


「あっ……!」


僕は足を止めた。広間の真ん中に、巨大な鐘があった。建物くらい大きな鐘だ。天井から太い鎖でつり下げられている。その下には、小さな子供たちが立っていた。


「1、2、3……」


僕は指を折りながら数えた。


「7人だ!」


広場の紙に描かれていた子供たちと同じ人数だ。みんな目を閉じたまま、鐘の下に立っている。


「よかった! みんなここにいたんだね!」


僕は急いで近づいた。


「こんにちは! お父さんとお母さんが探してるよ!」


子供たちは返事をしない。よく見ると、顔色も悪かった。


「大丈夫? 具合が悪いの?」


僕は近くにいた男の子の手を握った。冷たい手だった。そのとき、鐘の下から黒い光が出てきた。光は男の子の体を包み、ゆっくりと鐘に吸い込まれていく。


「あれ? 何だろう、これ」


男の子が苦しそうな顔をした。

まずい。何か悪いことが起きているみたいだ。


「大丈夫! すぐ助けるね!」


僕は男の子の手を握り直した。


「【肩代わり】!」


体が少し温かくなった。すると、男の子を包んでいた黒い光が消えた。


「……ん?」


男の子が目を開けた。


「あれ……? ここ、どこ……?」

「よかった! 起きたね!」


僕は笑った。


「お父さんとお母さんが探してるよ! 一緒に帰ろうね!」


男の子は周りを見た。それから、大きな鐘を見上げた。


「……ひっ!」


男の子の顔が青くなった。


「お、お兄ちゃん……! 逃げて……!」

「えっ?」

「あいつが……!」


男の子が鐘の奥を指さした。僕が振り返ると、大きな鎧を着た人が立っていた。背は僕の3倍くらいある。黒い鎧を着て、大きな剣を持っていた。兜の中には、赤い光が2つ見えた。


「……何者だ」


低い声が広間に響いた。


「子供を解放したのは、お前か」

「あっ、こんにちは!」


僕は笑って頭を下げた。


「僕、ルウセトっていうんだ! 荷物持ちをしてるよ!」

「……荷物持ち?」

「うん! この子たちを迎えに来たんだ!」


鎧の人は、ゆっくりと剣を持ち上げた。


「我は骸鐘王ベルグリフ。この迷宮の王だ」

「へえ! 王様なんだね!」


すごいなあ。こんなところにも王様がいるんだ。


「そなた、我の鐘に触れるつもりか」

「ううん! 子供たちを連れて帰りたいんだ!」

「ならぬ」

「えっ?」

「その子らは、我が軍勢を動かすために必要なのだ」


ベルグリフが鐘を指さした。


「子供らの魔力を鐘に集め、死者の軍勢を増やしている。誰にも渡さぬ」

「……そうなの?」


僕は子供たちを見た。みんな苦しそうだ。こんな小さな子供に、そんなことをさせちゃいけないよね。


「ねえ、ベルグリフさん」

「何だ」

「この子たち、おうちに帰りたいと思うんだ。だから、もう帰してあげようよ!」

「断る」

「そっかあ。困ったなあ」


僕は頭をかいた。お願いしても、帰してくれないみたいだ。

だったら、どうしよう。僕が考えていると、ベルグリフが剣を振り上げた。


「邪魔をするなら、死ね」

「あっ!」


剣が男の子に向かって振り下ろされた。


「危ない!」


僕は【肩代わり】を使った。


ガキィン!


