帰着点はいつだって
「これをどうぞ。」
執事長さんの手にはいつの間にかたくさんの資料がのってあった。
「…なんですか?これ」
「学院についての資料です。では、夕食のお時間になりましたらお呼びしますのでそれまでおくつろぎください。」
執事長さんは資料を半ば押しつけるように僕に渡すとそのまま出ていった。
僕の部屋には大きなベッドや勉強机はもちろんのこと、訪ねてくることを見越してかコウ達の分の椅子と大きなテーブルが置いてあった。
怪しそうな所はないな…
そう思い机に勉強机の方をチラッと見ると僕の感性に凄く刺さるキレイな花瓶が置いてあった。
その花瓶を見ると何故かわからないが今すぐにでも花瓶の中を確認しなければならない、そうしなければ手遅れになる、そう思った。
自分の直感を信じて花瓶から花を取り出して中を除くと変な石が入ってあった。
手に持っていた花を元に戻し石を机の上に置いてじっくりと観察した。
鑑定
運命の神石(使用済み) 品質:普通
説明:たった1度だけ会いたいと思った人に会える
石。ただし1度使えば使用者は使用時の記憶を
忘れ過去に戻るが、この石はかつての使用者が
再び手に取るまでは使用した場所で待ち続け
る。
所有者:カイ・ハルシャ
使用済み?どう言うことだ?それにカイ・ハルシャって…
未来の自分が使ったということか??
それにしてもなぜ?
石をひっくり返してみると、日本語で
"できる限りのことはした。後はそっちで何とかしてくれ。それと、彼によろしく頼むと伝えて欲しい。"
と書かれてあった。
…いや、彼って誰だよ!!ちゃんとわかるように書けよ、ホント…まあ、わかるように書いたらダメだったんだろうけどね、…だけど、これはないよ
とりあえず、ここからわかることはこの石を使わざるをえない状況に未来の自分が陥ったということ、そして"彼"という人物が何か知っているかも知れないということだ。
"できる限りのことはした"という言い方に少し引っ掛かりを感じる。
僕はこれまでその言葉を1度も使ったことがない。なぜなら自分の本当の力を100パーセント使ったことなど無かったからだ。
僕は自分の力、すなわち頭脳を恐れている。それゆえ本気を出したことは1度もない、というか出せなかった。もし本気を出していたらエレンが倒れることもなかったと言いきれる。
だが、全力を出せば本当の自分は血も涙もない残酷な存在だと周囲にバレてしまう。僕には仲間に"嫌われたくない"という思いから目の前のことから眼を反らす癖がある。それなのに、それなのに、、
僕が本気を出さざるをえない状況とは一体……
そう思って石を魔法鞄の中にそっといれた時、扉がノックされた
扉を開けると少し心配そうな顔をしたイリアスとユウリ、そして何もわかってなさそうなコウとエレンがいた。
「みんなそろってどうしたの?…入る?」
「長話になりそうだからそうさせてもらう。」
「1つ聞いても言いか?今のところカイは貴族になろうと思ってるのか?」
「…あの話しはしたの?」
あの話しとはもちろん赤目のことである。
「ああ。さすがにな…」
「僕が貴族になることの利点は僕ら自身を守ってくれる後ろ楯を得るということだ。逆に欠点は君らとの冒険者ライフを一時中断しなければならないこと。ちなみに僕はこれが2番目に嫌。」
「1番目はなんなん?」
「君たちを、持ってる手札を使わずに死なせてしまうこと、かな。使えるものは使うべきだと思う。」
「でも6年も会われへんねやろ?」
「コウ、ちゃんと話聞いてた?普通の人は、だよ?ちゃんと3年で出ようと思ってる。」
「そんなに授業が簡単そうなのか?」
「いや?まだ資料を見てないからなんとも」
「じゃあみんなで手分けしてまとめようか。」
さすがイリアス、聖人君子とはこのことだ。
ざっとまとめるとこういうことだ。
・学院で学ぶこと
(通常の新入生の場合)
魔法理論
魔法実技
適性に応じて
戦術実技-剣術・弓術・体術
どれか1つ以上
召喚術学-召喚術理論
魔生物学-生物学・植物学
どれか1つ
魔方陣学-魔方陣理論学・魔方陣創造学
歴史学-世界史・国史・庶民学
国史は全員必須
残りは1つ選択
一般教養-美術・音楽・一般作法・帳簿学・馬術
どれか3つ選択
[特殊]
錬金術学・戦闘実技・医学・魔法理論(応用)・法学
から1つ選択
上記の通りに選択し、学期末の試験で一定以上の点数を取らなければ休み返上で補習、学年末の試験だと留年になるらしい。また、総合得点が10位以内に入れば半年ごとにある飛び級試験を受ける資格がもらえる。
・寮について
・アクアマリン寮
・スピネル寮
・タンザナイト寮
・オパール寮
の4つにわかれていて、入学後ランダムで振り分けられる。行事などでは4つの寮で競いあうそうだ。
この学院では貴族と平民が9:1くらいで存在している。平民に対しては当たりが強い奴らがいるらしいが、学院の中では完全なる平等となっている。(本当かは知らないが…)
「こんなもんか?」
「疲れた…無駄に字が多いの本当にやめて欲しい。」
「…カイ、僕らに遠慮するなよ。自分の心に正直に行動してくれ。僕らはカイがどの道を選んだって最後には隣にいるんだから。」
「そっか、、そうだね。君たちが最終的に側にいてくれるならどっちを選んだって」
コンコン
不意に扉がなる。
「どうぞ」
「失礼します。お食事の用意ができました。」
「ああ、今行きます。それじゃあ皆行こうか…」
地に足をつけるといつもより体が軽い気がした。




