揺らぐ懐疑心
「それじゃあいただこうか」
公爵が発したその一言で皆食べ始める。
豪華なテーブルに置かれているのは子供受けが良さそうな食べ物ばかり。
その上、食事作法を気にしなくていいように手で食べるものもたくさん置いてある。
どうやら気をつかってくれたみたいだ。
ちなみにだがルーンは別の部屋で食べているのでここにはいない。
「なっ、何これ!!めっちゃ美味いじゃん!」
エレンが手に取ってるのはサンドイッチ。僕も食べようかな…
「ホンマや!めっちゃ美味いやん!!これ、おじさんの所のシェフが作ったん?」
近くにあるやつはコウに先に取られてたか…じゃあいいや
「コソッ)ちょっと、兄さんにコウさん!タメ口はさすがにダメですよ!」
とユウリが焦って言うがもう手遅れだろう。
「いや、公的な場所じゃなかったら構わないよ。君たちは客人なのだから。それと、ここの料理が口にあったのなら良かったよ。最近の子は何を食べるのかよくわからなくていろんなものを用意させたんだ。君達が気に入ってくれたらシェフ達もきっと喜ぶだろう。」
不意にシェフと思われる人達が扉の隙間から覗いて頷きながら涙を流しているのが見えた。
ここ、どんなけブラックなんだ?
いやそんなことはどうでもいい。早く話をきりださなければ…
「公爵閣下、この後お話したいことがあるんですが…」
「昼のことだな?それなら今ここで話してほしい。」
今ここで、か…
「…あの提案を受けようと思います。」
「…そうか、それは良かった。カイには1ヶ月後に学院に行ってもらう。その間そこの4人にはここで過ごしてもらうことになるが問題ないか?」
「俺らがここで過ごすって……どゆこと?」
「ある友人に君達をライズまでの道中とライズにいる間は全力で守ると約束したんだ。どうせカイが戻ってくるまではこの領内にいるのだろう?こんな小さい子どもが4人も冒険者だけで食っていくには限界がある。私は引退したが元騎士団長であるし、仕事は息子に押しつけたから当分はない。だから君達を鍛えてやることもできる。勉強をしたいのなら屋敷にある図書館に行けばいい。どうだ?悪い話ではないだろう?」
虫が良すぎる…、さすがにここまできたら怪しい…
断った方がいいだろうな。
「いいんですか??!!」
おい!コウ?一瞬ぐらい疑えよ!!
「流石にそれは申し訳ないです。」
流石だイリアス!その調子で丁寧に断ってくれ。
「でも、公爵家の屋敷が一番安全だろ?コウとイリアスだけでも居た方がいいんじゃないか?狙われてるんだろ?」
まあ、たしかにね…でも公爵閣下が狙ってる側じゃないっていう証拠もどこにもない。
もしあっち側だった場合最悪なことになるのは目に見えている。
「まあまあ、そう疑うな。私はアルクィン領主フィール・レイモンの友人だと言えば信用してもらえるかな?」
「ああ、神父様の…」
それならまあ、、うん
「神父様のご友人なんですか!!」
と、イリアスが食いつく。
「ああ、君のことも聞いているよイリアス君。それで?この話を承諾してしてくれたかな、カイ?」
そこまで退路を絶たれると断れないな…
「4人を利用しないこと、4人に危害を加えないこと、この2つを約束してください。」
そう言ってじーっと眼を見た。
「…信頼はされてないようだね。だがその約束は無効だ。そもそも守るためにこちら側に来るよう誘ったのだから利用しないし危害を加えようなどとは思っていない。無駄撃ちになるから他の約束にしなさい。」
自分にまっすぐ向けられた眼に信じたくなってしまう。
僕にはどうしてもこの人が嘘をついているようには思えなかった。
「…それ以外の要求はありません。」
少し視線を反らしてなんとか声をだす。
「カイは本当に彼らのことを大切に思っているのだね。そうかそうか、それは良いことだ。…と言うことで今日からカイはカイ・ハルシャとなる。私のことはお祖父様と呼んでくれ。それと敬語はやめてくれよ、悲しくなるからな。」
「わかり…わかったよ、お祖父様。」
そう言うと公爵、お祖父様は少し嬉しそうに口元を緩めた。
それから一時間程夕食は続いたのだった。
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