大きな音がした。でも、僕は何ともなかった。ベルグリフの剣が、途中から折れていた。


「……何だと?」

「あれ? 折れちゃったね」


ベルグリフは折れた剣を見つめた。それから、僕の方を向いた。


「……貴様、何をした」

「えっと、攻撃を肩代わりしたんだよ!」

「肩代わり……?」

「うん! この子がケガしなくてよかった!」


僕は男の子の頭をなでた。男の子は泣きながら、僕の服をつかんだ。


「お兄ちゃん……!」

「大丈夫! もう怖くないよ!」


僕が笑うと、男の子は何度もうなずいた。でも、ほかの6人はまだ眠ったままだ。早く助けないとね。


「ちょっと待っててね!」


僕は隣の女の子の手を握った。


「【肩代わり】!」


女の子の体から黒い光が消えた。目を開けた女の子が、泣きながら僕に抱きついてきた。


「うわああん! お母さあん!」

「うんうん! お母さんのところへ帰ろうね!」


僕は女の子をなでた。すると、また鐘が鳴った。


ゴォォォン……。


「……あれ?」


目を覚ました2人の体が、また黒い光に包まれた。


「うっ……!」

「いやあ……!」


2人が苦しそうに顔をしかめる。


「あっ! まただ!」


僕は急いで【肩代わり】を使った。黒い光が消え、2人は元気になった。でも、このままじゃ何度でも同じことが起きちゃう。ベルグリフが低い声で笑った。


「無駄だ。我の鐘が鳴る限り、子供らは何度でも呪われる」

「ええっ!? そうなの!?」

「そうだ。鐘を壊せば、つながっている子供らにも呪いが流れ込む。貴様にできることなど何もない」

「……そっかあ」


鐘を壊したら、子供たちが危ないんだね。それは困るなあ。僕は大きな鐘を見上げた。壊さずに音を止める方法はないかな。


うーん。


そういえば、兄さんと荷物を運んでいた頃、大きな荷物が揺れないように縄で縛ったことがあった。鐘も、揺れるから音が鳴るんだよね。


「……あっ! いいこと思いついた!」


僕は腰に巻いていた縄を取り出した。荷物を縛るために持ってきたものだ。

ベルグリフが僕を見た。


「何をする気だ」

「鐘が鳴らないようにするんだ!」

「……何?」


僕は鐘の下へ走った。近づいてみると、鐘の中には大きな鉄の玉がつり下がっている。これが鐘に当たって、音が鳴るんだね。


「よし! これを動かないようにすればいいんだ!」


僕は鐘の中へ飛び上がった。鉄の玉をつかみ、縄を巻きつける。


「よいしょっと!」


玉が動かないように、鐘の内側についた太い金具へ縄を結んだ。これで大丈夫かな。僕が下へ降りると、ベルグリフが怒ったように叫んだ。


「愚かな! そのような縄で我の鐘を止められるものか!」


ベルグリフが片手を上げた。鐘が大きく揺れ始める。


ゴトッ。


小さな音がした。それっきりだった。


「……何だと?」


ベルグリフが固まった。もう1度、鐘を揺らす。


ゴトッ。


やっぱり、大きな音は鳴らない。


「あっ! うまくいった!」


僕は嬉しくなった。


「よかった! これで静かになったね!」

「ば、馬鹿な……!」


ベルグリフが鐘を見上げていた。何度も手を動かしているけど、音は鳴らなかった。


「我の鐘が……! 我が力の源が……!」


ベルグリフの足元から、黒い光が消えていく。後ろにいた骨の兵士たちも、次々に倒れた。


ガラガラッ!


「あれ? みんな倒れちゃったね」

「貴様あああっ!」


ベルグリフが大きな声を出した。そのまま、僕に向かって走ってくる。


「あっ、待って!」


僕は両手を前に出した。


「まだ子供たちがいるから、暴れないでね!」


ベルグリフの腕をつかむと、大きな体がぴたりと止まった。


「……なっ!?」


ベルグリフの体が固まった。兜の中の赤い光が大きく揺れている。


「ちょっと向こうへ行こう!」


僕はベルグリフを持ち上げた。


「よいしょっと!」


そのまま、子供たちから離れた場所へ運ぶ。ベルグリフは手足を動かしていたけど、僕の手から逃げられないみたいだった。


「は、離せえええっ!」

「ごめんね! もう少し待ってね!」






僕は広間の端まで歩いた。そこでベルグリフを下ろそうとしたんだけど、急に暴れ始めた。


「あっ、危ない!」


僕は慌てて体を押さえた。


ドゴォォン!


ベルグリフの鎧が、壁にぶつかった。大きな音がして、岩が崩れた。


「あっ……!」


僕は手を離した。ベルグリフは壁にめり込んだまま、動かなくなっていた。


「……あれ?」


近づいてみたけど、返事がない。


「また、力を入れすぎちゃったかな……」


うーん。今度こそ気をつけないとね。

でも、これでもう子供たちが襲われることはなさそうだ。


「よし! みんなを助けよう!」


僕は鐘のところへ戻った。まだ眠っている子供たちの手を、1人ずつ握る。


「【肩代わり】!」


黒い光が消えていく。最後の子供の呪いを引き受けると、7人全員が目を覚ました。


「……お母さん?」

「ここ、どこ……?」

「怖いよぉ……!」


子供たちは泣き始めた。僕はみんなの前にしゃがんだ。


「大丈夫だよ! みんなのお父さんとお母さんが待ってるから、一緒に帰ろうね!」


すると、最初に助けた男の子が僕の腕を見た。


「……お兄ちゃん、ケガしてる」

「ああ、これ?」


僕は古い傷だらけの腕を見せた。


「昔、仲間を守ったときについたんだ! 今はもう痛くないよ!」

「でも……、いっぱいあるよ……?」

「うん! いっぱい守れたってことだね!」


僕が笑うと、男の子は泣き始めた。


「あれ? どうしたの?」


男の子は僕の腕を両手で握った。


「……ありがとう、お兄ちゃん」

「どういたしまして!」


ほかの子供たちも、僕のそばへ集まってきた。みんな泣いている。きっと怖かったんだろうね。


「よし! おうちに帰ろう!」


僕は子供たちの手を握り、ダンジョンの出口へ向かった。





その頃。


「せやから、ルウセトが犯人なわけない言うてるやろ!」


衛兵の詰所に、ポッケナの声が響いていた。ポッケナは机の前に立ち、衛兵たちをにらんでいる。机の向こうには、衛兵の責任者が座っていた。


「お嬢さん、何度も言わせないでくれ。あの少年は意識のない子供を抱えていた。しかも、牢屋の鉄格子を破壊して逃げたんだ」

「子供を抱えてたら誘拐犯なん? 助けた可能性は考えへんかったん?」

「それは……」

「それに、ルウセトが牢屋におった間も、子供が2人消えかけたんやろ?」


責任者は黙った。ポッケナは杖を机に置いた。


「その子ら、どうなったん?」

「……無事に保護された」

「誰が助けたん?」

「それは、まだ……」

「調べてもおらへんの?」


ポッケナの声が低くなった。責任者が顔をしかめる。


「お嬢さん、言葉には気をつけてもらいたい」

「……へえ」


ポッケナは笑った。


「うちに言葉を気ぃつけろって? ルウセトのこと、ろくに調べもせんと誘拐犯にしたあんたらが?」


責任者は何も言わなかった。ポッケナは杖を持ち上げた。


「ほな、証拠を見せたるわ」


杖の先から紫色の光が広がった。部屋の中に、光が浮かび上がる。


「今、街で鳴ってる鐘には、人を操る魔法がかかってる。特に子供に強く効く魔法や」

「鐘の魔法……?」

「そうや。うちが調べたんよ」


ポッケナは杖を動かした。


「この光が、鐘の魔力や。街の子供らにも同じ魔力が残ってる」

「……本当なのか?」

「疑うんやったら、魔法学校の先生にでも調べてもらい。すぐ分かるで」


ポッケナは責任者の顔を見た。


「子供らを連れ去ってるんは、鐘の魔法を使う何者かや。ルウセトやない」


責任者は口元を押さえた。


「だが、まだあの少年が無関係とは……」

「まだ言うん?」


ポッケナは杖を握り直した。


「ほな、次の証拠や」


詰所の扉が開いた。入ってきたのは、1人の女性だった。腕には小さな女の子を抱いている。ルウセトが崖から助けた少女の母親だった。


「……この方に頼んで、来てもろたんよ」


ポッケナが女性に目を向けた。


「お母さん、話してもらえます?」


女性はうなずいた。


「はい……。この子は鐘の音が鳴ったあと、急に走り出したんです」


女性は娘を抱きしめた。


「私が呼んでも止まらなくて……。崖の方へ走っていってしまいました」

「……それで?」

「この子を助けてくれたのが、茶色い髪の男の子でした」


責任者が目を見開いた。


「その少年は……!」

「はい。今、指名手配されているルウセトさんです」


女性の声が震えた。


「あの子は、私の娘を助けてくれたんです……。それなのに、どうして誘拐犯なんかに……!」


ポッケナは唇を噛んだ。ルウセトは、本当に子供を助けていた。自分が危険な目に遭うことなど、考えもせずに。それなのに、衛兵たちはあの子を牢屋に入れた。


「……聞こえた?」


ポッケナは責任者を見た。


「ルウセトは子供を助けたんやで」

「…………」

「その子が、何で誘拐犯なん?」


責任者はうつむいた。ポッケナは指名手配書を机に置いた。


「これ、全部取り消してもらうからな」


そのとき、外から大きな足音が聞こえてきた。


「た、大変です!」


衛兵の1人が部屋へ飛び込んできた。


「東門から報告が入りました! 行方不明だった子供たちが、全員見つかったそうです!」

「何だと!?」


責任者が立ち上がった。


「7人全員か!?」

「は、はい! 全員無事です!」


女性が口元を押さえた。


「よかった……!」


ポッケナも顔を上げた。


「……全員?」

「はい! ただ、その……」


衛兵は困った顔をした。


「子供たちを連れて帰ってきたのが、指名手配中の少年だそうで……」


ポッケナの手が止まった。


「……え?」

「名前はルウセト。全身に古い傷のある少年です」


ポッケナの目から涙が落ちた。


「……ルウセト」


誰も助けられなかった7人を、1人で連れて帰ってきた。ポッケナは口元を押さえた。嬉しいのに、涙が止まらない。


「あんた、どこまで優しいんよ……」


けれど、すぐに顔を上げた。


「責任者さん。これで分かったやろ?」


机の上に指名手配書を置く。


「ルウセトは犯人やない。子供らを助けたんや」

「……ああ」


責任者はゆっくりとうなずいた。


「すぐに指名手配を取り消す。あの少年を逮捕した隊長からも事情を聞こう」

「それで終わりやないで」


ポッケナは責任者をにらんだ。


「あの子を誘拐犯にしたこと、ちゃんと謝ってもらうからな」

「……分かった」

「街中の手配書も全部回収して。あの子が子供らを助けたことも、みんなに知らせてもらうで」


責任者は深く頭を下げた。


「……申し訳なかった」


ポッケナは答えなかった。まだ、ルウセト本人に謝ってもらっていない。それに、あの子の手配書は街中に貼られている。全部取り消されるまで、安心なんてできなかった。





その頃、僕はダンジョンの入り口で声をかけられていた。


「ねえねえ! そこの傷だらけのお兄さん!」

「ん? 僕のこと?」

「そうそう! 君、ルウセトっていうんでしょ?」

「うん! そうだよ!」


振り返ると、青い髪の女の子が立っていた。

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